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第1話 赤い宝石 : 困っている人は放っておけない。そんな彼に手渡された赤い宝石。
4.一夜明けて(4/4)
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コックさんは難無く見つかった。
調理場の隅に、デュナの予想通りにふん縛られて、猿ぐつわがかけてあった。
助け出すと、彼は知る限りの状況を説明してくれた。
正規の使用人達は強制的に休暇を出されてしまった事、屋敷の主であるマーキュオリーさんも捕まっているであろう事、犯人グループの人数が四人以上であり、その人達は服装から察するに召喚術師ではないかという事……。
召喚術師……。
そういえば、マーキュオリーさんの妹さん、私達に赤い石を託した彼女もそんな服装だったけれど……。
コックさんはこの屋敷に勤めて長いらしく、マーキュオリーさんの妹さん、クーウィリーさんの事も、小さい頃から知っているらしい。
話によるとクーウィリーさんは三年ほど前に封印術師である父親に反発して家を出て、それきり戻っていないんだとか。
どうやら、代々続く封印術師になりたくなくて、家を出た結果が召喚術師だったようだ。
分かりやすいというか、なんというか……。
結局は法術師という枠から出られなかったようだが、きっと彼女なりの精一杯の反抗なのだろう。
しかし、封印術師に石を渡そうとしているのも召喚術師なら、それを奪おうとしているのもまた召喚術師で……。
一体、その赤い石は何だと言うのだろうか。
ふと、三日前、トランドへ向けて旅立った日に、宿でデュナが覗き込んでいたのを思い出す。
「デュナ、赤い石って、結局何なの?」
私の問いに、デュナはオムレツを口に運んでいた手を止めると、メガネを微かに光らせた。
私とフォルテとデュナの3人は、昨夜、夕食を出された広い食堂で朝食をとっていた。
コックさんが、昨日のパンの残りにサラダと卵料理を添えて、簡単なワンプレートの朝食を用意してくれたので、そのご厚意に甘えているところである。
まあ、半ば強制的にサービスさせた感が無くもなかったが。
その辺のデュナの行動については、もう何も言うまい。
フォルテのオムレツにはお砂糖がたっぷり入っているらしく、ふんわり黄色く焼きあがったそれを幸せそうに食べるフォルテを見ていると、なんだかこちらまで幸せになってくる。
「召喚術士にとっての賢者の石とでも言えばいいかしらね。
とにかく、召喚術の効果を著しく上げることが出来るアイテムだと思ってもらえればいいわ」
「ふーん……?」
そのパワーアップアイテムを召喚術士が欲しがる理由は分かるとして、なぜ同じ召喚術士であるクーウィリーさんが、それを封印術士である姉に渡そうとしたのだろうか。
それとも、元々クーウィリーさんは、スカイを攫った人達の仲間で……。
いや、それは考えにくいか……。
どうにもまとまらない頭を抱えつつ、サラダの中のプチトマトを拾い上げる。
私のフォークに刺さったトマトを見て、デュナが補足をしてくれた。
「普通のパワーアップアイテムがそのプチトマトくらいの威力だとしたら、
この石の威力は……そうね、大きいトマト三つ分くらいかしら」
……それは、数倍どころの話じゃない気がする。
私には、そもそも普通のパワーアップアイテムを使うことによって、どのくらい召喚のレベルが上がるのかが分からないのだが、赤い石がちょっととんでもない代物だと言う事だけは分かった。
どおりで、デュナが石を寝るときも手放さない訳か……。
クエスト中のいざこざに関して、治安局は一切対応をしない事になっている。
報酬や、依頼品のちょっとしたトラブルなどはよくある事だったし、治安局も、そんな小さな事にいちいち対応していては、仕事にならないだろう。
これが、冒険者共同組合クエスト管理局……私達が管理局と呼んでいるそれの、掲示板に貼ってあったクエストであったなら、管理局に助力を求めることも出来たのだけど。
「ええと……スカイを助けに行くのって、私達だけで大丈夫なのかな……」
ちなみに、今回の食事には食事前に毒消しの魔法をかけてある。
デュナの、いつにも増しての慎重さに、なんだか思ったよりも規模の大きな話なのではないのかと、不安になってきた。
「まあ、この石が相手に渡らない限り大丈夫でしょう」
