321 / 331
第四章 鳥像の門
嫉妬の影6
しおりを挟む
エンド
ファミドすら尻尾をぱたぱたと作成者の肩にぶつけて「気にしてないよ」と言っているようだ。
しかし、そんな柔らかな空気をシロキさんは許さない。
「だったら僕を刺したのは?」
「あれはお前が刺さりに行ったんだろ。忘れっぽいのか」
勝手に恋され嫉妬され続けているナイトが呆れたようにシロキさんを見た。
「それでも避ければ良いじゃない」
シロキさんは引かない。ナイトが更にシロキさんを戒めようとした時、作成者が俺を見た。
「君はどう思う?」
この流れで俺? こいつ俺に何か恨みでもあるのか。
「シロキさんが仕組んでいたんだろう? 最初からそう思っていた。俺たちはシロキさんの思うように誘導されているだけだ」
今度はシロキさんが俺の方を向く。最初に会った時、カドから急に変わった時から感じていた。この神様はそんなに純粋でも世間知らずでもない。
妖しく、周囲を巻き込みながら、自分の目的に向かって突き進んでいる。
「君は本当に腹立たしいな。僕に惑わされないから」
目を伏せてシロキさんが呟いた。ぞっとするほどきれいだ。
「僕、カドが門と融合して最初に人間の世界に降りた時、生命の神様に会ったんだ。確かに生きていた。美しかった。ただ、美しかった」
作成者が顔を輝かせた。ルキルくんも人間の神様も雷の神様も何か言いかけたが、作成者に時を譲ったようだ。
「シロキ……お前にわたしの神様が姿を現したのかい? 良かった、復活が近いんだ。バラバラの身体を集めるだけの、生きる意志が地上に戻って来たんだ。お前たちのおかげだ。地獄が生命を救ったんだよ」
青白い顔を紅潮させて早口でしゃべる作成者はもう子どものようだ。
「――欠けていたけどね。両手、両足も、片目も心臓も。それでも完全に美しかった。僕はね、あの日から決めている。僕の目を神様に返すこと。自分からガジエアに刺されることなんて怖くない。僕は生命の神様の欠片なんだから」
シロキさんの言葉に被せるようにナイトが強く言った。
「目を返す必要ないだろ。生命の神様だって、死にたがりの人間のせいで修復ができなかっただけで、もう大丈夫だ。自分でどうにかするさ。俺を怖がらせないでくれよ。お前の目が好きなんだ」
シロキさんがもじもじしている。
――なんだよ、決心したようなことを言って、ナイトに気のある台詞を言われると一瞬で揺らいでいるじゃないか。
「君、少し黙ってなよ。ある意味、君が一番の神様殺しなんだから。みんな君のせいでおかしくなっちゃう」
人間の神様が溜息混じりにナイトに言った。
こいつも可哀想だな。何もしてないのにしゃべるなとまで言われるのか。
それをいうなら俺は何もしていないのにシロキさんに嫌われている。何故だかわからないけれど。
しゃがみ込んでカドに触れる。どうしたら良い?
