上 下
31 / 51

3話 放送室と部長 (9/20)

しおりを挟む
翌朝、アキが坂の下で目にしたミモザは明らかに様子がおかしかった。
「愛花、おはよう」
「ひゃあっ、あ、アキちゃん……おはよぅ……」
「どうしたの?」
「……あ、朝からパソコン立ち上げたらね? トイッターに大地さんから、フォロー申請が来てたの……」
「申請?」
「うん、鍵をかけてる非公開アカウントだと、フォローするには申請を出して、許可をもらうっていう手順がいるのよ」
「……そーだっけ」
覚えてないという顔のアキをミモザが見る。
「アキちゃん、私のトイッターアカウント空さんに教えた?」
「ううん。言ってないよ」
「じゃ、じゃあなんで……」
「あ。でもミモザが大地さんのファンだって話はしたよ」
「それは私も聞いたけど、それから何日も経ってるのに……」
「んー……、でも、ミモザはずっと大地さんのことフォローしてたんでしょ?」
「う、うん……。でも大地さんを片道フォローしてる人って三万人以上いるのよぅ?」
「たまたま大地さんがフォロバキャンペーンしてたとか?」
「そんな話してないし、フォロー数も私以外に増えてないから……」
「それは不思議だねぇ」
「不思議通り越して怖いよぅ……。だって私のアカウント鍵かかってるんだよ? 発言見えないはずだし、アイコンも画像もプロフも差し障りないことしか書いてないのに……」
「うーん……。じゃあ、空さんに何か知らないか聞いてみとくね」
ポケットからスマホを取り出して、文字を打つアキを横目に、ミモザは俯く。
「……なんでバレちゃったんだろぅ……」
その様子を見て、アキは文を増やした。

坂はそろそろ残り半分となってきて、アキの耳に会長の声が届いてくる。
「あー。今日も会長は良いお声だわ……」
「ふふ、私はアキちゃんのそのセリフを聞くと安心するよぅ」
「え、そう? なんで?」
「昨日のアキちゃんは、会長の声にもなかなか気付かなかったからね」
「そうだったっけ……?」
アキ達の前をゆく生徒が正門に差し掛かる。
「「「おはようございます」」」
挨拶をする生徒会役員たちの声は、そろそろミモザにも聞こえ始めた。
ミモザは昨日、アキが帰ってからもDMでアキから新堂との話を聞いていた。
そのせいだろうか。
軽薄な印象だった長身の男が、今朝はなんとなく頼もしげに見えてしまうのは。
一つに括った長い髪には美しいほどの艶があり、朝日を浴びて天使の輪が浮かんでいる。
ふ。と顔を上げた新堂とミモザは目が合ってしまった。
不自然にならないようゆっくり目を逸らそうとした時、新堂がニッと人懐こく笑う。
「おはよーございます」
目を合わせて言われてしまい、正門までまだ少し距離はあるものの仕方なく答える。
「お、おはようございます……」
「明希ちゃーん、スマホ出してたら没収だよー? こっから校内だかんねー?」
ああ、彼が気にしていたのはアキの持っていたスマホだったのか。と、ミモザは新堂がこちらを見ていた理由がわかって少しだけホッとする。
アキはまだ文字を打っていたのか、門の前で立ち止まった。
「はーいっ。そーしんっと」
タップしたアキがポケットにスマホをしまう。
それを待っていたのか、生徒会の面々が挨拶を口にした。
「「おはようございます」」
「おはようございまーーすっ!」
アキの元気な挨拶の中で、生徒会長の胸ポケットが小さく振動する。
それに気付いたのは耳の良いアキだった。
「あ。会長さん、メール来たみたいですよ?」
びくりと肩を揺らす会長。
「……ぁ、ありがとう……。でも校内では見ないから……。帰ったら見るよ」
「そうですよね、ごめんなさい」
「いや、気にしないで……」
アキは余計なことだったと気付いて照れ笑いを浮かべながら通り過ぎた。
振り返らずに靴箱を目指すアキの隣で、ミモザは後ろを振り返る。
会長は顔を隠すように俯いていたが、それを隣で覗き込んでいた新堂が不意に顔を上げた。
ミモザと目が合った新堂は、ニッと笑ってヒラヒラと手を振る。
ミモザの心臓が跳ねる。そんな気安く手を振られてもミモザに手を振り返す勇気はない。ミモザは逃げるように靴箱に駆け込んだ。
「ん? 愛花?」
「な……何……?」
「顔赤くない?」
「なんでもないっ」
ぶんぶんと首を振ったミモザの視界の端で、何かが銀色に光った気がした。
嫌な予感が、熱くなりつつあった頬を冷やす。
「アキちゃん、早く行こっ」
ミモザは真っ直ぐ教室に向かわずに、アキを連れて女子トイレに向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夏の城

