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第四章 守護鳥の夢
鳥を助ける
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世界中が死のノイズで溢れてきた。
ここはもう後数十年しかもたないだろうな。
最近気に入っている岬に立って考えていた。美しい夕陽だ。毎日見ていても少しも飽きない。あと少しで終わる世界、存分に目に焼き付けておこう。
――あいつ、またいるな。
遠い浜辺に一人の少年を見つけた。ここ何日も連続で、俺と同じ時間にそこにいるので、嫌でもその姿を覚えてしまった。
白い長袖のシャツに、よれよれのズボンを膝までまくって浜辺を歩いている。
大きなビニール袋を持ったその子の歳は十歳くらいだろうか。
秋の夕方は短い。
何の用事か知らないが、帰る頃には真っ暗だろう。
普段こういうことはないのに、妙にその子が気になった。
次の日、俺は岬ではなく、浜辺に立って夕陽を見ていた。
あの少年が来たら後をつけてみようと思っていた。来なければ来ないで、それで良い。
ところが期待通り、その子は現れた。いつもと同じ服装で、同じビニール袋をカサカサさせて。
その中身が気になった。大きさのわりに軽そうに運んでいる。
横に並んで覗いてみることにした。
――お前らは知らないだろうが、俺たち回収人は良くこんな事をしている。だから、船に乗ってから、あれこれ真っ当な人間を偽ろうとしても全く意味がない。
そう、そのビニール袋の中身だ。花だったんだよ。コスモスだ。
白いコスモスの花が袋一杯に入っていた。
これをどこに持って行くんだ? ますます興味をひかれてしまった。
――結構歩く。だんだん暗くなってきた。今日はついて来てしまった手前、無事に帰宅するまでをセットでを見届けようと思った。
その時、少年の足が止まった。薄い木の板で出来た、浜辺の小さな小屋の前でその子は一分ほど黙っていた。
そして覚悟を決めたように中に入る。俺も後に続いた。
これは――。自分の目を疑った。
心臓を喰う鳥がそこに横たわっていたからだ。こんな小さな小屋に収まっているのは、自分で大きさを調整したわけではなく、弱っているからだろう。
その心臓を喰う鳥は死にかけていた。
この子は一体何をするつもりなんだ。当然そんな俺のことなど目に入っていない少年は、鳥の前に膝をつくと、ビニール袋を逆さにした。
美しい白い花びらが、心臓を喰う鳥の羽と同化して幻想的だ。
「ごめんね。今日は白しかなかったんだ」
そう言うと、その子は心臓を喰う鳥のそばで泣き出した。
呼吸をするのがやっとな鳥が、涙の落ちた少年の手の甲に長いくちばしをそっと寄せた。
俺は何を見ているんだろう。
最近、この世界の残り時間のことばかり考えていたせいか、その時、妙な気を起こしてしまった。
話しかけたくなって、姿を現してしまったんだ。
「どうして花を集めてるんだ」
俺の言葉に顔を上げた少年の顔は驚いていなかった。
今思うと、心臓を喰う鳥に聞いて知っていたのかも知れないな、俺みたいなやつがいることを。
「花があれば、治るかもしれないんです」
幼いがしっかりした声で、そいつは答えた。
「見せてみろ」
心臓を喰う鳥が怪我をしていることは解っていた。俺に治せるなんて到底思えなかったが、近づいて、今しがたその子が被せた花をよけて身体をみた。
これはもう手遅れだな、そう思った。監視鳥とやり合ったに違いない。俺なら――他の回収人だって傷を負わせて逃がすことなんてしない。確実に殺す。
監視鳥は追い払うことだけを目的に戦うから残酷だ。こうして怪我を負わせたままでもお構いなしだ。
監視鳥に抉られた胸の中で、悲しい色の心臓が弱々しく動いているのが見えた。
「花があれば助かるって、どういう事だ」
「見ていてください」
少年が白いコスモスをかき集め、あろうことか、心臓がのぞく傷口に詰め込んだ。するとどうだろう、白い花びらがみるみる吸収され、心臓がさっきより強く鼓動し始めたのだ。
「どういう事だ……」
同じ質問を繰り返してしまった。呑み込みが悪いやつと思われたか。
「この鳥に頼まれたんです、コスモスを持って来て欲しいって。だから僕、毎日、学校の花壇とか、公園とか色んなところから、その、コスモスを盗んできています」
悪い事をしているという自覚はあるようで、小さな声で話し始めたが、最後の方は開き直ったように、俺の目を真っすぐ見て言い切った。
最初から聞くと、浜辺に流されて来た鳥を見つけたのは一週間前。死んでいると思い、埋めてやろうと拾い上げたところ、何と人間の言葉で話しかけてきたという。
家に連れて帰るわけにもいかず、誰も使っていないと知っていたこの小屋に運んだ。
