奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

世界を変えるもの2

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 気がつくとそこは静寂で、上昇する感覚だけが残っていた。

 目の前には涼しい顔のシロキさんと恍惚とした表情の作成者がいた。

「わたしはやっと――」

「居るべきところに戻るんだよ」

 この門はどこまで形を変えなが上昇するんだろう。極楽の最上部とはこんなに遠かったのか。正十二面体の天井はどこにあるのだろう。

 ――ふと空気が変った。

 この世界と違う何か、次の世界の匂いだ。

 本能的にそう理解した。

 あれは極楽の外にあったのか、遠い昔、青い液体の中から見上げた大きな鳥を思い出していた。

 この世界はこんなに危うい場所で踏みとどまっている。嫌だ、向こうに行きたくない。

 強く心で叫ぶのと同時に景色が止まった。

 シロキさんが無言で作成者に手を差し伸べる。

「飛ぶ準備はいい?」

 作成者の姿が変る。腕に青の心臓と白い骨を抱えたまま、大きな翼を静かに開いた。回想の中で見たものより、ずっと柔らかそうだ。力強さを感じない美しい羽。これで、本当に地上まで落ちていけるのだろうか。

 妙に暖かそうだが、これは冬毛か? だとしら地上は今、冬か。

 初めてこいつを美しいと思った。整っているだけで表情を作るのが極端に下手な不器用で優しい鳥。

 ゆっくり瞬きをするその横顔はずっと眺めていたい優雅さだった。ああ、使いに戻ってきているのだな、そう感じた。

 シロキさんの細くて透き通るような指先が作成者の輪郭をなぞる。踊るような指の動きに俺の鼓動も高鳴る。

 シロキさんの指が作成者の尖った鳥の爪に触れた。

 次の瞬間シロキさんが力を込め作成者を引き寄せる。そんなに強く引いては指がちぎれてしまう、そんな不安が甘く心に滲んだ。

「飛んで」

 シロキさんが作成者を上に、門の方へ高く放った。

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