トントンとデュナが自分の胸を指し……おそらくそこにあの石が入っているのだろう。
彼女はメガネを僅かに光らせると、軽く笑って見せた。
調理場の隅に、デュナの予想通りにふん縛られて、猿ぐつわがかけてあった。
助け出すと、彼は知る限りの状況を説明してくれた。
正規の使用人達は強制的に休暇を出されてしまった事、屋敷の主であるマーキュオリーさんも捕まっているであろう事、犯人グループの人数が四人以上であり、その人達は服装から察するに召喚術師ではないかという事……。
召喚術師……。
そういえば、マーキュオリーさんの妹さん、私達に赤い石を託した彼女もそんな服装だったけれど……。
コックさんはこの屋敷に勤めて長いらしく、マーキュオリーさんの妹さん、クーウィリーさんの事も、小さい頃から知っているらしい。
話によるとクーウィリーさんは三年ほど前に封印術師である父親に反発して家を出て、それきり戻っていないんだとか。
どうやら、代々続く封印術師になりたくなくて、家を出た結果が召喚術師だったようだ。
分かりやすいというか、なんというか……。
結局は法術師という枠から出られなかったようだが、きっと彼女なりの精一杯の反抗なのだろう。
しかし、封印術師に石を渡そうとしているのも召喚術師なら、それを奪おうとしているのもまた召喚術師で……。
一体、その赤い石は何だと言うのだろうか。
ふと、三日前、トランドへ向けて旅立った日に、宿でデュナが覗き込んでいたのを思い出す。
「デュナ、赤い石って、結局何なの?」
私の問いに、デュナはオムレツを口に運んでいた手を止めると、メガネを微かに光らせた。
私とフォルテとデュナの3人は、昨夜、夕食を出された広い食堂で朝食をとっていた。
コックさんが、昨日のパンの残りにサラダと卵料理を添えて、簡単なワンプレートの朝食を用意してくれたので、そのご厚意に甘えているところである。
まあ、半ば強制的にサービスさせた感が無くもなかったが。
その辺のデュナの行動については、もう何も言うまい。
フォルテのオムレツにはお砂糖がたっぷり入っているらしく、ふんわり黄色く焼きあがったそれを幸せそうに食べるフォルテを見ていると、なんだかこちらまで幸せになってくる。
「召喚術士にとっての賢者の石とでも言えばいいかしらね。
とにかく、召喚術の効果を著しく上げることが出来るアイテムだと思ってもらえればいいわ」
「ふーん……?」
そのパワーアップアイテムを召喚術士が欲しがる理由は分かるとして、なぜ同じ召喚術士であるクーウィリーさんが、それを封印術士である姉に渡そうとしたのだろうか。
それとも、元々クーウィリーさんは、スカイを攫った人達の仲間で……。
いや、それは考えにくいか……。
どうにもまとまらない頭を抱えつつ、サラダの中のプチトマトを拾い上げる。
私のフォークに刺さったトマトを見て、デュナが補足をしてくれた。
「普通のパワーアップアイテムがそのプチトマトくらいの威力だとしたら、
この石の威力は……そうね、大きいトマト三つ分くらいかしら」
……それは、数倍どころの話じゃない気がする。
私には、そもそも普通のパワーアップアイテムを使うことによって、どのくらい召喚のレベルが上がるのかが分からないのだが、赤い石がちょっととんでもない代物だと言う事だけは分かった。
どおりで、デュナが石を寝るときも手放さない訳か……。
クエスト中のいざこざに関して、治安局は一切対応をしない事になっている。
報酬や、依頼品のちょっとしたトラブルなどはよくある事だったし、治安局も、そんな小さな事にいちいち対応していては、仕事にならないだろう。
これが、冒険者共同組合クエスト管理局……私達が管理局と呼んでいるそれの、掲示板に貼ってあったクエストであったなら、管理局に助力を求めることも出来たのだけど。
「ええと……スカイを助けに行くのって、私達だけで大丈夫なのかな……」
ちなみに、今回の食事には食事前に毒消しの魔法をかけてある。
デュナの、いつにも増しての慎重さに、なんだか思ったよりも規模の大きな話なのではないのかと、不安になってきた。
「まあ、この石が相手に渡らない限り大丈夫でしょう」
トントンとデュナが自分の胸を指し……おそらくそこにあの石が入っているのだろう。
彼女はメガネを僅かに光らせると、軽く笑って見せた。
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