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4話 音と心(1/7)
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『ミモザと一緒にドキドキしながら放送室行ったんですが、部長さん良い人でした。私達と同じテレビにも出るらしくって、曲聞かせてもらったら凄くって。同じ中学生でこんな曲作れる人がいるんだなってびっくりしました』
アキは自室のベッドの上で仰向けに寝転びながら、空とのRINEのトーク画面を見つめていた。
あの後送ったこのメッセージには、既読がついている。
けど空からの返事はない。
「忙しいのかなー……」
アキは空が何歳なのか、どんな生活をしているのか知らない。
知っているのは、猫を三匹飼っている事。猫の名前はシロとクロとブチな事。大地さんとは家が近所でしょっちゅう遊びに来る事。くらいだ。
考えてみれば空さんの性別だって、勝手に男の人かなと思っているだけで確かめた事はない。
あれ? そっか。大地さんが男の人でも、空さんが女の人なら付き合ってる説が再浮上するんだ……?
空さんは物腰も柔らかいし、一人称が僕の女の子ってリアルでも時々いるもんね。
空さんがもし女の人なら、テレビ収録の後で一緒にお茶したりカラオケに行ったりもできるだろうか?
「空さんと、もっとお話ししたいなぁ……」
アキは呟くと、メッセージを送信した。
***
一方空の部屋では二段ベッドの下段に空がスマホを片手にうつ伏せていた。
「痛っ……」
小さな声に顔だけそちらを向ければ、いつもの机でペンを握る大地が顔を顰めていた。
「手、痛むなら無理してそれ描かなくていいって」
「つっても、休んでて間に合う感じじゃねーんだよなぁ……」
「僕も手伝おうか? こないだみたいに下塗りとかならできるけど……」
「お前はそれより音楽の方を完璧にしとけよ」
「……一応本番用のは完成してる」
「ならゆっくりしてろよ。ミモザちゃんとアキちゃんの立ち絵は、俺が自分の手で、これでもかってくらい綺麗に仕上げたいからさ」
言われて、顔を布団に戻した空の手の中でスマホが揺れる。
『でも私はやっぱり空さんの音楽が一番好きです♪』
アキから送られたメッセージを見て、空は一瞬嬉しくなった。が、返信しなかったせいで気を遣わせてしまったのだと気付いた途端、罪悪感で胸がいっぱいになる。
せめてなにか……。
スタンプだけでも……。
『ありがとう』に指を伸ばして、けれどその前に、その前の文へのリアクションが必要だと気付く。
しかし『部長さん良い人でした』という文章を読み返してしまうと、空の胸にはアキの膝に抱かれていた麗音の姿や、三人の笑い合う様子が蘇って、どうすることもできなくなる。
「なーこれさ、今日アキちゃんがくれたんだけどさ、絶対アキちゃんのじゃねーよな」
そちらを見れば、大地は自身の手の甲に三枚貼られた絆創膏を眺めていた。
「だってこの絆創膏ブルーのチェックの上にレースの柄だぜ? アキちゃんなら良くてキャラ物ってとこだろ」
そんな事までよく想像できるな。と空はぼんやり思う。
「学校の備品なら透明か肌色ってとこだし、これ多分、ミモザちゃんのだよな。俺のために、アキちゃんに渡すように言ってくれたんだろうな」
大地は目を細めて、嬉しそうに口端を上げる。
空はなんだか酷く妬ましい気分になって「さあな」とだけ答えて布団に顔を伏せた。
アキは自室のベッドの上で仰向けに寝転びながら、空とのRINEのトーク画面を見つめていた。
あの後送ったこのメッセージには、既読がついている。
けど空からの返事はない。
「忙しいのかなー……」
アキは空が何歳なのか、どんな生活をしているのか知らない。
知っているのは、猫を三匹飼っている事。猫の名前はシロとクロとブチな事。大地さんとは家が近所でしょっちゅう遊びに来る事。くらいだ。
考えてみれば空さんの性別だって、勝手に男の人かなと思っているだけで確かめた事はない。
あれ? そっか。大地さんが男の人でも、空さんが女の人なら付き合ってる説が再浮上するんだ……?
空さんは物腰も柔らかいし、一人称が僕の女の子ってリアルでも時々いるもんね。
空さんがもし女の人なら、テレビ収録の後で一緒にお茶したりカラオケに行ったりもできるだろうか?
「空さんと、もっとお話ししたいなぁ……」
アキは呟くと、メッセージを送信した。
***
一方空の部屋では二段ベッドの下段に空がスマホを片手にうつ伏せていた。
「痛っ……」
小さな声に顔だけそちらを向ければ、いつもの机でペンを握る大地が顔を顰めていた。
「手、痛むなら無理してそれ描かなくていいって」
「つっても、休んでて間に合う感じじゃねーんだよなぁ……」
「僕も手伝おうか? こないだみたいに下塗りとかならできるけど……」
「お前はそれより音楽の方を完璧にしとけよ」
「……一応本番用のは完成してる」
「ならゆっくりしてろよ。ミモザちゃんとアキちゃんの立ち絵は、俺が自分の手で、これでもかってくらい綺麗に仕上げたいからさ」
言われて、顔を布団に戻した空の手の中でスマホが揺れる。
『でも私はやっぱり空さんの音楽が一番好きです♪』
アキから送られたメッセージを見て、空は一瞬嬉しくなった。が、返信しなかったせいで気を遣わせてしまったのだと気付いた途端、罪悪感で胸がいっぱいになる。
せめてなにか……。
スタンプだけでも……。
『ありがとう』に指を伸ばして、けれどその前に、その前の文へのリアクションが必要だと気付く。
しかし『部長さん良い人でした』という文章を読み返してしまうと、空の胸にはアキの膝に抱かれていた麗音の姿や、三人の笑い合う様子が蘇って、どうすることもできなくなる。
「なーこれさ、今日アキちゃんがくれたんだけどさ、絶対アキちゃんのじゃねーよな」
そちらを見れば、大地は自身の手の甲に三枚貼られた絆創膏を眺めていた。
「だってこの絆創膏ブルーのチェックの上にレースの柄だぜ? アキちゃんなら良くてキャラ物ってとこだろ」
そんな事までよく想像できるな。と空はぼんやり思う。
「学校の備品なら透明か肌色ってとこだし、これ多分、ミモザちゃんのだよな。俺のために、アキちゃんに渡すように言ってくれたんだろうな」
大地は目を細めて、嬉しそうに口端を上げる。
空はなんだか酷く妬ましい気分になって「さあな」とだけ答えて布団に顔を伏せた。
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