コスモスを傷口に入れて欲しいと頼まれ、回復した時には嬉しかったが、一時的なものだった。
鳥の話によると完治するには黒いコスモスが必要だという。他のコスモスでは心臓が回復しても傷口が閉じずに、また弱ってしまうそうだ。
「そうか、じゃあ黒いコスモスを胸に詰めれば、心臓も回復して、傷も閉じるのか」
こくりとその子が頷いた。泣きやんだ顔を改めて見るとなかなかかわいい子だった。
「黒いコスモスが見つけられないんです」
本当に悔しそうにその子が言う。
「……俺が探してきてやろうか」
何でそんなことを言ってしまったのかわからない。心臓を喰う鳥は俺にとっても敵だ。だから、余計に弱っているのを見殺しにする気にはなれなかった。元気になって、俺の邪魔をするような時には殺してやろう、そう思ったんだ。
黒いコスモスを見つけるのは俺にとっては簡単だった。
誰のもの、なんて俺の知ったことではないから、それがあった記憶ごと奪ってきてやった。
次の日の夕方、約束の浜辺に現れたその子に、花いっぱいのビニール袋を渡した。あの時の顔は忘れない。安堵が夕陽に反射して、希望に輝いていた。
急ぎ足の少年を追って小屋へ入ると、鳥の呼吸が今にも止まりそうだった。焦ったよ。正直、鳥のことよりも、さっきまで期待に胸を膨らませていたあの子を絶望させることの方が嫌だった。
動揺する少年をなだめながら、黒いコスモスを胸に詰めさせた。
俺自身、半信半疑だったんだ。コスモスで鳥が生き返るなんて話、長い間回収人をやっているが聞いたことがない。
でも、結果、鳥は生き返った。
あの日はかなり長い時間、少年とアオチで言うタンチョウモドキが抱き合っているのを眺めていた。
なんでこんな話をしたか、と思うだろ。
最近その子に会ったんだ。すっかり大人になっていたが、直ぐにわかった。
選別が何日も前に始まっていたのは知っているだろう。
お前たちの前に、俺の船に五人で乗ってきたあの子は、直ぐに決断した。他の四人を自分の手で殺したんだ。俺の情が移る前にな。
そして、こんな事を俺に教えた。
「あの時の鳥から聞いたんです。回収人も監視鳥も神様さえ気がついていないかも知れないこと。危険だから僕自身はやるなと言われました。でももしあなたに、黒いコスモスを持って来てくれた回収人に会ったら伝えてやってくれって。それは――」
あ、着いたようだな。この話はお前たちに伝えるつもりはなかったから、結末も知る必要はない、気にするな。
世界中が死のノイズで溢れてきた。
ここはもう後数十年しかもたないだろうな。
最近気に入っている岬に立って考えていた。美しい夕陽だ。毎日見ていても少しも飽きない。あと少しで終わる世界、存分に目に焼き付けておこう。
――あいつ、またいるな。
遠い浜辺に一人の少年を見つけた。ここ何日も連続で、俺と同じ時間にそこにいるので、嫌でもその姿を覚えてしまった。
白い長袖のシャツに、よれよれのズボンを膝までまくって浜辺を歩いている。
大きなビニール袋を持ったその子の歳は十歳くらいだろうか。
秋の夕方は短い。
何の用事か知らないが、帰る頃には真っ暗だろう。
普段こういうことはないのに、妙にその子が気になった。
次の日、俺は岬ではなく、浜辺に立って夕陽を見ていた。
あの少年が来たら後をつけてみようと思っていた。来なければ来ないで、それで良い。
ところが期待通り、その子は現れた。いつもと同じ服装で、同じビニール袋をカサカサさせて。
その中身が気になった。大きさのわりに軽そうに運んでいる。
横に並んで覗いてみることにした。
――お前らは知らないだろうが、俺たち回収人は良くこんな事をしている。だから、船に乗ってから、あれこれ真っ当な人間を偽ろうとしても全く意味がない。
そう、そのビニール袋の中身だ。花だったんだよ。コスモスだ。
白いコスモスの花が袋一杯に入っていた。
これをどこに持って行くんだ? ますます興味をひかれてしまった。
――結構歩く。だんだん暗くなってきた。今日はついて来てしまった手前、無事に帰宅するまでをセットでを見届けようと思った。
その時、少年の足が止まった。薄い木の板で出来た、浜辺の小さな小屋の前でその子は一分ほど黙っていた。
そして覚悟を決めたように中に入る。俺も後に続いた。
これは――。自分の目を疑った。
心臓を喰う鳥がそこに横たわっていたからだ。こんな小さな小屋に収まっているのは、自分で大きさを調整したわけではなく、弱っているからだろう。
その心臓を喰う鳥は死にかけていた。
この子は一体何をするつもりなんだ。当然そんな俺のことなど目に入っていない少年は、鳥の前に膝をつくと、ビニール袋を逆さにした。
美しい白い花びらが、心臓を喰う鳥の羽と同化して幻想的だ。
