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第1話 赤い宝石 : 困っている人は放っておけない。そんな彼に手渡された赤い宝石。

6.瓦礫(3/5)

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大気の精霊が二人ほどデュナ達のいたところへ飛び込んで行く。
風の精霊達は解放されたようだったが、デュナがいつも結界に使う大気の精達は出てきていないところを見ると、おそらく障壁を強化したのだろう。

あの大穴の真下なら、デュナの精神力さえ持てば、押しつぶされずにいられるかも知れない。
……デュナの精神力さえ、持つなら。

私はフォルテの小さな肩を引いて、崩壊してゆく建物からもう少し距離を取った。
建物の外で、瓦礫に当たって怪我でもした日には皆に合わせる顔がない。

ふと、広がった視界の隅に巨大人形の姿が入る。

そういえば、外に押し出しただけで、まだ倒してなかったんだっけ……。

姿を保っていると言う事は、いつ動き出すか分からない。
そうデュナが言っていたのを思い出す。
全てが潰れて、土煙のおさまってきた建物の向こう側には、愕然としている犯人達の姿もあった。

相当離れているここからも、そのショックの大きさが伝わってくるほどの動揺に、この建物はもしかするとまだローンだとかそういうものが残っているのかもしれないなぁと、考えてしまう。
装飾こそなかったものの、壁も、中もまだ新しい印象があった。
もしかしたら借りていた建物なのかも知れない。

静まり返った建物の跡地に、一箇所、盛り上がっていた部分がバラバラと瓦礫を弾き飛ばす。
大気の精霊達が霧散する。
デュナが解放したか、もしくはデュナが意識を失ったかのどちらかだ。

スカイも動けそうには思えなかったし、私が行って治癒術をかけないと……。

人形達が瓦礫の下でまだ姿を保っているかもしれないと思うと、フォルテを外に置いて行くのも危険だった。
「フォルテ、デュナ達のとこに行くよ」
ロッドもないので、右手を差し出してみる。
私の手をとり、フォルテがこっくりと頷いた。

精神力はもう尽きていたけれど、スカイが背負って降りたリュックの中には回復剤が入っているはずだった。
瓶が割れたりしていないことを願いつつ、瓦礫の上を慎重に歩く。
「足元気をつけてね。 崩れやすいからね」
フォルテに声をかけて進む。

確かこのあたりにロッドが落ちていたのだが、足元は完全に埋まっていて探し出せそうになかった。
赤い石はどこに埋まっているのだろう。
それを掘り出して封印しないことには、この人形達はおさまらないのだが……。

ガラッと音を立てて、フォルテが瓦礫に足をとられる。
慌てて腕を引き上げたので、転ぶには至らなかったが、フォルテはその大きな瞳を見開いて、引きつった表情を浮かべていた。
「ご、ごめんね……」
「ううん、こけなくてよかった」
「あ」
引き上げられた腕をそっと下ろされて、崩れた足元を確認したフォルテが短く声を上げる。
その視線を追って覗き込むと、そこには赤く光る石が落ちていた。
「これ、まだ触っちゃダメなんだよね?」
フォルテの問いに大きく頷いて答える。
しかし、デュナ達のところまでもう少し距離があるし、一度目を離してしまうと見失いそうだった。
「何か目印になる物があればいいんだけど……」
私の発言に、フォルテがパッと顔を上げる。
「私のポーチ、ここに置いて行こうか?」
それはいいアイデアだね、と合意してフォルテの小さな薄紫のポーチを置いて行く。
昨夜このポーチが取られなかったのは、おそらくそのサイズゆえに、中を開けたらお菓子しか入っていないことがすぐ分かったからだろう。

デュナ達の方へ顔を向けると、スカイが元気そうに手を振っていた。
それでも、足は折れているのだろうが……。
デュナもガックリと肩を落としてはいるが、無事なようだ。

人形達が動き出さないことを祈りつつ、彼女達の元へ急いだ。
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