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第5話 いつもの学校で (6/8)
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お、思わず受け止めちゃったけど……。
私は周りを見ようとして、やめる。自分たちが今教室中の注目を集めている事くらい、見回さなくても分かった。
冬馬くんの胸元へ大事そうに抱き寄せられた坂口くんは、目を閉じたままピクリとも動かない。
今まで喋ってた人が、立ったまま寝てしまうなんて。……そんなことがあるんだろうか。
見ていた自分自身ですら、どこか信じられなかった。
「……保健室か……」
冬馬くんが小さく呟く。
「――あ。俺、先生呼んでくるっ!」
男子の声。青木くんかな。
「き、救急車呼ぶ?」
スマホを取り出す子。
『パシャッ』
あ。シャッター音! 写真を撮ってる子がいる!?
冬馬くんがいつもの静かな声で、けれどはっきりと言う。
「救急車を呼ぶ必要はない。坂口は薬のせいで眠ってるだけだ。大事にしなくていい」
冬馬くんはそこで一回言葉を切ると、顔を上げて、写真を撮っている子の顔を順に見てから言った。
「……写真を撮るのはやめてくれ。ネットにあげたりもしないでほしい。もし自分が坂口の立場なら、どう感じるか、想像してみてもらえないか……」
ざわついていた教室が、しん。と静まり返る。
冬馬くんは坂口くんを横抱きにしたまま持ち上げようとする。
けれど、冬馬くんの腕力では難しいようだ。
悔しそうに眉を寄せる姿に、私は思わず尋ねる。
「……と、冬馬くん、何か私にできることある?」
「ああ……、助かる。保健室から担架を借りてきてくれないか」
その声は、確かに夢で聞いたカタナの声だった。
「分かった、行ってくるねっ」
私は、教室を飛び出した。
二重のドキドキで、胸が激しく鳴っている。
私は叱られない程度の小走りで保健室に向かいながら、胸をギュッと押さえる。
倒れてしまった坂口くん。
冬馬くんの言うように、寝ちゃったんだとは思うけど、あまりに不自然な寝方で心配ではある。
頭は打たずに済んだけど、ガクンってなっちゃったし、首痛めたりしてないかな……。
なんともないといいんだけど……。
胸のドキドキは一向に収まる気配がない。
……あの二人が、あの二人だったなんて。
同じ学校どころか、同じクラスだったなんて。
すごい!
信じられない!!
嬉しい!!!
ああでも、なんだか恥ずかしい。
これに気付いてるのって、私だけなんだよね……。
どうしよう。
内緒にしとく方が……いいのかな……。
保健室を危うく通り過ぎそうになって、二歩戻る。
事情を話すと、ふくよかな保健のおばちゃん先生が担架を持って一緒に小走りで来てくれた。
教室に戻ると、担任の先生も来ている。
先生が私を見てちょっとだけ不思議そうな顔をした。
そうだよね。
私は、学校で冬馬くん達と関わりもなければ、保健委員でもないし……。
坂口くんは、保健の先生と担任の先生に担架に乗せられて、保健室へ向かった。
冬馬くんもそれに付き添って教室を出て行く。
それを見送ると、ようやく、教室にいつもの昼休みのざわめきが戻ってきた。
「みさき、すごいね!」
遥に声をかけられる。
「ほんと、よくキャッチできたねー?」
遥と違って、アイカの言葉はどこか蔑むような響きだった。
「あたしだったら届いても触んないなー」
ひまりの言葉に『やっぱり』と思う。
「何言ってんの。意識がないのに頭打ってたら死ぬかも知れないとこだよ! みさきはよくやったよ」
玲菜に言われて、アイカとひまりが不服そうな顔をする。
玲菜が、賞賛を込めてポンと背中を叩いてくれる。
「あはは、ありがと……」
私は苦笑してそれを受け取った。
同じ出来事を見ても、こんなに感想が違うなんて。
正直、こんなにバラバラなメンバーが、よく半年も一緒にいたなと思う。
結局その日、坂口くんは教室に戻って来なかった。
私は周りを見ようとして、やめる。自分たちが今教室中の注目を集めている事くらい、見回さなくても分かった。
冬馬くんの胸元へ大事そうに抱き寄せられた坂口くんは、目を閉じたままピクリとも動かない。
今まで喋ってた人が、立ったまま寝てしまうなんて。……そんなことがあるんだろうか。
見ていた自分自身ですら、どこか信じられなかった。
「……保健室か……」
冬馬くんが小さく呟く。
「――あ。俺、先生呼んでくるっ!」
男子の声。青木くんかな。
「き、救急車呼ぶ?」
スマホを取り出す子。
『パシャッ』
あ。シャッター音! 写真を撮ってる子がいる!?
