ヒミツのJC歌姫の新作お菓子実食レビュー

弓屋 晶都

文字の大きさ
上 下
50 / 51

エピローグ (1/2)

しおりを挟む
ドタバタの生放送からひと月が経った。
空達とA4Uのコラボ曲は放送後一気に再生数が増えた。
A4Uの動画再生数も増えてはいたけれど、音声のみにしてからは誹謗中傷も少なくなっていた。

アキとミモザは今日、久々に電車で大きな駅までやってきた。
この駅の前には大きな大きなスクリーンがある。

「もー、なんで待ち合わせ場所がここなのぅ?」
背中を丸めて縮こまるミモザにアキが明るく笑いかける。
「それはもちろんっ、大画面で堪能できるようにだよっ」
「それが恥ずかしいんだってば……」

「結局、優勝は麗音さんだったね」
アキの呟きに、ミモザが振り返る。
勝負には負けてしまったけど、麗音さんが優勝したのは二人にとっても嬉しかった。
「麗音さん、すっごい泣いてたね……」
ミモザがあの日の事を思い出すようにしながら言う。
「うん……私達の歌に感動してね」
「自分の受賞に感動してほしいよね」
「本当にね」
涙でべしょべしょの麗音さんに「貴女らの歌声は至高だ!!」と伝えられて、この人はやっぱりLeonNoteさんだ……。と納得したりもした。

麗音さんのお父さんとお母さんも、番組を見てちょっとだけ、麗音さんの音楽を認めてくれたらしい。
音楽の『方向性の違い問題』はよく聞く話だけど、それが家庭でも起こるなんてね。
優勝はテレビの前の視聴者達からの投票で決まったんだから、私達はまだまだなんだなって、あの後はちょっとだけ落ち込んだりもした。

そんな私達のところにメールが届いたのは、放送から三日後の事だった。

「あっほら出たよっ!」
アキの弾む声に、ミモザが近くの銅像の影へと姿を隠す。
大スクリーンに映るのは、空とA4Uコラボの二曲目の曲がレコード会社からリリースされる旨のCMだった。曲タイトルは『明空に咲く花』と書かれている。
恥ずかしすぎて直視できないミモザとは違い、アキは満足そうに頷いている。
「アキちゃん、もう行こうよぅ……」
「ええー、もう一回見たかったなぁ」
「次いつ映るかわかんないじゃない……」
「電車の中でCM流れた時はビックリしたね!」
「うん……音がなくてよかった……」
「ええー、音があったらよかったのに」
「やだもぅ、こんなの恥ずかしすぎるよぅぅぅ」
半べそになるミモザの背を撫でて、アキはスクリーンとは反対側を指差す。
「わかったわかった。じゃあほらコンビニ行こ? 今日の新作お菓子は私がおごっちゃうから!」
アキは生放送後、弟妹からの見る目がちょっとだけ変わって、なぜかお小遣いもアップしていた。
寝坊常習犯のダメ姉から、遅刻知らずの歌うま姉へと進化できたのも、全部空さんのおかげだよね。

ミモザの背を押すようにしてコンビニに入れば、そこは変わらず二人にとってのパラダイスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

氷鬼司のあやかし退治

桜桃-サクランボ-
児童書・童話
 日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。  氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。  これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。  二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。  それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。  そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。  狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。  過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。  一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!

桃岡駅の忘れ物センターは、今日も皆さん騒がしい。

桜乃
児童書・童話
桃岡駅(とうおかえき)の忘れ物センターに連れてこられたピンクの傘の物語。 ※この物語に出てくる、駅、路線などはフィクションです。 ※7000文字程度の短編です。1ページの文字数は少な目です。   2/8に完結予定です。 お読みいただきありがとうございました。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...