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2話 歌声と言葉(14/16)
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「おい、何いきなり大爆笑してんだよ」
机に向かってタブレットで絵を描いていた大地が、同じ部屋の二段ベッド下段で体を丸めて必死に笑いを堪えている少年へ怪訝そうに声をかける。
「お前、アキちゃんの相談に乗ってたんじゃねーの? 何がどうしてそんな大爆笑になるわけ?」
「べ、別に、なんでもっ、ないよ……っ」
『男だよ。大地の絵見たんだ?』
答えるつもりのないらしい少年に、大地は絵を描きながら話しかける。
「空はさ、アキちゃんの事好きなのか……?」
「うん」
軽い返事にチラと様子を見れば、空と呼ばれた少年は笑いの余韻を残した表情でスマホを見ている。
「そうじゃなくてさ、恋愛的な好き。な」
「それってどういう感情?」
「あー……つまり、こう、独り占めしたくなる……みたいな? 俺だけのものにしたいとか、他のやつに見せたくないとか、そんな感じの……?」
「それなら違うよ。僕はアキさんを皆に見てほしい。こんなにまっすぐで、こんなに好きがいっぱいの、キラキラしてる子。世界の宝だよ。僕だけ知ってるんじゃもったいない」
「世界の宝は言い過ぎだろ」
ぼそりと返事をしながらも、大地は手を止めずに描いている。
「皆にアキさんのこと見てほしいし、知ってほしいし。皆がアキさんの事を好きになってくれたら嬉しいよ」
「……ふーん。なるほどなぁ。……お前にしては饒舌じゃねーの?」
「ミモザさん、大地のファンらしいよ。かなり初期から追っかけてるとか」
「は!?」
ガタンっと椅子を鳴らして立ち上がった大地に、空はスマホ画面を見せた。
画面には、いつ頃から応援していたのか、どんな絵のどんな部分が好きなのかを散々聞かされたという内容が詳しく書かれている。
「ぅおー……。マジか……っ、っ……これ、……マジで嬉しいな……」
「よかったな」
「え、トイッターもフォローしてくれてんの? てか俺をフォローしたくてトイッター初めた……? 何これ、有難過ぎねぇ? いや俺も、アキちゃんかミモザちゃんなら断然ミモザちゃん派だから!?」
興奮気味の大地に、空が眉を寄せる。
「……そんな事は聞いてないけど?」
「俺、ミモザちゃんの喋り結構好みなんだよなぁ。ほわんとしてて癒されるよな。顔わかんねーけど、この声と喋りなら美人な気がする。あと頭も良さそうだよなー。言うべきことは大抵ミモザちゃんが言ってるし」
「うちの学校の子かな?」
「うちの学校なら、体型と髪型で三人にまでは絞ってんだけどな。アキちゃんと同じ一年だとしたらどっちかだな……」
「特定しようとしなくていい」
「お前はアキちゃんに言わねーの? 正体知ってる事」
「言ってない……」
「よし、俺はとにかくミモザちゃんのトイッターを速攻フォロバする!!」
「でもミモザさんはアカウント公開してないから、特定は難しいんじゃないか?」
「アキちゃんの方から探ってみる。リプの多い子とかさ」
大地はワクワクした顔で早速アキのトイッターのフォロー一覧を開く。
「そこまでしなくても……。僕が聞いてみようか?」
「いや、こーゆーのはサプライズでやるからロマンチックなんだろ?」
「……僕にはその辺はよく分からないけど、あまり驚かせない方がいいと思うぞ」
空は一言忠告すると、またスマホに視線を戻す。
『大地もミモザちゃんのこと応援してるみたいだよ』と送れば『そうなんですか!? ミモザに伝えときますねっ、きっと喜びますっ!』と嬉しそうなスタンプが届いた。
元気そうでよかった。相談はもう切り上げても良さそうかな。
そう思った途端、今日の廊下での光景が蘇った。
