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第2話 橙色の夕日 : 強い光の射すところには、強い影もまた現れて……。
2.遺跡(6/6)
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魔術師、魔法使い、盗賊。
我がパーティーは、その半分以上が魔法使いで構成されている。
よって、魔法が使えないとなると、その実力は当然半分以下になる。
「ああー……ええと、その分、魔物も居ませんので……」
あからさまにげんなりとしてしまったデュナに、ファルーギアさんがあたふたと声をかける。
遺跡内で戦闘になる可能性は無い。と言う事か。
「じゃあ行きましょうか……」
どことなく覇気のない感じで、デュナがふらりと部屋を出ようとする。
その背中を慌てて追ったファルーギアさんが、千ピース札を差し出す。
見たところ、五枚以上は重なっている感じだ。
前金……かな?
「報酬は、フィーメリアさんを連れ帰ってからでいいわ」
それをデュナがそっと押し戻した。
クエストの報酬というのは基本的に後払いである。
長期のクエや準備にお金がかかるようなクエの場合は別だが
今回はそういうわけでもないし、クエが必ず成功するとも限らない。
いや、もちろん成功させたいとは思っているけれど……。
デュナの表情はメガネに隠れて見えなかった。
現金に弱いデュナの事だから、きっと複雑な心境で返したのだろう。
遺跡の入り口に着いた頃には、デュナのやる気は満々になっていた。
遺跡に向かう林の中で、デュナがじっと俯いて歩いていたのは
もしかすると、さっき目の前に差し出されたお札の使い道を考えていたのかもしれない。
「フォルテ、本当についてくるのね?」
遺跡に入ろうかというところで、デュナがもう一度確認する。
「遺跡が崩れてぺちゃんこになっちゃうかもしれないわよ?
私は、今回魔法が使えないから、あなたをちゃんと守れる自信が無いの。
それでもいいのね?」
デュナの包み隠さない言葉にフォルテがこっくりと頷く。
「うん。ついていく」
「そう、じゃあ行くわよ。今回はスカイが先頭ね。私は一番後ろから行くわ」
デュナは昔から、本人の意思を第一に尊重する。
私が、フォルテを手放したくないと言ったときも、フォルテが、私達の冒険について行きたいと言ったときも。
まあ、スカイだけは意思を完全に無視されている気がしなくもないが。
普段はデュナ、私、フォルテ、スカイの順で歩くのだが、今回はスカイとデュナが入れ替わるらしい。
「あんたは昨日ほとんど役に立たなかったんだから。今日はその分も頑張りなさいよね」
デュナの厳しい言葉にスカイが振り返って反論する。
「昨日だって決死のダイビングしてただろ!? 三階から飛び降りろっつったの誰だよ!」
「あんたがもっと早く目覚めて、二人を連れて降りて来ればよかっただけでしょ」
「俺は睡眠薬を致死量飲まされてたんだぞ!?」
「飲まされてたんじゃなくて、自分から喜んで飲んでたんでしょ。
まったく、食い意地が張ってるんだから」
「ねーちゃんだって自分から飲んでたじゃねーか! 自分の事棚に上げて……」
このままではまた、結果の見えている無意味な姉弟喧嘩がはじまってしまう。
「ほらほら、スカイ、そろそろ行こ? フィーメリアさん助けなきゃ」
「お、おう。そうだな……」
フィーメリアさんの名前に、本来の目的を取り戻したのか、スカイが前に向き直った。
「先頭ー、しっかりしなさいよー」
後ろからデュナの声が飛ぶ。
「分かってるよ!!」
あんまり遺跡内で大きな声は出さないほうがいいと思うんだけどなぁ。
崩れてきても、デュナは障壁を張れないわけだし……。
なんだか、先行きが、ほんのちょっとだけ不安になってきた。
我がパーティーは、その半分以上が魔法使いで構成されている。
よって、魔法が使えないとなると、その実力は当然半分以下になる。
「ああー……ええと、その分、魔物も居ませんので……」
あからさまにげんなりとしてしまったデュナに、ファルーギアさんがあたふたと声をかける。
遺跡内で戦闘になる可能性は無い。と言う事か。
「じゃあ行きましょうか……」
どことなく覇気のない感じで、デュナがふらりと部屋を出ようとする。
その背中を慌てて追ったファルーギアさんが、千ピース札を差し出す。
見たところ、五枚以上は重なっている感じだ。
前金……かな?
「報酬は、フィーメリアさんを連れ帰ってからでいいわ」
それをデュナがそっと押し戻した。
クエストの報酬というのは基本的に後払いである。
長期のクエや準備にお金がかかるようなクエの場合は別だが
今回はそういうわけでもないし、クエが必ず成功するとも限らない。
いや、もちろん成功させたいとは思っているけれど……。
デュナの表情はメガネに隠れて見えなかった。
現金に弱いデュナの事だから、きっと複雑な心境で返したのだろう。
遺跡の入り口に着いた頃には、デュナのやる気は満々になっていた。
遺跡に向かう林の中で、デュナがじっと俯いて歩いていたのは
もしかすると、さっき目の前に差し出されたお札の使い道を考えていたのかもしれない。
「フォルテ、本当についてくるのね?」
遺跡に入ろうかというところで、デュナがもう一度確認する。
「遺跡が崩れてぺちゃんこになっちゃうかもしれないわよ?
私は、今回魔法が使えないから、あなたをちゃんと守れる自信が無いの。
それでもいいのね?」
デュナの包み隠さない言葉にフォルテがこっくりと頷く。
「うん。ついていく」
「そう、じゃあ行くわよ。今回はスカイが先頭ね。私は一番後ろから行くわ」
デュナは昔から、本人の意思を第一に尊重する。
私が、フォルテを手放したくないと言ったときも、フォルテが、私達の冒険について行きたいと言ったときも。
まあ、スカイだけは意思を完全に無視されている気がしなくもないが。
普段はデュナ、私、フォルテ、スカイの順で歩くのだが、今回はスカイとデュナが入れ替わるらしい。
「あんたは昨日ほとんど役に立たなかったんだから。今日はその分も頑張りなさいよね」
デュナの厳しい言葉にスカイが振り返って反論する。
「昨日だって決死のダイビングしてただろ!? 三階から飛び降りろっつったの誰だよ!」
「あんたがもっと早く目覚めて、二人を連れて降りて来ればよかっただけでしょ」
「俺は睡眠薬を致死量飲まされてたんだぞ!?」
「飲まされてたんじゃなくて、自分から喜んで飲んでたんでしょ。
まったく、食い意地が張ってるんだから」
「ねーちゃんだって自分から飲んでたじゃねーか! 自分の事棚に上げて……」
このままではまた、結果の見えている無意味な姉弟喧嘩がはじまってしまう。
「ほらほら、スカイ、そろそろ行こ? フィーメリアさん助けなきゃ」
「お、おう。そうだな……」
フィーメリアさんの名前に、本来の目的を取り戻したのか、スカイが前に向き直った。
「先頭ー、しっかりしなさいよー」
後ろからデュナの声が飛ぶ。
「分かってるよ!!」
あんまり遺跡内で大きな声は出さないほうがいいと思うんだけどなぁ。
崩れてきても、デュナは障壁を張れないわけだし……。
なんだか、先行きが、ほんのちょっとだけ不安になってきた。
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