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番外編

『白い羽根』(ある夜の、サラの独白)

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空を、ずっと見ていた。
空から迎えが来るのを、ずっとずっと……待っていた。

いつまで経っても迎えは来ないままで、私には翼が生えてきて、本当の一人きりになった。

それでも、空を見上げる事はやめられなかった。

そんな頃だった。
空から、白い羽根が降ってきた。

私は期待で胸をいっぱいに膨らませて、空を見上げた。

美しい銀髪の天使が長い髪をなびかせて、ふわりと舞い降りてくる。
けれどそれは、お兄ちゃんでも、お母さんでもなかった。

銀色の天使は、地上に降りるより早く、私に光を投げ付けてきた。

ハッ。と目が覚める。
心臓が壊れそうなくらいバクバク言っていて、息が吸えなくて、苦しい。

向こうで寝ていた父さんが、ごそりとこちらを向く気配がする。
「……サラ……?」
眠そうで、心配そうな、父さんの声。
でも頭の中は、まだあの時の事がグルグル回っていて、とても返事ができそうにない。

怖かった。痛かった。死んでしまうと思った。
一人で。一人きりで。
それが、ただただ悲しくてたまらなかった。

こんな世界で、生きていたいわけじゃない。
それでも、待ってるのに。
ずっと、待ってるのに。

「怖い夢を見たんですか……?」
父さんが起き出してきて、そうっと私の頭を撫でる。
あったかい……。
それだけで、ぎゅっと身体中に入った力がゆっくり抜けていくのが分かった。
もう私は、一人じゃない。

もう、私はお兄ちゃんなんか待ってない。

私を忘れてしまったお兄ちゃんなんて、私も、もう忘れてやるんだから。

そう思っているのに、それなのに、どうしても思い出してしまう。
あのお兄ちゃんの、温かい金色の髪を。
優しく笑う、お兄ちゃんの青い瞳を。
『どうしたんだ? サーラ。怖い夢を見たのか?』
『僕の布団においで、お兄ちゃんが一緒に寝てあげるから』
『サーラの手はちっちゃいな。僕が握っておくから、もう大丈夫だ』
そう言って、お兄ちゃんは私を布団に入れてくれたのに。
『怖い夢は、お兄ちゃんがやっつけてやるから、サーラはもうおやすみ』
『僕の大事な、妹……』
そう言って、お兄ちゃんは私の額におやすみのキスをして、頭を撫でてくれたのに。

お兄ちゃんも、お母さんも、私を大切にしてくれてた、はずなのに。
それなのに、どうして……。

溢れ出した涙は、どうしても、止められなかった。

お兄ちゃんなんて、もう、大嫌いなんだから。
許してって言っても、もう許してあげないんだから。

私、怒ってるんだから。


ねえ、お兄ちゃん……。
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