奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

地獄1

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シロキさん


 この人はいったい、いつになったら起きるんだろうか。

 作成者が僕の胸で丸くなって寝息を立て始めた夜から何日目だろう。いい加減、睡眠の不要な僕も休息を欲してきた。

「シロキさん、その人のことは俺が見てるから、休みなよ」

 カドが幼い声で大人っぽく言った。この子はかわいいだけではなく、僕よりずっとしっかりしている。

「シロキさん、その人をゆっくり僕の膝に乗せて」

 カドの小さな膝に作成者の上体を預ける。

「ねえ、大丈夫? 重くないかい?」

 カドが静かで純粋な声で答えた。

「シロキさんは何も考えずに横になって」

 言葉が余りに暖かく僕を包み込むから、逆らわずにそのまま白い床に身体をぺったりつけた。

 カドのかわいい膝と、作成者の紙に描いたように白く整った寝顔が見える。

 僕とカドが入れ替わっても気がつかないくらい眠りが深いのか、それとも僕らが同じ匂いだからか、安心しきっている。

 作成者がこうして眠ってしまう前の数ヶ月間は本当に忙しそうで、僕らと過ごす時間もほとんどなかったから、今はただ休ませてあげたい。


「来年、月の神様がくるから急がないといけないんだ。まずは今、浄化場にある魂を全て地上に還せる状態にしないとならない」

 淡々と作成者は言っていた。

「僕も手伝おうか」

 そう声をかけると、口元に薄い笑いを浮かべ、

「お前に浄化をさせる訳にはいかないよ。わたしが戻るまで、カドと鏡の浄化場に居てくれるかい? それとも、もうあそこは飽きてしまったかな」

「全然飽きない。あそこは大好き。浄化はそんなに急がなければならないの?」

 作成者が考え込むように遠くを見た。この人の良くやる表情だ。

「そうだね、急がないといけない。わたしは今回の浄化が終わった後、大きな仕事をしないとならないんだ。それにはかなり熱量を使うから、事前にちょと長めの睡眠を取る必要がある」

 

 そのちょっと長めが既に何日目だろうか。

そろそろ起こした方が良いのだろうか。

 手を伸ばせば届く、その人の顔に向かって指を動かす。

「シロキさん」

 カドの声にびくっと動きを止めた。

「そっとしておいてあげて」

 やっぱりこの子はしっかり者だ。僕もそのまま、青いガラス玉の中にいた時のように丸くなった。

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