39 / 45
第6話 閉じ込められていたもの (4/6)
しおりを挟む
『……ココカラ、ダシテ……』
これは、いつもの夢の声だ。
『カラヲ……コワシテ……』
どういうこと!?
この黒い体の中に、まだ何か入ってるってこと……?
『ココロノ……カラ、ヲ……、……コワシテ……』
後ろを振り返る。
二人にはこの声が聞こえた様子は無い。
必死に私達を守ろうと戦ってくれている。
画面上部に、残り三分でメンテナンスとのアナウンスが流れる。
メンテナンスに入れば、カタナとあゆは強制ログアウトになる。
そういえばさっき、きなこもちの姿が割れてしまった時、私は二人に本当のことを話そうとしていた。
それなら、もう一度……。
本当の事を二人に伝えることができたら……?
私は、夢と現実が混ざり合うような感覚の中で、きなこもちを背に庇いながら戦う二人に向き直る。
カタナは、何度目になるのかわからない死に戻りをしたところだった。
見れば、装備も破損させられたのかボロボロになっている。
「カタナ! デスペナが……、っそれに装備も……」
「気にするな」
一瞬の隙に、あゆがラゴの尻尾を喰らう。吹っ飛んだところに炎を撃ち込まれて、あゆもその場に倒れた。
「「あゆ!」」
生き返らせようと駆け寄ったカタナがラゴの炎と爪に裂かれる。
防具の破損のせいかダメージが大きい。ポーションを連打していたカタナも追いつかずその場に倒れてしまう。
「くっ、このキャラじゃここまでか……っ」
カタナがパーティーの管理権限をあゆに譲って消える。
「二人とも、もういいよ!!」
叫ぶ私に、あゆは優しい声で言う。
「大丈夫大丈夫、ボクもカタナが戻ったらキャラチェンしてくるからね」
「――っ、私、二人にこんなにしてもらう資格ないの!」
「資格?」
聞き返したあゆの声に、ラゴの声が重なる。
「僕がキャラチェンまで待ってると思う? 残念だけど、そろそろ終わりだよ」
ラゴが放った渾身の炎は、私もろともきなこもちを包んだ。
……かに思えたそれを、間一髪で防いだのは大きな盾だ。
ぎゅっと閉じてしまった目を開くと、そこに光を纏った見知らぬ騎士の背があった。
あゆがすぐにその騎士をパーティーに入れて、管理権限を譲る。
名前は刀。そっか、カタナの別のキャラなんだ。
入れ替わるようにあゆはログアウトした。
刀は迷う事なくラゴに鋭い槍を突き立てる。
ラゴの反撃に、刀がダメージを受ける。が、次の瞬間にはHPが回復していた。
パーティーにはもう一人、あゆという名前が増えている。
あゆゆより『ゆ』が一つ少ない。
気付けば美しい女性の聖職者がそばに居た。
あゆは次々と刀に支援魔法をかける。
「ははっ、中々高レベルだね。装備もよく整えられてる。ここまで育てるには相当時間がかかっただろう?」
「俺はベータ版からの古参だからな!」
刀が吠えるように答える。
「君はそんなにDtDを大事にしてくれてるのに、どうしてそのウィルスを庇うのかな?」
ラゴが攻撃を止めて尋ねる。刀も立ち止まって答えた。
「……そうするべきだと、思ったからだ」
「そのウィルスのせいで、DtDの世界が壊れてしまうとしても?」
「――っ!」
刀が動揺するのが、私にも分かった。
これは、いつもの夢の声だ。
『カラヲ……コワシテ……』
どういうこと!?
この黒い体の中に、まだ何か入ってるってこと……?
『ココロノ……カラ、ヲ……、……コワシテ……』
後ろを振り返る。
二人にはこの声が聞こえた様子は無い。
必死に私達を守ろうと戦ってくれている。
画面上部に、残り三分でメンテナンスとのアナウンスが流れる。
メンテナンスに入れば、カタナとあゆは強制ログアウトになる。
そういえばさっき、きなこもちの姿が割れてしまった時、私は二人に本当のことを話そうとしていた。
それなら、もう一度……。
本当の事を二人に伝えることができたら……?