「大丈夫、シロキさんが何かしたら俺が守ってあげる」
床がさざ波を立てて手を包んでくれた。
「ああ、若い炎の悪魔、お前は心配しなくていいんだ。シロキとお前は対になる魂だから、反発しているだけだよ。シロキは昔から子供っぽいんだ」
作成者が目を細める。
こいつもさっきからシロキさんに敵意を露わにされているのに、やっぱり自分が最初に造った神様はかわいいんだろう、声が優し過ぎる――というか、俺とシロキさんが対ってなんだよ。対はナイトではないのか。
そのシロキさんはまた冷たい表情に戻り、アドバンドに手を差し出した。
ファミドすら尻尾をぱたぱたと作成者の肩にぶつけて「気にしてないよ」と言っているようだ。
しかし、そんな柔らかな空気をシロキさんは許さない。
「だったら僕を刺したのは?」
「あれはお前が刺さりに行ったんだろ。忘れっぽいのか」
勝手に恋され嫉妬され続けているナイトが呆れたようにシロキさんを見た。
「それでも避ければ良いじゃない」
シロキさんは引かない。ナイトが更にシロキさんを戒めようとした時、作成者が俺を見た。
「君はどう思う?」
この流れで俺? こいつ俺に何か恨みでもあるのか。
「シロキさんが仕組んでいたんだろう? 最初からそう思っていた。俺たちはシロキさんの思うように誘導されているだけだ」
今度はシロキさんが俺の方を向く。最初に会った時、カドから急に変わった時から感じていた。この神様はそんなに純粋でも世間知らずでもない。
妖しく、周囲を巻き込みながら、自分の目的に向かって突き進んでいる。
「君は本当に腹立たしいな。僕に惑わされないから」
目を伏せてシロキさんが呟いた。ぞっとするほどきれいだ。
「僕、カドが門と融合して最初に人間の世界に降りた時、生命の神様に会ったんだ。確かに生きていた。美しかった。ただ、美しかった」
作成者が顔を輝かせた。ルキルくんも人間の神様も雷の神様も何か言いかけたが、作成者に時を譲ったようだ。
「シロキ……お前にわたしの神様が姿を現したのかい? 良かった、復活が近いんだ。バラバラの身体を集めるだけの、生きる意志が地上に戻って来たんだ。お前たちのおかげだ。地獄が生命を救ったんだよ」
青白い顔を紅潮させて早口でしゃべる作成者はもう子どものようだ。
「――欠けていたけどね。両手、両足も、片目も心臓も。それでも完全に美しかった。僕はね、あの日から決めている。僕の目を神様に返すこと。自分からガジエアに刺されることなんて怖くない。僕は生命の神様の欠片なんだから」
シロキさんの言葉に被せるようにナイトが強く言った。
「目を返す必要ないだろ。生命の神様だって、死にたがりの人間のせいで修復ができなかっただけで、もう大丈夫だ。自分でどうにかするさ。俺を怖がらせないでくれよ。お前の目が好きなんだ」
シロキさんがもじもじしている。
――なんだよ、決心したようなことを言って、ナイトに気のある台詞を言われると一瞬で揺らいでいるじゃないか。
「君、少し黙ってなよ。ある意味、君が一番の神様殺しなんだから。みんな君のせいでおかしくなっちゃう」
人間の神様が溜息混じりにナイトに言った。
こいつも可哀想だな。何もしてないのにしゃべるなとまで言われるのか。
それをいうなら俺は何もしていないのにシロキさんに嫌われている。何故だかわからないけれど。
しゃがみ込んでカドに触れる。どうしたら良い?
「大丈夫、シロキさんが何かしたら俺が守ってあげる」
床がさざ波を立てて手を包んでくれた。
「ああ、若い炎の悪魔、お前は心配しなくていいんだ。シロキとお前は対になる魂だから、反発しているだけだよ。シロキは昔から子供っぽいんだ」
作成者が目を細める。
こいつもさっきからシロキさんに敵意を露わにされているのに、やっぱり自分が最初に造った神様はかわいいんだろう、声が優し過ぎる――というか、俺とシロキさんが対ってなんだよ。対はナイトではないのか。
そのシロキさんはまた冷たい表情に戻り、アドバンドに手を差し出した。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
アタエバネ ~恵力学園一年五組の異能者達~
弧川ふき
ファンタジー
優秀な者が多い「恵力学園」に入学するため猛勉強した「形快晴己(かたがいはるき)」の手首の外側に、突如として、数字のように見える字が刻まれた羽根のマークが現れた。
それを隠して過ごす中、学内掲示板に『一年五組の全員は、4月27日の放課後、化学室へ』という張り紙を発見。
そこに行くと、五組の全員と、その担任の姿が。
「あなた達は天の使いによってたまたま選ばれた。強引だとは思うが協力してほしい」
そして差し出されたのは、一枚の紙。その名も、『を』の紙。
彼らの生活は一変する。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる