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第2話 赤いリボン (8/9)

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「考察サイトも色々あるし、皆少しずつ解釈が違って面白いんだ」
「……解釈って、そんなに皆違ってていいの?」
「いいんだよ、それぞれの解釈があって」
そ、そうなんだ? 歴史の解明って、皆で一つの答えを目指すとかそういうのじゃないんだ?

カタナの後をついていくと集落の跡地を抜けた先には広い湖があった。
湖に囲まれた中央に、見上げるほどの大きな樹が生えている。
その樹までは細くシンプルなつり橋がかかっていた。
青く澄んだ湖の上を、沢山の精霊達が淡く光を引きながら飛び交っている。
精霊の光はそれぞれで少しずつ違っていて、水面はぼんやりと七色に揺らめいてすごく綺麗だ。
「わぁ……綺麗……」

カタナは「良かった、間に合った」と言った。
「何に……?」
私の質問に、カタナは小さく笑って樹を指す。
「ほら、見てごらん。光が飛び立つよ」
途端に、好き勝手に飛び交っていた精霊達が一斉に樹に上るように集まる。
葉こそ青々と生い茂っていたが実も花も無かった樹が、見る間に七色の光に彩られてゆく。
光はさらに輝きを強めると、空に向かって一斉に飛び立った。
「うわぁ……すごい……」
私は呆然とその光景を眺める。
淡い光を薄く透ける羽に纏って、様々な種類の精霊達が空に舞う。
空は、そのさらに向こうへと精霊の光によって鮮やかに色付いた。
それを、私とカタナがじっと見上げている。
ゲームの中だと分かっていても、どうしようもなく震えてしまう心は、間違い無く本物の感動を感じていた。

精霊達が完全に飛び去ると、辺りはまた静かな湖畔に戻った。
私は思わず開いたままだった口を慌てて閉じた。
隣を振り返れば、カタナはどこか満足そうにまだ空を見上げていた。
「綺麗だった……。私、感動しちゃった」
伝えれば、カタナは私に視線を下ろして小さく笑う。
「よかった。喜んでもらえて、俺も嬉しい。これは三時間に一度だけの光景なんだ」
あ、思ったより頻繁に見えるんだ。とは思ったけれど、21時のを逃してしまえば次は0時だから、カタナとしては21時までにここに着きたかったらしい。
時間的に確実に見せられるかわからなかったから、直前まで黙っていたそうだ。

「じゃあもうちょっと、レベル25まで頑張るか。みさみさはまだ眠くないか?」

うーん……? 眠くないというか……多分私、今、夢の中なんじゃないのかなぁ……?
いつ目が覚めるかわかんないのが、ちょっと申し訳ないんだよね……。
私はカタナに、スマホの電源があんまり残ってないから急に落ちたらごめんね。とだけ伝えておいた。
「分かった。落ちた時は、気にせずそのまま寝てくれ」
「うん、ありがとう」
これならたとえ急に落ちても気にしないでくれるかな。
大きな樹のマップを出ると、またモンスターが出てくる。
そろそろ見慣れてきた木のお化けのタゲをカタナが取った時、その向こうの木が音を立てて折れ倒れた。

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