250 / 331
第四章 鳥像の門
わたしの神様1
しおりを挟む
作成者
――良かった、無事に修復してくれた。
最近、修復に時間がかかって、本当に心配だ。いっそ、もう命を放出するのを止めてくれ、とすがりたくなる気持ちを必死で抑えている。
海から水浸しで陸に上がる様子を空から確認し、一安心する。
――わたしの生命の神様。
本体の神様の疲労がじんわりと伝わって来て、わたしもそっと岩場に降りた。
「あなたも疲れたでしょう」
そこにはわたしの神様を同じように心配し、見守っていた月の神様がいた。
月の神様は大好きだ。いつもわたしに優しい。
「さあ、羽を休めて」
わたしはほっとして崩れるように羽を畳んだ。
「あなたの翼は本当に美しいですね」
「あなたの使いの毛皮の方が美しいですよ」
本心からそう言った。あの狐の銀色が風になびいているのを見るのが大好きだった。
「最近、わたしの神様が放った命が、戻って来てくれないのです。自分の身体を削って、きれいな空に散らした命がです。わたしもとても寂しいです」
月の神様がわたしの羽に指を這わせた。
「僕も心配しています。生命の神様は僕の親友ですから。あの鏡が役目を果たしてくれるといいですね」
「わたしの神様はとても心がきれいなので、一度放ってしまった命を信じ過ぎないか心配です。わたしは夜も眠れず空を飛び続けています。こんな時、わたしの使いとしての姿が鳥であって良かったと思うんです。夜の風を痛いほど浴びると、怖いことを忘れます」
月の神様の前で、わたしは本当に素直になれる。何度も世界を壊してきた神様、わたしも消える時にはこの神様に壊されたい。
わたしの神様が消えてしまう前に。
――良かった、無事に修復してくれた。
最近、修復に時間がかかって、本当に心配だ。いっそ、もう命を放出するのを止めてくれ、とすがりたくなる気持ちを必死で抑えている。
海から水浸しで陸に上がる様子を空から確認し、一安心する。
――わたしの生命の神様。
本体の神様の疲労がじんわりと伝わって来て、わたしもそっと岩場に降りた。
「あなたも疲れたでしょう」
そこにはわたしの神様を同じように心配し、見守っていた月の神様がいた。
月の神様は大好きだ。いつもわたしに優しい。
「さあ、羽を休めて」
わたしはほっとして崩れるように羽を畳んだ。
「あなたの翼は本当に美しいですね」
「あなたの使いの毛皮の方が美しいですよ」
本心からそう言った。あの狐の銀色が風になびいているのを見るのが大好きだった。
「最近、わたしの神様が放った命が、戻って来てくれないのです。自分の身体を削って、きれいな空に散らした命がです。わたしもとても寂しいです」
月の神様がわたしの羽に指を這わせた。
「僕も心配しています。生命の神様は僕の親友ですから。あの鏡が役目を果たしてくれるといいですね」
「わたしの神様はとても心がきれいなので、一度放ってしまった命を信じ過ぎないか心配です。わたしは夜も眠れず空を飛び続けています。こんな時、わたしの使いとしての姿が鳥であって良かったと思うんです。夜の風を痛いほど浴びると、怖いことを忘れます」
月の神様の前で、わたしは本当に素直になれる。何度も世界を壊してきた神様、わたしも消える時にはこの神様に壊されたい。
わたしの神様が消えてしまう前に。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

邪神降臨~言い伝えの最凶の邪神が現れたので世界は終わり。え、その邪神俺なの…?~
きょろ
ファンタジー
村が魔物に襲われ、戦闘力“1”の主人公は最下級のゴブリンに殴られ死亡した。
しかし、地獄で最強の「氣」をマスターした彼は、地獄より現世へと復活。
地獄での十万年の修行は現世での僅か十秒程度。
晴れて伝説の“最凶の邪神”として復活した主人公は、唯一無二の「氣」の力で世界を収める――。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる