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弓屋 晶都

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第1話 夢の中の出会い (1/7)

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どこまでもどこまでも続く空。
空は春空のような淡い水色にパステルピンクや緑や黄色や紫が所々混ざったような、ゆめかわいい色をしている。
ゆめかわな空に浮かぶのは、たくさんの大きなシャボン玉。
それぞれにまるで違う世界が入っているのが、七色の膜越しにキラキラと見えた。

お菓子で出来たファンシーな世界や滝壺を中心に緑に覆われた静謐な世界もあれば、火山を囲むように水を湛えた世界や険しく吹雪く雪山の世界もある。
水に覆われた海底のような世界には、人魚が泳ぐ姿も小さく見えた。

(……夢……かなぁ?)

視線を落とせば足元には一面青々とした草原が広がっている。
それ以外のものは木も山も建物も、見渡す限り何ひとつなかった。

(……やっぱり、夢かなぁ?)

なるべく新しい記憶をたどる。
確か私は、ベッドに寝転がって、うとうとしながらスマホでゲームをしていて……。
時計の針は二十二時をまわってて、もう寝ないとと思って……。
チュートリアルが終わって、データのダウンロードが始まって……。
少しずつ増えてゆく数字を眺めながら眠ってしまったんだろうか。

あまり説明をよく読んでなかったけど、私がさっきやっていた『ドラゴンテールドリーマー』というゲームは、ちょうどこんな感じの様々な世界(ワールド)で冒険をして遊ぶゲームだった。
この風景も、アプリをダウンロードする時こんな絵を見た気がする。
ゲームをしながら寝落ちたせいで、こんな夢を見てるんだろうか。
自分の姿は、あのゲームで作ったばかりのキャラと同じ見た目になっていた。
長い黒髪を後ろで二つに結んで、最初に選んだ職業の弓使い(アーチャー)の服を着て……。
視線をおろせば革製の胸当てとベルトの下には、ひらりと短いスカート。
……ちょっと短いよね、これ。
下にはタイツを履いてはいたけど普段こんな太腿の真ん中丈のスカートって履かないから、何だかちょっと恥ずかしい。
その下はショートブーツで、背中には矢の入った矢筒を背負っている。
あれ、弓はないんだっけ?
考えたら途端に手の中に弓が現れた。
そっか。衣装にはなかったもんね。戦闘の時だけ出てくるのかな?

その時不意に、足元でガサガサと草が揺れた。

えっ、何だろう……。
確かにモンスターを倒してレベルを上げていくゲームだったはずだけど……。
夢でも出てきちゃうのかな、モンスター……。

揺れた辺りの草むらから、じり、と後ずさると、黄色いもちもちしたボールのようなものが飛び出した。

「ぷいゆっ!」
……今のは何だろう。この生き物の鳴き声なのかな?
スライム的ポジションなのか、その黄色い生き物は丸っこい大福のようなフォルムに、ウサギのような長い耳だけが生えた姿をしていた。
手足らしきものは見当たらない。
いや、あのぷにっと地面についたお腹側に、生えてないとは言い切れないけど……あったら逆に怖いよね。
くりくりとしたつぶらな瞳と小さな口。
それ以外、鼻や眉のようなものは見えなかった。

「えーと……」
チュートリアルに出てきたのはピンク色をしたスライムのようなモンスターだったけど、これも倒したらいいのかなぁ?

「ぷいゆっ♪ ぷいゆっ♪♪」
モンスターは何故か嬉しそうにハートと音符のマークを交互に出しながら、その場でぴょんぴょんと跳ねている。

あれ? なんか、襲ってくる様子はなさそう……?

そういえばチュートリアルで野生のモンスターはペットにできるとか書いてあったけど、これってそういうやつなのかな?
つがえかけた矢を、ためらいながら矢筒に戻して、そっと手を差し伸べてみる。

その生き物は、私の差し出した手にぴょこぴょこと近寄ると嬉しそうにぴょこんと乗った。

「うわぁ」
いきなり乗ってくるとは思わなかった。
軽そうな色のわりには、結構ずっしりしてる。

突然、目の前にウィンドウが開く。
『テイムしますか?』
その下にはボタンが二つ並んでいる。
[はい]   [いいえ]
何だろう。捕まえますか? って意味かなぁ?
指で『はい』のボタンを押すと、成功判定を知らせる表示の後、名前をつける画面が出てきた。
この子の名前……?
何だろう、何がいいかなぁ。
黄色くてもちもちしてるから「きなこもち」とか?
考えただけで文字が入力される。
いやでも、こんな安直なのじゃなくて、もっとオシャレな名前がいいかなぁ……?
私は手の上に乗ったままの、片手から溢れそうな大きさのもちもちボディをもう一度眺める。
まあいっか。似合ってるし。
『はい』のボタンを押すと、もちもちのモンスター……きなこもちが「ぷいゆっ♪」と嬉しそうに鳴いた。
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