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第四章 守護鳥の夢
サイレンを鳴らせ
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オゼ
ローヌが神様の右手を取った。目の痛みにまだ立ち上がれない神様は抵抗できない。
ローヌも回収人と同じように、魂になって神様の右手に吸い込まれていった。ローヌの魂も白銀だったが、回収人のより明るく爆ぜていた。
どっちが美しいなんてない、どちらも美しかった。きっと俺のだって、何色でも、どんな燃え方をしていたって、あいつらに負けないくらい美しいはずだ。
「……僕の気持ちは届かない」
神様の苦しげな、それでも透き通る声が小さく聞こえた。
「知らねえよ、お前の気持ちなんて。おい、お前、移動するならさっさと移動しろよ。生憎、お前の使いとやらの鳥はアオチに恋をしていてな、クソみたいな移動中も俺たちを守ってくれるようだぜ」
神様が片目で俺を睨む。恐ろしいほどきれいな目だが、怖くはない。
「……まだ駄目だ。一人に選ぶんだ、お願いだから……」
「急にしおらしくするんじゃねえよ。選ばねえよ。全員で次の世界に行く。離れ離れになっても絶対にこいつらを見つける」
「そんな事、できるわけないんだ。僕が知ってる……」
生意気にも神様の目に涙が滲んだ。
「俺たちの回収人には奇跡が起こせるんだよ」
「そんな……」
神様の声をかき消すようなサイレンが響き渡った。
「駄目だ、勝手に鳴らないで……」
神様のすがるような声に、さっきまで微動だにしなかった監視鳥の心臓が、どくんっと動いた。正面にたつ宮殿のような建物が揺れた、と言った方が正確だが。
「これ以上門を維持できません」
船で聞いた監視鳥の声だ。
「早く移動を」
こいつはやっぱり俺たちの味方だ。というより、アオチの。神様の代わりにサイレンを鳴らしたんだ。
「そうだ、サイレンを鳴らせ! 鳴らし続けろ!」
アオチが叫んだ。この鳥には俺の言葉よりアオチの叫びが効果的だ。さっさとしないと、次の世界にお前の大好きなアオチはいないぞ。
「もう、本体の君を消すしかない」
神様の絞り出すような声に振り返ったその瞬間、その左手から真っ直ぐに伸びた金色のナイフが俺の心臓を突き刺した。
ローヌが神様の右手を取った。目の痛みにまだ立ち上がれない神様は抵抗できない。
ローヌも回収人と同じように、魂になって神様の右手に吸い込まれていった。ローヌの魂も白銀だったが、回収人のより明るく爆ぜていた。
どっちが美しいなんてない、どちらも美しかった。きっと俺のだって、何色でも、どんな燃え方をしていたって、あいつらに負けないくらい美しいはずだ。
「……僕の気持ちは届かない」
神様の苦しげな、それでも透き通る声が小さく聞こえた。
「知らねえよ、お前の気持ちなんて。おい、お前、移動するならさっさと移動しろよ。生憎、お前の使いとやらの鳥はアオチに恋をしていてな、クソみたいな移動中も俺たちを守ってくれるようだぜ」
神様が片目で俺を睨む。恐ろしいほどきれいな目だが、怖くはない。
「……まだ駄目だ。一人に選ぶんだ、お願いだから……」
「急にしおらしくするんじゃねえよ。選ばねえよ。全員で次の世界に行く。離れ離れになっても絶対にこいつらを見つける」
「そんな事、できるわけないんだ。僕が知ってる……」
生意気にも神様の目に涙が滲んだ。
「俺たちの回収人には奇跡が起こせるんだよ」
「そんな……」
神様の声をかき消すようなサイレンが響き渡った。
「駄目だ、勝手に鳴らないで……」
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「これ以上門を維持できません」
船で聞いた監視鳥の声だ。
「早く移動を」
こいつはやっぱり俺たちの味方だ。というより、アオチの。神様の代わりにサイレンを鳴らしたんだ。
「そうだ、サイレンを鳴らせ! 鳴らし続けろ!」
アオチが叫んだ。この鳥には俺の言葉よりアオチの叫びが効果的だ。さっさとしないと、次の世界にお前の大好きなアオチはいないぞ。
「もう、本体の君を消すしかない」
神様の絞り出すような声に振り返ったその瞬間、その左手から真っ直ぐに伸びた金色のナイフが俺の心臓を突き刺した。
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