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第四章 鳥像の門
わたしの神様2
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完全に修復したわたしの神様が夜の浜辺に座っていた。なんてきれいなんだろう。今でも、これからもわたしはそう思い続ける。
神様には言えないことがある。
実は修復途中の神様も物凄くきれいだと思っている。骨の色も、血の色も透ける心臓の動きも、うっとりと眺めている。
こんな事を伝えたら気持ち悪がられてしまう。この頃のこんな感覚が、後の神様や悪魔の作成に役立つとは思ってもみなかった。
純粋にわたしはわたしの神様の全部が好きだった。
「おいで」
神様が広げた腕に飛び込む。
「お前のその歩き方が好きだよ」
わたしが地上でぴょんぴょん跳ねて移動するのが愛おしいと、神様はいつも喜んでくれる。その度に下手くそな自分の歩き方が誇らしくなった。
神様の腕に身体を埋めた。暖かくて、いい匂いがした。生命の香り、わたしだけがこんな近くで感じられる。
「遅かったですね。とても心配しました。二度と海から戻って来なかったらと、怖かった」
今回、神様は新月に命を空に放って、透明になるとそのまま暗い海に溶けた。
いつもなら遅くても朝には戻ってくれるのに、今回は次の満月に修復を終えてわたしの元に帰ってきた。
恐ろしく長い時間だった。
修復は、海の神様が預かってくれている返却された命を集めて行う。
そしてわたしの偉大な神様はこの良い匂いの身体の中で、汚れた命を浄化していた。実は自分の神様の偉大さを、その頃は正確に認識していなかった。
後にわたしが真似をしようとした時、それは地獄という、一つの広大な世界になってしまった。巨大な十個の地獄と大勢の悪魔でやっと成り立たせた仕組みを、美しい――本当に骨の髄まで美しい身体一つで行っていたのだから、どれほどの熱量と細密さを持っていたのだろう。使いのわたしにも計り知れない。
「心配させてごめんね」
そう言ってわたしの羽に顔を寄せ、そっとくちばしを撫でながら、どんどん身体が倒れてきた。
「疲れたでしょう。休息してください。わたしが守ってあげるから安心して」
神様は砂浜に仰向けに倒れ、わたしを見上げた。
「お前は本当に頼りになるね。僕の自慢の使いだよ」
そうきれいな声で言った。
この声をいつまでも聞いていたくて、シロキの声に使ってしまったことを後悔した。
自分の造った子に抗えなくなってしまったからだ。シロキがカドに話しかける度に、わたしに言っているように錯覚した。
理由は他にもあるけれど。
神様には言えないことがある。
実は修復途中の神様も物凄くきれいだと思っている。骨の色も、血の色も透ける心臓の動きも、うっとりと眺めている。
こんな事を伝えたら気持ち悪がられてしまう。この頃のこんな感覚が、後の神様や悪魔の作成に役立つとは思ってもみなかった。
純粋にわたしはわたしの神様の全部が好きだった。
「おいで」
神様が広げた腕に飛び込む。
「お前のその歩き方が好きだよ」
わたしが地上でぴょんぴょん跳ねて移動するのが愛おしいと、神様はいつも喜んでくれる。その度に下手くそな自分の歩き方が誇らしくなった。
神様の腕に身体を埋めた。暖かくて、いい匂いがした。生命の香り、わたしだけがこんな近くで感じられる。
「遅かったですね。とても心配しました。二度と海から戻って来なかったらと、怖かった」
今回、神様は新月に命を空に放って、透明になるとそのまま暗い海に溶けた。
いつもなら遅くても朝には戻ってくれるのに、今回は次の満月に修復を終えてわたしの元に帰ってきた。
恐ろしく長い時間だった。
修復は、海の神様が預かってくれている返却された命を集めて行う。
そしてわたしの偉大な神様はこの良い匂いの身体の中で、汚れた命を浄化していた。実は自分の神様の偉大さを、その頃は正確に認識していなかった。
後にわたしが真似をしようとした時、それは地獄という、一つの広大な世界になってしまった。巨大な十個の地獄と大勢の悪魔でやっと成り立たせた仕組みを、美しい――本当に骨の髄まで美しい身体一つで行っていたのだから、どれほどの熱量と細密さを持っていたのだろう。使いのわたしにも計り知れない。
「心配させてごめんね」
そう言ってわたしの羽に顔を寄せ、そっとくちばしを撫でながら、どんどん身体が倒れてきた。
「疲れたでしょう。休息してください。わたしが守ってあげるから安心して」
神様は砂浜に仰向けに倒れ、わたしを見上げた。
「お前は本当に頼りになるね。僕の自慢の使いだよ」
そうきれいな声で言った。
この声をいつまでも聞いていたくて、シロキの声に使ってしまったことを後悔した。
自分の造った子に抗えなくなってしまったからだ。シロキがカドに話しかける度に、わたしに言っているように錯覚した。
理由は他にもあるけれど。
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