『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……

弓屋 晶都

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第五話 怒涛の学習発表会 (2/7)

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朝の会の教卓で、先生は出席簿を閉じて言った。
「まさか、本番に三人揃ってお休みなんて……」
いつも明るくて元気がトレードマークの山村先生も、さすがに困った様子だ。
亮介の班の女子は、米倉さん以外三人とも朝から休みの連絡が入ったらしい。
「浅野君、米倉さん、二人でなんとかできそう?」

亮介と米倉さんが視線を交わす。
「えーっと……」
亮介が困ったようなぐるぐるを出している間に、米倉さんは電球マークを出して立ち上がった。
「できません。外国語の発表は取りやめにしたほうが良いと思います」
「ええっ。うちのクラスだけそれはできないわよ」
「でも先生、紙は全部三人が持っていたんです。発表の原稿も」
「本当なの!?」
これには先生もさすがにうろたえている。
「だから、私は阿部君たちの班に、浅野君は佐々田君たちの班に入るのが良いと思いま……」
「全員起立! 大至急教室中を捜索するわよ!」
焦りを浮かべた先生の号令で、クラスの全員で教室中をくまなく探してみるけど、外国語の発表の紙は見つからない。

つまり、今学校には亮介の『外国語』しか残ってないみたいだ。

先生が時計を振り返る。
学習発表会は二時間目からだ。
もう、残された時間は四十五分ほどしかない。

ざわざわとクラス中がざわめく。
「そういえば私、昨日職員室の前で米倉さんが先生と話してるの見たよ」
「ああ昨日の、米倉さんが阿部君の班に入りたいって言ったやつでしょ」
「うん、でも先生がそれはダメって言ってたよね」
「そのせいじゃないの?」
「え、じゃあ三人ともズル休みって事?」

皆のいろんな感情で教室があふれそうになった時、パンパンと手を叩く音がした。
「はい、静かにして! 一時間目は自習にします。浅野君と米倉さんは前に来て、先生と発表の紙を作りましょう。他の皆は……そうね……」
先生が黒板に向かって自習の内容を考える。
ボクは慌てて手をあげた。
「はいっ」
「佐々田君?」
「ボクも二人を手伝っていいですか?」
「あら、助かるわ」
別の班だからダメって断られるかなってドキドキしたけど、先生はあっさり許可してくれた。
すると、松本さんと川谷さん、それにちょっと渋々という感じで、清音さんと内藤君も手をあげた。
「じゃあお手伝いしてくれる子は前……じゃなくて後ろに来て、他の人は自主勉ノートに自主学習ね、教科はなんでも構いません」

ボクたちは席を立って移動する。
「さて、内容はどうしようかしらね。今までと同じ内容でいいんだけど、二人ともセリフは覚えてる?」
先生は床に新聞を敷いて画用紙を広げながら「外国語の発表は二回しか聞いてないからあんまり覚えてないのよね……」と首をひねる。
他の班は四回発表したけど、外国語はそのうち二回を「できてません」で飛ばしていたもんね。
「や……それが……全然……」
「覚えてません」
亮介と米倉さんが答える。
そっか、二人は発表の中身にノータッチだったから、ボクたちと同じくらいしか覚えてないんだ……。
ボクたちは先生の敷いた新聞紙の周りにしゃがみこむ。

『覚えてる』
ピッとメモ帳を見せたのは清音さんだった。

「「「ええっ!?」」」

思わず皆の声が重なって、自習中の子達が振り返る。
「僕も大体の内容なら覚えている。すぐに書き出そう」
内藤君はそう言うと、持っていた自主勉ノートにサラサラと書き始めた。
文房具をちゃんと持ってくるのが偉いな。なんて思ったら、松本さんも川谷さんも筆箱くらいは持っていて、持っていないのはボクと……清音さんは、自分の机から自主勉ノートと筆記用具を掴んで戻ってきた。
清音さんは文字がいっぱい書かれてゆく内藤君のノートをのぞくと、自分のノートに四角い枠を書いた。

あ。なるほど、内藤君が書いてるのはあの三人が発表で話した内容で、清音さんは発表の用紙を書いてるんだ。
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