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第三章 笑う宝石
もう一つの融合9
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イサリの病気は若い身体で活動的になるらしく、一日、一日、花が枯れるようにイサリの命を吸い取っていった。
若い人間にはかなり珍しい病のせいで、この町の病院では診れる医者がいないという。イサリは毎月、母親と海を渡った少し大きな町へ、その病気を専門にしている医者に会いに行っていた。
その秋、排泄に移動することにすら息を切らすようになったイサリを見かねて、マツリもついて行くと言いだした。俺にとっては願ってもない申し出だった。二人から離れないで済む。
俺が手を出せれば何でも手伝ってやりたい気分だったがそんなわけにはいかない。一度そう漏らしたことがある。
「生まれ変わったらあなたみたいなお兄さんが欲しいな」
イサリにはそう笑われたけれど。
移動した先のその町からも海が見えた。
海の近くの病院で順番を待っている時、マツリが小声でイサリに問う声が聞こえた。
「悪魔はまだ見えるの? 兄さんの病気だけど、もしかしてそいつに憑りつかれたせいじゃ……」
久しぶりにイサリが声を出して笑った。
「なんだよ、本気で心配してるんだぞ」
マツリも珍しく怒った声を出した。
「ごめん、心配してくれてありがとう。でも言っただろ? あの人はそんなんじゃないんだよ」
「人? 悪魔でしょ」
「うん、でもなんていうか、神がかったきれいな顔をして、めちゃくちゃ優しいんだ」
「神って、だから悪魔なんでしょ」
正直、やっぱりマツリに悪い印象を持たれていたことには落ち込んだ。心のどこかで俺を探してくれていると思っていたのに。
「彼は僕の親友で、僕を守ってくれてるんだ。そのうちお前のことも守ってくれるよ。それから――」
イサリが言い淀んで溜息をつく。
「どうしたの?」
「それから、最近何かに追われているような気がするんだ」
「だから、その悪魔にじゃないの」
間髪入れずにマツリが言う。その度に結構傷つくが、今はそれどころではない。イサリが何かに追われているなんて俺も初めて聞いた。
「違うよ、何かこう、お化けみたいなものに見られていると思う時があるんだ。気配を感じて振り返ると、黒い人の形のもやみたいものがふわっとあるんだけど、直ぐに消えてしまう。マツリ、僕、怖いな」
若い人間にはかなり珍しい病のせいで、この町の病院では診れる医者がいないという。イサリは毎月、母親と海を渡った少し大きな町へ、その病気を専門にしている医者に会いに行っていた。
その秋、排泄に移動することにすら息を切らすようになったイサリを見かねて、マツリもついて行くと言いだした。俺にとっては願ってもない申し出だった。二人から離れないで済む。
俺が手を出せれば何でも手伝ってやりたい気分だったがそんなわけにはいかない。一度そう漏らしたことがある。
「生まれ変わったらあなたみたいなお兄さんが欲しいな」
イサリにはそう笑われたけれど。
移動した先のその町からも海が見えた。
海の近くの病院で順番を待っている時、マツリが小声でイサリに問う声が聞こえた。
「悪魔はまだ見えるの? 兄さんの病気だけど、もしかしてそいつに憑りつかれたせいじゃ……」
久しぶりにイサリが声を出して笑った。
「なんだよ、本気で心配してるんだぞ」
マツリも珍しく怒った声を出した。
「ごめん、心配してくれてありがとう。でも言っただろ? あの人はそんなんじゃないんだよ」
「人? 悪魔でしょ」
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「だから、その悪魔にじゃないの」
間髪入れずにマツリが言う。その度に結構傷つくが、今はそれどころではない。イサリが何かに追われているなんて俺も初めて聞いた。
「違うよ、何かこう、お化けみたいなものに見られていると思う時があるんだ。気配を感じて振り返ると、黒い人の形のもやみたいものがふわっとあるんだけど、直ぐに消えてしまう。マツリ、僕、怖いな」
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