僕が声をかけた時、彼女は泣いていた。
驚いた拍子に落ちたあの雫は、一体いくつ目だったんだろうか。
机に向かってタブレットで絵を描いていた大地が、同じ部屋の二段ベッド下段で体を丸めて必死に笑いを堪えている少年へ怪訝そうに声をかける。
「お前、アキちゃんの相談に乗ってたんじゃねーの? 何がどうしてそんな大爆笑になるわけ?」
「べ、別に、なんでもっ、ないよ……っ」
『男だよ。大地の絵見たんだ?』
答えるつもりのないらしい少年に、大地は絵を描きながら話しかける。
「空はさ、アキちゃんの事好きなのか……?」
「うん」
軽い返事にチラと様子を見れば、空と呼ばれた少年は笑いの余韻を残した表情でスマホを見ている。
「そうじゃなくてさ、恋愛的な好き。な」
「それってどういう感情?」
「あー……つまり、こう、独り占めしたくなる……みたいな? 俺だけのものにしたいとか、他のやつに見せたくないとか、そんな感じの……?」
「それなら違うよ。僕はアキさんを皆に見てほしい。こんなにまっすぐで、こんなに好きがいっぱいの、キラキラしてる子。世界の宝だよ。僕だけ知ってるんじゃもったいない」
「世界の宝は言い過ぎだろ」
ぼそりと返事をしながらも、大地は手を止めずに描いている。
「皆にアキさんのこと見てほしいし、知ってほしいし。皆がアキさんの事を好きになってくれたら嬉しいよ」
「……ふーん。なるほどなぁ。……お前にしては饒舌じゃねーの?」
「ミモザさん、大地のファンらしいよ。かなり初期から追っかけてるとか」
「は!?」
ガタンっと椅子を鳴らして立ち上がった大地に、空はスマホ画面を見せた。
画面には、いつ頃から応援していたのか、どんな絵のどんな部分が好きなのかを散々聞かされたという内容が詳しく書かれている。
「ぅおー……。マジか……っ、っ……これ、……マジで嬉しいな……」
「よかったな」
「え、トイッターもフォローしてくれてんの? てか俺をフォローしたくてトイッター初めた……? 何これ、有難過ぎねぇ? いや俺も、アキちゃんかミモザちゃんなら断然ミモザちゃん派だから!?」
興奮気味の大地に、空が眉を寄せる。
「……そんな事は聞いてないけど?」
「俺、ミモザちゃんの喋り結構好みなんだよなぁ。ほわんとしてて癒されるよな。顔わかんねーけど、この声と喋りなら美人な気がする。あと頭も良さそうだよなー。言うべきことは大抵ミモザちゃんが言ってるし」
「うちの学校の子かな?」
「うちの学校なら、体型と髪型で三人にまでは絞ってんだけどな。アキちゃんと同じ一年だとしたらどっちかだな……」
「特定しようとしなくていい」
「お前はアキちゃんに言わねーの? 正体知ってる事」
「言ってない……」
「よし、俺はとにかくミモザちゃんのトイッターを速攻フォロバする!!」
「でもミモザさんはアカウント公開してないから、特定は難しいんじゃないか?」
「アキちゃんの方から探ってみる。リプの多い子とかさ」
大地はワクワクした顔で早速アキのトイッターのフォロー一覧を開く。
「そこまでしなくても……。僕が聞いてみようか?」
「いや、こーゆーのはサプライズでやるからロマンチックなんだろ?」
「……僕にはその辺はよく分からないけど、あまり驚かせない方がいいと思うぞ」
空は一言忠告すると、またスマホに視線を戻す。
『大地もミモザちゃんのこと応援してるみたいだよ』と送れば『そうなんですか!? ミモザに伝えときますねっ、きっと喜びますっ!』と嬉しそうなスタンプが届いた。
元気そうでよかった。相談はもう切り上げても良さそうかな。
そう思った途端、今日の廊下での光景が蘇った。
僕が声をかけた時、彼女は泣いていた。
驚いた拍子に落ちたあの雫は、一体いくつ目だったんだろうか。
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