「ごめんね。今日は白しかなかったんだ」
そう言うと、その子は心臓を喰う鳥のそばで泣き出した。
呼吸をするのがやっとな鳥が、涙の落ちた少年の手の甲に長いくちばしをそっと寄せた。
俺は何を見ているんだろう。
最近、この世界の残り時間のことばかり考えていたせいか、その時、妙な気を起こしてしまった。
話しかけたくなって、姿を現してしまったんだ。
「どうして花を集めてるんだ」
俺の言葉に顔を上げた少年の顔は驚いていなかった。
今思うと、心臓を喰う鳥に聞いて知っていたのかも知れないな、俺みたいなやつがいることを。
「花があれば、治るかもしれないんです」
幼いがしっかりした声で、そいつは答えた。
「見せてみろ」
心臓を喰う鳥が怪我をしていることは解っていた。俺に治せるなんて到底思えなかったが、近づいて、今しがたその子が被せた花をよけて身体をみた。
これはもう手遅れだな、そう思った。監視鳥とやり合ったに違いない。俺なら――他の回収人だって傷を負わせて逃がすことなんてしない。確実に殺す。
監視鳥は追い払うことだけを目的に戦うから残酷だ。こうして怪我を負わせたままでもお構いなしだ。
監視鳥に抉られた胸の中で、悲しい色の心臓が弱々しく動いているのが見えた。
「花があれば助かるって、どういう事だ」
「見ていてください」
少年が白いコスモスをかき集め、あろうことか、心臓がのぞく傷口に詰め込んだ。するとどうだろう、白い花びらがみるみる吸収され、心臓がさっきより強く鼓動し始めたのだ。
「どういう事だ……」
同じ質問を繰り返してしまった。呑み込みが悪いやつと思われたか。
「この鳥に頼まれたんです、コスモスを持って来て欲しいって。だから僕、毎日、学校の花壇とか、公園とか色んなところから、その、コスモスを盗んできています」
悪い事をしているという自覚はあるようで、小さな声で話し始めたが、最後の方は開き直ったように、俺の目を真っすぐ見て言い切った。
最初から聞くと、浜辺に流されて来た鳥を見つけたのは一週間前。死んでいると思い、埋めてやろうと拾い上げたところ、何と人間の言葉で話しかけてきたという。
家に連れて帰るわけにもいかず、誰も使っていないと知っていたこの小屋に運んだ。
コスモスを傷口に入れて欲しいと頼まれ、回復した時には嬉しかったが、一時的なものだった。
鳥の話によると完治するには黒いコスモスが必要だという。他のコスモスでは心臓が回復しても傷口が閉じずに、また弱ってしまうそうだ。
「そうか、じゃあ黒いコスモスを胸に詰めれば、心臓も回復して、傷も閉じるのか」
こくりとその子が頷いた。泣きやんだ顔を改めて見るとなかなかかわいい子だった。
「黒いコスモスが見つけられないんです」
本当に悔しそうにその子が言う。
「……俺が探してきてやろうか」
何でそんなことを言ってしまったのかわからない。心臓を喰う鳥は俺にとっても敵だ。だから、余計に弱っているのを見殺しにする気にはなれなかった。元気になって、俺の邪魔をするような時には殺してやろう、そう思ったんだ。
黒いコスモスを見つけるのは俺にとっては簡単だった。
誰のもの、なんて俺の知ったことではないから、それがあった記憶ごと奪ってきてやった。
次の日の夕方、約束の浜辺に現れたその子に、花いっぱいのビニール袋を渡した。あの時の顔は忘れない。安堵が夕陽に反射して、希望に輝いていた。
急ぎ足の少年を追って小屋へ入ると、鳥の呼吸が今にも止まりそうだった。焦ったよ。正直、鳥のことよりも、さっきまで期待に胸を膨らませていたあの子を絶望させることの方が嫌だった。
動揺する少年をなだめながら、黒いコスモスを胸に詰めさせた。
俺自身、半信半疑だったんだ。コスモスで鳥が生き返るなんて話、長い間回収人をやっているが聞いたことがない。
でも、結果、鳥は生き返った。
あの日はかなり長い時間、少年とアオチで言うタンチョウモドキが抱き合っているのを眺めていた。
なんでこんな話をしたか、と思うだろ。
最近その子に会ったんだ。すっかり大人になっていたが、直ぐにわかった。
選別が何日も前に始まっていたのは知っているだろう。
お前たちの前に、俺の船に五人で乗ってきたあの子は、直ぐに決断した。他の四人を自分の手で殺したんだ。俺の情が移る前にな。
そして、こんな事を俺に教えた。
「あの時の鳥から聞いたんです。回収人も監視鳥も神様さえ気がついていないかも知れないこと。危険だから僕自身はやるなと言われました。でももしあなたに、黒いコスモスを持って来てくれた回収人に会ったら伝えてやってくれって。それは――」
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