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くまさんはその言葉にドキッとしてしまいました。
そもそも、ここにみんなが集まってしまったのは、自分がスイカの食べ過ぎを隠していたせいです。

「ごめんねみんな。ぼくもみんなに隠してたことがあるんだ」
くまさんは反省すると、みんなに本当のことを話しました。
「ほんとうはぼくは、病気でも風邪でもなくて、スイカを食べ過ぎてお腹を壊していただけなんだ」

ビーバーさんが笑いました。
「なんだ、そんな事たいした事じゃないさ」

「たいしたことじゃないかも知れないけど、ぼくはみんなに言うのが恥ずかしくて、黙ってたんだ。だから、こんな大騒ぎになってしまった。みんな、本当にごめんなさい」
くまさんがぺこりと頭を下げると、みんなは口々に大丈夫だと励ましてくれます。
それなら、とくまさんは言いました。
「それなら、きつねくんとたぬきくんの事も、もう許してあげようよ。
 みんなだってきつね君に悪気がなかったのはわかるだろう?」

みんなは顔を見合わせました。
「だって……」「でも……」とまだ納得がいかない様子です。

すると、こうもりさんがパタパタっとくまさんの家の天井から降りてきました。
「あらあら? そんなことおっしゃって、みなさんもくまさんに言いにくい事を隠したままなんじゃありませんの?」

みんなは『えっ』と言う顔をして、くまさんを見てから、互いに顔を見合わせると、静かになってしまいました。

「あらあら、まあまあ」
こうもりさんはパタパタと小さな羽を動かすと、またくまさんの家の天井にぶら下がりました。

くまさんは首をかしげました。
「なんの話だい? 何かぼくに隠していることがあるなら、なんでも話してほしいな」
くまさんがそう言っても、みんなは黙ったまま互いの顔を見合わせるだけです。

きつねくんがおずおずと手をあげました。
「もしかして、なんだけど」ときつねくんは前置きをしてから、とても申し訳なさそうに言いました。

「くまさんの耳についているお花の事かな……」

みんながビクッとしました。

「この花のことかい?」
くまさんはベッドから立ち上がると、水桶で顔をもう一度見ました。
花はもうほとんどしおれてきていたけれど、まだ耳に刺さったままです。

くまさんはきつねくんに聞いてみました。
「これがどうかしたのかい?」
「え、ええと……。気に入ってつけているくまさんには言いにくいんだけど、  
 ちょっと……その……ごめんね。
 あんまり、似合ってないんじゃないかなって……」
きつねくんはもじもじしながら、小さい声で言いました。

くまさんは「ええっ!?」と大きな声を出してしまいました。

みんなはその声にまたビクッとしました。

こうもりさんだけはいつもと変わらない、すました様子で言いました。
「きつねさん、謝ることはないんですのよ。感性は人それぞれですもの。でもこのお花は見るからにくまさんには似合ってませんのに、くまさんが一日中つけていた様子なのが気になったんですの」

そこでくまさんは思い出しました。
今日こうもりさんに会おうとしていたのは、この耳飾りが本当に似合っているのか聞きたかったからでした。
なにしろ、こうもりさんはこの森で一番おしゃれに詳しくて、なんでもはっきり言ってくれるからです。

「なあんだ。よかった」
くまさんは心底ホッとして言いました。
「ぼくは何度見ても似合ってないなと思ったのに、みんながみんな似合ってるって言うから、ぼくだけがおかしいのかと思っちゃったよ」

するとみんなも驚いた顔になりました。
「気に入ってつけてたんじゃないのか?」
「てっきり、くまさんなりのおしゃれなんだと思って……」
「ここは褒めとくとこだと思ってさ」
「ごめんなさい。つけたらきっと可愛くなると思ったのに、似合ってないなんて、言えなくて……」
「なんだ、うさぎさんの仕業なのかい?」
「おかしいな、僕は本当によく似合ってると思ったんだけどねぇ?」

「まあまあ、いいよみんな気にしないで」
くまさんが言うと、みんなは照れくさそうに笑いました。

「ところできつねくん、持って帰ったスイカは全部君が食べたのかい?」
たぬきくんに聞かれて、きつねくんは正直に答えました。
「いや、それが食べきれなくて困っていたんだ」
「それじゃあ、明日はみんなでスイカパーティーにしようかねぇ」
たぬきくんはそう言ってにっこり笑いました。

パーティーと聞いて、みんなは大喜びしました。

「僕の畑のスイカがとっても甘くて美味しくできたのは、きつねくんが丁寧に育て方を教えてくれたおかげだからねぇ。僕は甘くて美味しいものが食べられればどっちでも構わないんだよ」
たぬきくんの言葉に、きつねくんが「なかなか言い出せなくて、ごめんね」と謝りました。

パーティーの話で盛り上がるみんなを見ながら、くまさんは明日までにお腹が治るといいな。と、まだ少し痛いお腹を撫でました。
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