私は、夢と現実が混ざり合うような感覚の中で、きなこもちを背に庇いながら戦う二人に向き直る。
カタナは、何度目になるのかわからない死に戻りをしたところだった。
見れば、装備も破損させられたのかボロボロになっている。
「カタナ! デスペナが……、っそれに装備も……」
「気にするな」
一瞬の隙に、あゆがラゴの尻尾を喰らう。吹っ飛んだところに炎を撃ち込まれて、あゆもその場に倒れた。
「「あゆ!」」
生き返らせようと駆け寄ったカタナがラゴの炎と爪に裂かれる。
防具の破損のせいかダメージが大きい。ポーションを連打していたカタナも追いつかずその場に倒れてしまう。
「くっ、このキャラじゃここまでか……っ」
カタナがパーティーの管理権限をあゆに譲って消える。
「二人とも、もういいよ!!」
叫ぶ私に、あゆは優しい声で言う。
「大丈夫大丈夫、ボクもカタナが戻ったらキャラチェンしてくるからね」
「――っ、私、二人にこんなにしてもらう資格ないの!」
「資格?」
聞き返したあゆの声に、ラゴの声が重なる。
「僕がキャラチェンまで待ってると思う? 残念だけど、そろそろ終わりだよ」
ラゴが放った渾身の炎は、私もろともきなこもちを包んだ。
……かに思えたそれを、間一髪で防いだのは大きな盾だ。
ぎゅっと閉じてしまった目を開くと、そこに光を纏った見知らぬ騎士の背があった。
あゆがすぐにその騎士をパーティーに入れて、管理権限を譲る。
名前は刀。そっか、カタナの別のキャラなんだ。
入れ替わるようにあゆはログアウトした。
刀は迷う事なくラゴに鋭い槍を突き立てる。
ラゴの反撃に、刀がダメージを受ける。が、次の瞬間にはHPが回復していた。
パーティーにはもう一人、あゆという名前が増えている。
あゆゆより『ゆ』が一つ少ない。
気付けば美しい女性の聖職者がそばに居た。
あゆは次々と刀に支援魔法をかける。
「ははっ、中々高レベルだね。装備もよく整えられてる。ここまで育てるには相当時間がかかっただろう?」
「俺はベータ版からの古参だからな!」
刀が吠えるように答える。
「君はそんなにDtDを大事にしてくれてるのに、どうしてそのウィルスを庇うのかな?」
ラゴが攻撃を止めて尋ねる。刀も立ち止まって答えた。
「……そうするべきだと、思ったからだ」
「そのウィルスのせいで、DtDの世界が壊れてしまうとしても?」
「――っ!」
刀が動揺するのが、私にも分かった。
1
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
ヒミツのJC歌姫の新作お菓子実食レビュー
弓屋 晶都
児童書・童話
顔出しNGで動画投稿活動をしている中学一年生のアキとミモザ、
動画の再生回数がどんどん伸びる中、二人の正体を探る人物の影が……。
果たして二人は身バレしないで卒業できるのか……?
走って歌ってまた走る、元気はつらつ少女のアキと、
悩んだり立ち止まったりしながらも、健気に頑張るミモザの、
イマドキ中学生のドキドキネットライフ。
男子は、甘く優しい低音イケボの生徒会長や、
イケメン長身なのに女子力高めの苦労性な長髪書記に、
どこからどう見ても怪しいメガネの放送部長が出てきます。
ヒョイラレ
如月芳美
児童書・童話
中学に入って関東デビューを果たした俺は、急いで帰宅しようとして階段で足を滑らせる。
階段から落下した俺が目を覚ますと、しましまのモフモフになっている!
しかも生きて歩いてる『俺』を目の当たりにすることに。
その『俺』はとんでもなく困り果てていて……。
どうやら転生した奴が俺の体を使ってる!?
【完結】知られてはいけない
ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
<第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
銀河ラボのレイ
あまくに みか
児童書・童話
月うさぎがぴょんと跳ねる月面に、銀河ラボはある。
そこに住むレイ博士は、いるはずのない人間の子どもを見つけてしまう。
子どもは、いったい何者なのか?
子どもは、博士になにをもたらす者なのか。
博士が子どもと銀河ラボで過ごした、わずかな時間、「生きること、死ぬこと、生まれること」を二人は知る。
素敵な表紙絵は惑星ハーブティ様です。
せかいのこどもたち
hosimure
絵本
さくらはにほんのしょうがっこうにかよっているおんなのこ。
あるひ、【せかいのこどもたち】があつまるパーティのしょうたいじょうがとどきます。
さくらはパーティかいじょうにいくと……。
☆使用しているイラストは「かわいいフリー素材集いらすとや」様のをお借りしています。
無断で転載することはお止めください。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる