鳥に追われる

白木

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第四章 守護鳥の夢

最後のサイレン

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オオミ


 また、あのサイレンが鳴り響いた。

「うるっ」

 ウルウがどこから聞こえてくるとも知らないその音を追って、きょろきょろ辺りを見回している。

 あの、癒しのウルウが死ぬ? まだ生まれたばかりなのに? 何も悪いことをしてないのに? 

「本体の無言ちゃんが、残って欲しいと望んでも、ですか」

 そんなのダメだ――。そしてウルウも気になるが、僕はアオチさんとオゼさんのそばに居なくちゃ……

 ん? ローヌさんの様子がおかしい。サイレンの音に真剣に聞き入っている。その時、心臓を喰う鳥が頭上を飛ぶ影を感じた。

「これは移動のサイレンではありません!」


「僕も初めて聞くサイレンだ」

 ローヌさんが回収人さんに駆け寄る。

 本当か? 僕にはさっきと同じサイレンにしか聴こえない。

「アオチさん、オゼさん」

 不安になって直ぐ後ろに居る二人を見た。

「どこが……違うんだろうな」

「何が始まるんだ」

 二人ともそれぞれ不安気に呟いた。

 その時、まだ鳴りやまないサイレンの違いが、僕にもわかった。

「この音、この石の中からしていませんか?」

 アオチさんとオゼさんが顔を見合わせてから、宮殿みたいな心臓を見上げた。

 そうだ、さっきまでの二回はとまり石の外から響いていた。今は僕らのいる石の内側が、もっと言えば監視鳥の心臓が震えて音を出しているんだ。

「神様がここに来るんじゃないでしょうか」

 数メートル先の回収人さんを庇うようにローヌさんが警戒して周囲を見回している。

「ウルウ! お花の中に入っちゃだめ!」

 突然、初めて聞くマモルくんの叫び声がサイレンを引き裂いた。

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