冬馬くんがいつもの静かな声で、けれどはっきりと言う。
「救急車を呼ぶ必要はない。坂口は薬のせいで眠ってるだけだ。大事にしなくていい」
冬馬くんはそこで一回言葉を切ると、顔を上げて、写真を撮っている子の顔を順に見てから言った。
「……写真を撮るのはやめてくれ。ネットにあげたりもしないでほしい。もし自分が坂口の立場なら、どう感じるか、想像してみてもらえないか……」
ざわついていた教室が、しん。と静まり返る。
冬馬くんは坂口くんを横抱きにしたまま持ち上げようとする。
けれど、冬馬くんの腕力では難しいようだ。
悔しそうに眉を寄せる姿に、私は思わず尋ねる。
「……と、冬馬くん、何か私にできることある?」
「ああ……、助かる。保健室から担架を借りてきてくれないか」
その声は、確かに夢で聞いたカタナの声だった。
「分かった、行ってくるねっ」
私は、教室を飛び出した。
二重のドキドキで、胸が激しく鳴っている。
私は叱られない程度の小走りで保健室に向かいながら、胸をギュッと押さえる。
倒れてしまった坂口くん。
冬馬くんの言うように、寝ちゃったんだとは思うけど、あまりに不自然な寝方で心配ではある。
頭は打たずに済んだけど、ガクンってなっちゃったし、首痛めたりしてないかな……。
なんともないといいんだけど……。
胸のドキドキは一向に収まる気配がない。
……あの二人が、あの二人だったなんて。
同じ学校どころか、同じクラスだったなんて。
すごい!
信じられない!!
嬉しい!!!
ああでも、なんだか恥ずかしい。
これに気付いてるのって、私だけなんだよね……。
どうしよう。
内緒にしとく方が……いいのかな……。
保健室を危うく通り過ぎそうになって、二歩戻る。
事情を話すと、ふくよかな保健のおばちゃん先生が担架を持って一緒に小走りで来てくれた。
教室に戻ると、担任の先生も来ている。
先生が私を見てちょっとだけ不思議そうな顔をした。
そうだよね。
私は、学校で冬馬くん達と関わりもなければ、保健委員でもないし……。
坂口くんは、保健の先生と担任の先生に担架に乗せられて、保健室へ向かった。
冬馬くんもそれに付き添って教室を出て行く。
それを見送ると、ようやく、教室にいつもの昼休みのざわめきが戻ってきた。
「みさき、すごいね!」
遥に声をかけられる。
「ほんと、よくキャッチできたねー?」
遥と違って、アイカの言葉はどこか蔑むような響きだった。
「あたしだったら届いても触んないなー」
ひまりの言葉に『やっぱり』と思う。
「何言ってんの。意識がないのに頭打ってたら死ぬかも知れないとこだよ! みさきはよくやったよ」
玲菜に言われて、アイカとひまりが不服そうな顔をする。
玲菜が、賞賛を込めてポンと背中を叩いてくれる。
「あはは、ありがと……」
私は苦笑してそれを受け取った。
同じ出来事を見ても、こんなに感想が違うなんて。
正直、こんなにバラバラなメンバーが、よく半年も一緒にいたなと思う。
結局その日、坂口くんは教室に戻って来なかった。
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