『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……

弓屋 晶都

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第四話 ひとりで歌う合唱歌 (1/7)

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十月に入ると、学習発表会の準備も始まる。
秋は行事がいっぱいだよね。

今日の学活は学習発表会の班分けだった。
まずは七つの班を作って、次に各班が国語、算数、社会、理科、体育、図工、外国語のうち担当したい教科を第一希望から第三希望まで決める。
班は男女混合が条件だ。

「五人班が五つと、六人班が一つだよー。はい別れてー」

先生の声を合図に皆が動き出す。
亮介はすぐにボクの机に来て言った。
「どーする? 女子入れなきゃだろ? これは誘っていいやつだよな!?」
亮介のキラキラが眩しい。小さなハートもポワンとしている。

でも……。と思いながら、ボクは米倉さんの席を見る。
米倉さんのところには女子が三人……、米倉さんも入れると四人集まっている。
いつも四人一緒の女子グループ。米倉さんはそこのリーダーみたいな感じだ。

「男子だけや女子だけはダメだからねー。班が決まったら代表が一人先生のとこに紙をとりにおいでー」
先生の声に、一人、二人と先生のところに行く子がいる。

米倉さんたちがぞろぞろとボクの机まで来る。
「浅野君、佐々田君、よかったら私達の班に来ない?」

「あ、おう。よろしくなっ」
出遅れた亮介が、精一杯キリッと返事をする。
「うん……」
ボクは亮介の後ろからチラと清音さんの様子を見た。
清音さんは廊下の近くで、よく一緒にいる女の子二人と一緒にいた。

「あ、六人班ができたね。ここから先は五人班で作ってねー」
先生の言葉にクラスがざわめく。
米倉さん達も慌てたように四人で顔を寄せて相談を始める。
やっぱり。とボクは思いながら口を開いた。
「ボクは別の班に行くから、亮介だけここに入れてもらったら?」
「え、だってお前……」
「米倉さんたちも、それでいいかな?」
「あ、うん。いいの?」
「大丈夫だよ」
「そっか、佐々田君、ありがとー」

ボクは米倉さんの机に戻ってゆく彼女たちに手を振ると、その手で目の前にある背中をつついた。

「内藤君、今の話聞いてた? ごめんだけど、ボクと組んでもらってもいいかな?」
「喜んで」
内藤君の返事は早かった。
「あはは、ありがとう」
ボクは立ち上がると清音さんの方を見る。
大人しそうな女子三人はまだどの男子にも声をかけられずにいるみたいだ。
「清音さんも誘っていい?」
「もちろん」
ボクと話すようになった内藤君は『学校では話しすぎないように短めの言葉で返事する』と宣言した通り、簡潔に答えてくれた。

「清音さん、松本まつもとさん、川谷かわたにさん、よかったらボクたちと組んでもらえないかな?」
松本さんと川谷さんが顔を見合わせる。
清音さんは二人を見ることもなく頷いた。
いやいや、後ろの二人とも相談して、ね?
「松本さんと川谷さんはどうかな?」
ボクは慌てて二人にたずねなおす。
二人はボクの後ろの内藤君をチラと見て、どうしよう……みたいな効果をまとう。
あ。そっか。内藤君って結構怖そうって思われてる……?
「内藤君は、えっと、……怖くないよ。いい人だよ」
自分で言っておいてなんだけど、他に言いようはなかったんだろうか。
清音さんが後ろの二人を振り返って、ニコッと笑って頷いた。
すると二人は少しホッとしたようだ。
清音さんって、こんな風に笑うんだなぁ。
ボクはまだ清音さんにこんな顔は向けてもらったことがないや。
なんだかちょっぴり、松本さんと川谷さんが羨ましくなってしまった。
視界の端にキラキラが見えて、チラと後ろを振り返る。
そこにはやっぱり、ユメカワワンダーランドができていた。

怖くない。と、いい人。くらいのフォローしかできなかったのに、こんなに喜んでもらっていいんだろうか。
今度はもっと上手く内藤君のいいところがアピールできるように、後で考えておこう。とボクは思う。

「はい、最後の班はここかな?」
教室内を周っていた先生が、紙をボクに差し出す。
紙には希望する教科を三つ書く枠と、班長の名前を書く枠、班員の名前を書く枠がある。
ボクは「ありがとうございます」と先生から紙を受け取って、皆にたずねた。
「班長は誰がいいかな?」
なぜか、皆は揃ってボクを見た。
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