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3話 放送室と部長 (2/20)
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「嬉しいね。誰かリクエストしてくれたのかな?」
「嬉しいより、恥ずかしいよぅぅ……」
「ここ、このハモリがいいよね、私すっごく好きなんだ」
目を閉じてうっとりと体を揺らすアキの隣で、ミモザは両手で頭を抱えている。
「ううう……。この学校にあの曲聴いた人がいるだけでも恥ずかしいのに。こんな、全校生徒に聞かせないでよぅ」
「私は、これを聞いた人が空さんの音楽を好きになってくれたら嬉しいな」
包み終わった弁当を手に、立ち上がったアキはもう一度中庭を見渡す。
「……アキちゃん見てると、恥ずかしがってる自分が馬鹿みたいな気がしてくるよぅ」
ミモザも弁当を包むと、隣に並んで立つ。
「昼休みの、最後の曲に選んでくれたんだね」
アキが言えば、ミモザも同意する。
「ご飯が終わって、一番ゆっくり聞ける時間だよね」
音楽は二番が終わりつつある。この後は二人の大好きなCメロだ。
教室に向かう道を歩きながら、アキが歌い始める。
普段から二人は昼の放送で好きな歌がかかるとよく一緒に歌っていた。
今日はそれがたまたま、自分達の歌だっただけだ。
ミモザもそう思い直すと、誰もいない廊下にそっと歌声を乗せた。
アキが振り返る。嬉しそうに微笑まれて、ミモザも嬉しくなる。
すっかり心のほぐれた二人のハモリは完璧だった。
「あはははっ、本番より良かったんじゃない?」
「やっぱり私はアキちゃんと一緒に歌う方が好き……」
「うんっ、私もっ」
「待ちたまえ!」
誰もいなかったはずの廊下に突如響き渡る、強い言葉。
突然かけられた声に、ミモザが悲鳴を上げる。
「ひゃぁぁっ」
「びっ……くりしたぁ……」
銀色の眼鏡をかけた男子生徒が、二人の背後から足早に近づく。
「失敬。貴女らを驚愕させてしまった事、ご容赦いただきたい」
アキはミモザを背に庇うようにして、じりっと距離をとる。
「……この人、いつの時代の人なの?」
「時代というか……」
アキに小声で問われて困った顔をしたミモザが、ハッと何かに気付いた顔をする。
「あ、この人――」
「貴女らは……、見れば見るほど、A4Uに酷似しているな」
「えっ?」
突然出された名前に驚きを隠せないアキ。ミモザは息を呑んだ。
「そ、そんなことないですよ?」
アキが慌ててバタバタと手を振ると、男子生徒は怪訝そうに眉を寄せた。
「……なぜわざわざ否定した?」
「えっ!?」
「人は、何かに似ていると言われた時、それに似たくないと思わない限り否定はしない」
「ええっ!?」
焦るアキの後ろで、ミモザが「確かにそうかも」と呟く。
「貴女らは……一年生か。何組だ」
一歩近付こうとした男子生徒に、アキが半ば叫ぶようにして言った。
「あっ、急いでるんだった! 行こっ!」
アキはミモザの手を取って走り出す。
「おい、待ちたまえっ!」
二人は止まることなく、名札を弁当箱で隠すようにしてその場から走り去る。
廊下に一人残された男子生徒は細い銀の眼鏡をクイと上げる。眼鏡は怪しく反射し彼の表情を隠した。
「負い目のない者は、所属を尋ねた程度で逃げはしないものだが……?」
「嬉しいより、恥ずかしいよぅぅ……」
「ここ、このハモリがいいよね、私すっごく好きなんだ」
目を閉じてうっとりと体を揺らすアキの隣で、ミモザは両手で頭を抱えている。
「ううう……。この学校にあの曲聴いた人がいるだけでも恥ずかしいのに。こんな、全校生徒に聞かせないでよぅ」
「私は、これを聞いた人が空さんの音楽を好きになってくれたら嬉しいな」
包み終わった弁当を手に、立ち上がったアキはもう一度中庭を見渡す。
「……アキちゃん見てると、恥ずかしがってる自分が馬鹿みたいな気がしてくるよぅ」
ミモザも弁当を包むと、隣に並んで立つ。
「昼休みの、最後の曲に選んでくれたんだね」
アキが言えば、ミモザも同意する。
「ご飯が終わって、一番ゆっくり聞ける時間だよね」
音楽は二番が終わりつつある。この後は二人の大好きなCメロだ。
教室に向かう道を歩きながら、アキが歌い始める。
普段から二人は昼の放送で好きな歌がかかるとよく一緒に歌っていた。
今日はそれがたまたま、自分達の歌だっただけだ。
ミモザもそう思い直すと、誰もいない廊下にそっと歌声を乗せた。
アキが振り返る。嬉しそうに微笑まれて、ミモザも嬉しくなる。
すっかり心のほぐれた二人のハモリは完璧だった。
「あはははっ、本番より良かったんじゃない?」
「やっぱり私はアキちゃんと一緒に歌う方が好き……」
「うんっ、私もっ」
「待ちたまえ!」
誰もいなかったはずの廊下に突如響き渡る、強い言葉。
突然かけられた声に、ミモザが悲鳴を上げる。
「ひゃぁぁっ」
「びっ……くりしたぁ……」
銀色の眼鏡をかけた男子生徒が、二人の背後から足早に近づく。
「失敬。貴女らを驚愕させてしまった事、ご容赦いただきたい」
アキはミモザを背に庇うようにして、じりっと距離をとる。
「……この人、いつの時代の人なの?」
「時代というか……」
アキに小声で問われて困った顔をしたミモザが、ハッと何かに気付いた顔をする。
「あ、この人――」
「貴女らは……、見れば見るほど、A4Uに酷似しているな」
「えっ?」
突然出された名前に驚きを隠せないアキ。ミモザは息を呑んだ。
「そ、そんなことないですよ?」
アキが慌ててバタバタと手を振ると、男子生徒は怪訝そうに眉を寄せた。
「……なぜわざわざ否定した?」
「えっ!?」
「人は、何かに似ていると言われた時、それに似たくないと思わない限り否定はしない」
「ええっ!?」
焦るアキの後ろで、ミモザが「確かにそうかも」と呟く。
「貴女らは……一年生か。何組だ」
一歩近付こうとした男子生徒に、アキが半ば叫ぶようにして言った。
「あっ、急いでるんだった! 行こっ!」
アキはミモザの手を取って走り出す。
「おい、待ちたまえっ!」
二人は止まることなく、名札を弁当箱で隠すようにしてその場から走り去る。
廊下に一人残された男子生徒は細い銀の眼鏡をクイと上げる。眼鏡は怪しく反射し彼の表情を隠した。
「負い目のない者は、所属を尋ねた程度で逃げはしないものだが……?」
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