奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

嫉妬の影4

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 お前たちは知らないかも知れなが、ふかふかが人間の世界で探索を始めたのはシロキが鏡の地獄の空を固定するより前だ。

 行き来をしていないとは言え、地獄とはつながっているので、大体起きていることはわかるが、人間の世界はそうはいかない。

 いつも役割から戻ってきたシロキの様子や、たまにわたしへ引き渡される銀や金の魂の記憶から今の地上を知る。

 そしてもう一つの重要な情報源が、鏡の地獄から送られてくるナイトに浄化された魂だ。

 あの人間の世界に戻ることを拒絶していたふかふかが、わたしのために降りるのだ。

 この子たちはナイトが浄化しきれなかった闇の部位。わたしがあの時、焦ってかき集めてしまったから。未だに、いやこれからもずっと、その影の身体に恐怖と怯えを抱え続ける。

 せめて、この子たちが今まで出来なかったことをさせてあげたい。

「わたしのために消えてはだめだよ」

 そう言って、鳥の門の方へ送り出した。


 あの時は本当に知らなかったんだ。

 まさか人間の身体の中にわたしの神様の心臓が隠されているなんて。それに、ナイトが骨を人間の神様に預けていたなんて――。

 ふかふかも地上に降りたばかりの時はただウロウロしていた。

 しばらくしてから、神様の心臓より先に骨の気配を感じたようだ。ふかふかではなく、わたしが預けた骨の方が反応した。

 ふかふかを通してそれを見た時は驚いた。ナイトがいたからだ。

 ――ナイトがまだ骨を持っているのか? 確かにカドの融合が完成するまで、あれは必要だった。でもその後、蜘蛛を助けた男の魂と神様の心臓と一緒に人間の世界へ還したと思っていたのだ。まだ持ち歩いていたとは。

 そして次にふかふかから感じたのは甘い、人間が恋心と呼ぶ種類の歓喜だった。

「どいつもこいつも……」

 思わず口に出していた。

 わたしの愛しいものはみんなナイトにこの感情を抱いてしまう。

 まさかふかふかまで……

 久しく忘れていた嫉妬心が煽られる。

 一度芽生えた感情は消えたりはしない。その時改めて思い知った。

 この話を始めて聞く、例えば若い悪魔などは、これを誰の何の物語だと思うだろう。

 誰を中心に置くかによってそれは全く違ってくる。カドにとってはもしかしたら自我の目覚めの物語なのかも知れないし、シロキにとっては贖罪の物語かも知れない。

 とにかく、わたしにとっては愛の物語なのは確かだ。

「どうしてわたしを選んでくれないんだ……」

 そう声に出ていた。あの蜘蛛を助けた男だって、わたしとナイトが似ていると言ったのに、直後に全然違うと矛盾したことを言ってわたしを混乱させた。

 わたしにはあと何が足りなくて、何が余計なんだ? 誰か教えてくれ。

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