奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

本当の移動1

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生命の神様


 僕の意志に関係なく、門は次の世界に向かって開き始める。

 ――どこにも行きたくない。僕は見捨てていない。勝手に門を開かないで――。

 崖の上で月の神様が泣いているのが見えた。

 ごめん――。僕は君にまた世界を壊させてしまう。止めたい、止めたい、どうしても。

 他の神様と同じ様に僕の門にも縛りがある。

 それは、この世界で「死にたい」という声が「生きたい」気持ちを上回ってしまった時。

 僕の意志に関係なく、もうここに存在できないという必然で門が次の世界へ向けて開く。

 大粒の雪が躍るように舞い散る、その隙間を縫うように真っ直ぐ雨が落ちている。

 雷がその雪と雨を照らして空中を駆け回る。

 いつの間に海の上に巨大な炎の球が数えきれないほど浮いていた。炎の発する光が空まで真っ直ぐに伸びている。

 風が煽るように吹き荒れる。

 足元から獣が叫ぶような音がして、地面が大きく揺れる。

 そして、夜空に太陽が登った。

 次の世界に移動するために集まる太古の神様たちが僕の鳥像の門が完全に開くのを今か今かと待つ。

 全ての神様が移動し、月の神様が見捨てられた世界に巨大な石を落として破壊すると、次こそは、と願いを込め、僕たちはまた無からの創造を始める。

 こうやって何度も何度も移動を繰り返してきた。

 その度に寂しかったけれども悲しくはなった――それが薄情な僕の正体だ。

 この状況、空に浮く鏡を今すぐ身体に取り込むべきなのはわかっている。

 あの、鳥の形をした空間の向こう、新しい世界で僕は再成する。

 自分が移動するだけならば良いけれど、僕には全ての神様が門を通過するまで開放状態を維持する責任がある。

 その前に力尽きるわけにはいかない。だから熱量を出来るだけ回収しろと、頭上でみんなが騒いでいるんだ。

 でも僕は――この世界を離れたくない。

 抵抗する心が門が広がるのを押さえつけていた。

「なあ、それ返せ」

 この混沌に負けない強い声がして、はっとして振り返る。人間の神様が海に入ってきていた。

 いつの間に腕を伸ばしたら触れられる近さまで来ている。

「……え」

「その男の身体だよ、返せ。どうせあんた達はこの世界を捨てて、次の世界に移るんだ。世界を大きな石で押し潰して無かったことにして、私たちを捨てる」

 波に身体を揺らしながら人間の神様が言った。……何? その清々しい表情は?

「僕は……」

「好きにしろよ。わたし達も勝手にやるさ、あんた達の消えた無の世界でずっとね」

 そう言って僕の抱えていたボロボロの男の身体を、中に眠る魂ごと取り上げた。

「あ……」

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