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第1話 夢の中の出会い (2/7)

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夕飯を済ませて部屋に戻ると、スマホに通話アプリの通知が来ていた。
『∈2ーA✧グループ∋』という名前のグループトークを開く。
これは私のクラス、東中二年A組のグループ会話だった。
『坂口君今日もお休みだったね』
『明日は来るかな?』
『あいついないと大縄が続くよな』
『確かに(←スタンプ)』
『めっちゃ続いた』
『まあね(←スタンプ)』
『わかる(←スタンプ)』
『今日凄かったね!』
『それな!(←スタンプ)』
『大会までずっと休みなら、C組にも勝てんじゃね?』
『確かに(←スタンプ)』
『それあるー』
『遠い目(←スタンプ)』
『大いに有り得る(←スタンプ)』
『ww』
『ワンチャンある(←スタンプ)』

このグループには坂口くんも参加してるのにな……。
もやもやする気持ちのまま辿っていたら、やっぱりというか何というか坂口くんと仲の良い冬馬くんが発言した。

『そういう話をするなとまでは言わないが、せめて本人に見えないところでやってくれ』

『出た、真面目www』
『ガガーン(←スタンプ)』
『ごめん(←スタンプ)』
『死んでお詫び(←スタンプ)』
『切腹(←スタンプ)』
『やり過ぎwww』
『切腹wwwwww』
『ww』
『wwwwwwww』
『www』
『大草原(←スタンプ)』

みんなが次々に草を生やす中、冬馬くんはそれ以上は言うつもりが無いのか黙っていた。

そこに、別のグループトークの通知が入る。
こっちは『☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』という名前の女子五人のグループ会話で、ズッ友グループと呼んでいた。

『冬馬ってさー、なんか空気読めないよねー』
『あいつ発達障害なんだって、うちの母さん言ってたよ』
『小学校の時は支援級にいたよね』

冬馬くんと同じ小学校だった子達が、冬馬くんがいかに普通と違うかという話を続けてゆく。
この子達はいつもこうだ。人の悪口ばっかりで嫌気がさす。
私から見れば冬馬くんは、友達を思いやる発言が出来て、それ以上揉めるようなこともなくて、スマートだなってちょっと感動してしまったくらいなのに。
さっきのかっこよかったね。なんて話は、ここではできそうにない。

『幼稚園の頃は酷かったんだって』
『あ、発表会の写真あるよ!』
『見たい(←スタンプ)』
『拝見せねばなるまい(←スタンプ)』
『ワクワク(←スタンプ)』

クラスのグループ会話は、いつの間にかゲームの話に変わっている。
いつも同じゲームで遊んでいるらしい男子メンバーが、いつものゲームの待ち合わせをしたり、アップデートで変わった内容なんかを話していた。

ズッ友グループに戻れば、卒園アルバムを写したらしき写真が上げられていた。
大勢のお遊戯をする子供達の中で今の面影をほんのり残した冬馬くんだけが、じっと俯いたまま立っている写真だった。
ギュッと握り締められた両手が何かに耐えているようで、何となく気の毒になる。
『一人だけ棒立ちじゃん』
『踊ってないwww』
『踊れ踊れぇ!(←スタンプ)』
『社交ダンス(←スタンプ)』
『ブレイクダンス(←スタンプ)』
『阿波踊り(←スタンプ)』
『いや、何でみんなそんなスタンプ持ってんの』
『ウケる(←スタンプ)』
『てか既読スルーしてんの誰よ』

その一言に、背筋がヒヤリとする。
私は慌ててスタンプを探すと、それを送信してから、画面に文字を並べる。
『今気付いた!(←スタンプ)』
時計をチラと見る。十八時半か。お風呂にはちょっと早いかな? まあ、お風呂の時間なんて人それぞれかな?
『ごめん。髪乾かしてて、開きっぱなしにしてた』
角が立たないように嘘をつくと、みんなはニコッと可愛いスタンプやドンマイと書かれたスタンプを送ってくる。
でも本当に笑っているのかは、分からないなと思う。
私だって、実際とは全然違う事を書いてるんだから。

私は少し悩んでから、続けてこう書いた。
『ちょっとおかーさんに呼ばれちゃったから、また後でねー』
『ごめん』と軽く謝るスタンプを選んでから、やめる。
悪いなと思ってしまうのは、私が嘘をついてるからだ。
『またねー』と明るく手を振るスタンプをどこか悲しい気分で送信してから、みんなの返信スタンプを確認してスマホを閉じた。

ああいう会話には、正直あんまり関わりたくない。
でもこのグループ会話は五人だけだから黙って読んでるとすぐバレてしまう。
かと言って、私には退会ボタンを押すほどの勇気も無かった。

リビングでテレビを見てお風呂を済ませて部屋に戻れば、また通知が溜まっている。
既読スルーもつつかれるけど、未読でも明日学校で何か言われそうだし……。
憂鬱な気持ちで開いたトーク画面はクラスの方もズッ友の方も平和な雰囲気だった。
ホッとしながらログを辿る。追いついた現在の会話では、このグループのリーダー的なアイカがみんなにいつもの『お願い』をしていた。

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