奇跡の神様

白木

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第四章 鳥像の門

修復不能1

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人間の神様


 昨日見た生命の神様の姿が頭から離れない。

 修復に苦労しているのは知っていたが、あの生々しい骨と青白い顔は想像以上だった。

 生命の神様に最初に会った時、自分がどんなだったか覚えていない。夢中で見入っていた。というより全身で命の存在を感じた。

 こんなに優しい存在があっていいわけない、なんて、神様らしからぬことを思っていた気がする。それに加えて恐ろしいくらい美しかった。美しい者は見慣れているはずなのに。

 自然の神様たちはわたしなんかと違って、崩しようのない美しさで、誰と会っても見惚れてしまうけれど、その中でも別格だった。

 海の神様がそうなように、圧倒的な美形とは硬質なもの、とぼんやり認識していた寝起きの顔を、思いっきりぶたれたような衝撃だった。わたしは寝ないけれど。凶暴な美しさは優しさに宿るのだと確信した。

「僕に何かついてる?」

 そう言って生命の神様が本気で、自分の顔を触ったり、身体を確認し出した時はこっちがうろたえた。

「……あなたに、見惚れていただけ」

「からかっているの? そんな事言われたことがない。君は人間の神様だね? 求められて出来たのか……こんな事は他の世界では起こらなかった。僕の散らした生命は誰にも助けを求めずに、勝手に悪い結末に向かっていったよ。あの子たちの残酷な終わりを僕に見せないように、月の神様が先に美しく破壊してくれた。でも、今度の世界は希望が持てる。だって君がいるから。自分たち以外の存在に助けを求めるなんて、初めてのことだもの。君は僕の希望だよ」

 神様は無邪気に笑うけれど、わたしは同じ様に笑い返すことが出来なかった。

「そんなに期待されても、わたし何も出来ないよ」

 そんな弱音には答えず、神様は提案した。

「これから生命を放つから、君も見ていってよ。時間はあるかな」

 時間なんていくらでもある。わたしの信者の人間なんて放っておいたっていいんだし。

「見たい」

 それだけ言うわたしに微笑んで、神様は海に向かって歩きだした。

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