奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

鏡の行方2

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 わたしはあれから何度もロンと男に会いに行った。

 冷たいと思っていた男の表情は会えば合うほど雪のように日々印象を変えることがわかった。

 解ける感情を知る度にわたしは男が好きになっていったけれど、心にひっかかる事が二つあった。

「わたしに何か聞きたいことがあるんですか」

 しゃがんでロンに餌をやっていた男がわたしの顔を見上げた。

「何でわかるの」

 わたしの問に笑顔だけで応えて、立ち上がる。

「……君さ、何で泣かないの?」

 男はいつも孤独に耐えているような痛々しさを纏っていた。それなのに、わたしにさえ涙を見せないのが不思議だった。

「不満ですか」

「少し不満かも。君に頼られたいし、甘えて欲しいし」

 初めて会った夜のように――と言いかけてやめる。

 男が優しく笑った。わたしの方が駄々っ子みたいで立場が良く分からなくなる。

「わたしだって、泣きますよ。いつかあなたの前でも泣くと思います。それで他の質問は?」

 完全に主導権を握られている。

「生命の神様とは何を話した?」

「特に内容のある事は何も」

「また会いたいって言われたんだよね。会ったの?」

 どうしよう、わたしが嫉妬しているみたいな気まずい感じになってきた。

 ただ、あの生命の神様が、この男の何に興味を示したのかどうしても気になる。

「どうなんだろう……また会えるか聞かれたので、わかりませんと答えました」

「何で? 神様の方が会いたそうだったんだろ」

「わたしの神様はあなたなので」

 ああ、これだから。頭を抱えてしまう。

 男の住む建物の庭はすっかり秋で、木々の隙間から溢れる夕陽が葉を赤から朱に染め直していた。

「どうしました」

「わたしだけでなくても良いんだよ、君が信じて、救いを求めるのは。君が心のどこかでわたしを求めている限り、わたしは永遠に君の味方だから」

 そう文字通り、求められる限り、この男が生命の神様の身体を何度循環しようとも永遠に見守っている。

「あなたに救って欲しいんです」

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