k.ii
児童書・童話
ひまわりが向いている方向に、連綿とつらなる、巨大な、夏雲の城。 あそこに、きっと、ぼくのなくしてしまったとても大切なものがあるんだ。   ぼくは行く。 あの、夏の、城へ。   * 2006年に創作した児童文学作品です 当時通っていたメリーゴーランド童話塾で一部を発表しました 原稿用紙換算で120枚程だったと思います 13年も過去の作品であり今思えば拙い面も多々あるかと感じますが、記録の意味も含め、WEBに連載形式で初公開します

ぼくと、猫のいたずら ―きゃっちみー・いふゆーにゃん!🐾―

蒼生光希
児童書・童話
大事なものを猫にとられちゃった!追いかけようとしたぼくに、とんでもないことがおきたにゃん!

夏から夏へ ~SumSumMer~

崗本 健太郎
児童書・童話
作者、崗本 健太郎の小学生時代の回顧録であり、 誰しも経験する子供の頃の懐かしい思い出が詰まっている。 短編が150話ほど収録されており、 通勤や就寝前など隙間時間にも読みやすい構成だ。 作者と読者との地域性や遊びの違いや、 平成初期の時代を感じさせる作風も魅力である。 日常の喧騒を忘れて癒されたい人は是非!! ※毎日20時公開 全48話 下記サイトにて電子書籍で好評販売中!! Amazon-Kindle:www.amazon.co.jp/kindle BOOK WALKER:www.bookwalker.jp

水面を跳ねる(4話完結/川の向こうのあの子に)

ぬいの
児童書・童話
ある村の少年・徹也は、村の祭りで披露する祭囃子の練習もせず、川向こうに住む翔子にこっそり会いに行く日々を過ごしていた。 病気がちの翔子に、知らず知らずのうちに淡い恋心を抱いていく。 子供から大人へ、人としての成長物語。

ネズミとすてきな草

ユキ コタロウ
絵本
大きな木の下にある穴の中で、ゆったりのんびり暮らしていた1匹のネズミ。 ある日、家の目の前にギザギザ葉っぱの草が生えてきて…。 絵本ひろばで挿絵を一新して公開中です。 ☆第14回絵本・児童書大賞で奨励賞をいただきました!☆

天国からのマイク

ムービーマスター
児童書・童話
ある日突然、遥か上空から1950年代風のガイコツマイクが降りてきました。 早速、世界各国の有識者達が調査研究するも、天空から現れた謎のマイクは解明されることは無く、分かったことは、マイクから伸び続けるネズミ色の電線の向こうは、地球から最も離れたブラックホール(うしかい座)からでした。 人類は天空からのマイクを探るべく探査用ロケットまで発射しましたが、以前、謎は深まるばかり。 遂には世界の科学者から宗教家たちが自称「天国からのマイク」の謎に挑む始め、それぞれの宗教の神に向けて語りかけますが、全く反応はありませんでした。 そんなある日、日本に現れたマイクに日本人小学生のタカシ君が話しかけたら、天空から世界に向けてメッセージが語られ・・・。 世界の人々はタカシ君によって、連日奇跡を見せつけられ既存の宗教を捨て去り、各地で暴動が巻き起こり、遂には・・・。 世界中を巻き込んだ壮大なスペクタルとアクション、そして嘗て無い寓話的救世主物語が怒濤(どとう)の展開を繰り広げます。

春風くんと秘宝管理クラブ!

はじめアキラ
児童書・童話
「私、恋ってやつをしちゃったかもしれない。落ちた、完璧に。一瞬にして」  五年生に進級して早々、同級生の春風祈に一目惚れをしてしまった秋野ひかり。  その祈は、秘宝管理クラブという不思議なクラブの部長をやっているという。  それは、科学で解明できない不思議なアイテムを管理・保護する不思議な場所だった。なりゆきで、彼のクラブ活動を手伝おうことになってしまったひかりは……。

意味が分かると○○話

ゆーゆ
児童書・童話
すぐに読めちゃうショートショートストーリーズ! 意味が分かると、怖い話や、奇妙な話、時には感動ものまで?! 気軽に読んでみてね!

処理中です...