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第四章 鳥像の門
神様の使い2
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その後、カドだった身体にシロキさんの魂が戻り、鏡の門がカドと一体になるまで、一分もかかっただろうか。全てが滑らかで、静かだった。
初めて見たカドの魂は、シロキさんのものと似て美しい白銀だった。悲しくなるほど健気に燃えていた。使いの魂はみんなこうなのだろうか。神様たちが狂ったように愛情を注ぐわけだ。
門と一つになったカドに頬を寄せた。
カドが戻る前の鏡の門も圧倒されるくらい美しかった。単体でもそうだったのに、カドと同化したこの鏡は想像以上だった。
――この鏡は生きているんだ。
床に触れながら、ふとさっき人間の神様の記憶で聞いた言葉が蘇った。
俺の鼓動を落ち着かせる温度で波を立て、カドが嬉しそうに聞いた。
「どうかな?」
「凄く、きれいで、気持ちが良い。身体は枷だな」
「気に入ってくれて嬉しいな。これからもっとお前を驚かせてやれると思うとわくわくする」
殺気を感じ顔を上げるとシロキさんが立っていた。
「――ベッタベタだね」
息を呑んだのはシロキさんが理不尽に嫌味を言ってきたからではない。
みんなの記憶の中できれいだ、きれいだと言われていたが、そんなもんじゃない。シスの一目惚れのような話を大袈裟に思っていたのは間違えだった。
カドと入れ替わった時すら、その妖しさに意識がおかしくなりかけたのに、完全な魂が入るとこうなるのか――。
「どうしたの? 黙ちゃって」
不満気に言う、その声がまた恐ろしく不安定に響いて、耳の奥が熱くなる。
「お前、いい加減にしろよ、気色悪いな」
嘘だろ? ナイトが鼻をかんだ後の紙くずでも見るような目でシロキさんを一瞥し、吐き捨てた。
「戻って最初にそんなこと言わないでよ」
シロキさんがオドオドしている。
「お前が言うなよ、なんだよ『ベッタベタだね』って、見苦しい」
「シロキさん……」
カドの透きとおった声がした。
シロキさんがペタリと床に膝をつく。どの姿も美しい。
「おかえりなさい」
カドの言葉にシロキさんが床に顔を押し付ける。
それをみんながうっとりと眺めた。
初めて見たカドの魂は、シロキさんのものと似て美しい白銀だった。悲しくなるほど健気に燃えていた。使いの魂はみんなこうなのだろうか。神様たちが狂ったように愛情を注ぐわけだ。
門と一つになったカドに頬を寄せた。
カドが戻る前の鏡の門も圧倒されるくらい美しかった。単体でもそうだったのに、カドと同化したこの鏡は想像以上だった。
――この鏡は生きているんだ。
床に触れながら、ふとさっき人間の神様の記憶で聞いた言葉が蘇った。
俺の鼓動を落ち着かせる温度で波を立て、カドが嬉しそうに聞いた。
「どうかな?」
「凄く、きれいで、気持ちが良い。身体は枷だな」
「気に入ってくれて嬉しいな。これからもっとお前を驚かせてやれると思うとわくわくする」
殺気を感じ顔を上げるとシロキさんが立っていた。
「――ベッタベタだね」
息を呑んだのはシロキさんが理不尽に嫌味を言ってきたからではない。
みんなの記憶の中できれいだ、きれいだと言われていたが、そんなもんじゃない。シスの一目惚れのような話を大袈裟に思っていたのは間違えだった。
カドと入れ替わった時すら、その妖しさに意識がおかしくなりかけたのに、完全な魂が入るとこうなるのか――。
「どうしたの? 黙ちゃって」
不満気に言う、その声がまた恐ろしく不安定に響いて、耳の奥が熱くなる。
「お前、いい加減にしろよ、気色悪いな」
嘘だろ? ナイトが鼻をかんだ後の紙くずでも見るような目でシロキさんを一瞥し、吐き捨てた。
「戻って最初にそんなこと言わないでよ」
シロキさんがオドオドしている。
「お前が言うなよ、なんだよ『ベッタベタだね』って、見苦しい」
「シロキさん……」
カドの透きとおった声がした。
シロキさんがペタリと床に膝をつく。どの姿も美しい。
「おかえりなさい」
カドの言葉にシロキさんが床に顔を押し付ける。
それをみんながうっとりと眺めた。
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