奇跡の神様

白木

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第三章 笑う宝石

見捨てられないもの5

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「ごめんね、こんなこと言って。でも、あなたもシロキさんは守りたいでしょ。今、作成者が一番欲しがっているものは何だと思う?」

「作成者が一番欲しいもの……」

「いや、一番と二番と三番かな」

「頭が働かないんだ。わかりやすく言ってくれ」

「想像はつくでしょ。作成者はトリプガイドとガジエアを取り返したい。それからシロキさん、この三つだよ」

 俺は泣顔を見られるのも気にせず顔を上げた。

「どうしてシロキまで。極楽から盗んだわけでもないのに。なんならあいつ自身が極楽に『僕を連れていけ』とか、とち狂ったこと叫んだ時さえ無視されたぞ」

 神様が神様の顔で俺を見る。

「それは、まさか空まで固定されるとは思ってなかったんじゃないの。いつまでもシロキさんとつながっていられる、そう信じてたんだよ。まずは、あなたの中の前提を訂正しておいた方がいいね」

 一呼吸置いた後、聞いた言葉は意外なものだった。

「シロキさんもトリプガイドもガジエアも、作成者のものなんんかじゃない。作成者が人間の世界から奪っだものだよ。わたしはそれを見ていたから確かだ」

「だから……シロキのことも知ってたのか。何があったんだ、いつの話だよ。だったら、作成者がシオンに言っていたシロキが自分の最初の作成物だって話は嘘なのか」

 神様は一瞬眉根を寄せた後、困った顔で頭を横に何度か振った。

 思い出したくないことか。

「わたしは、見ていただけだから。真実を聞くなら、例えば、そう月の神様がいいよ」

「月の神様なんてそう簡単に合えないだろ。不自然な神様たちは、黙っていてもシロキのところに魂を渡しに集まって来てくれるけど太古の神様は気まぐれだし――」

「まあ、その話は追々。それより、あなたがシロキさんに不用意に会わない方が良い理由だよ。君、破壊しきれていない、中途半端な状態の自殺者の魂を極楽に奪われたでしょ。あの子たちが、苦しいって感覚だけが残った幽霊になったことは知っているかな? 昨日からあいつらの気配を感じるんだ。作成者はどんな根暗な人間が見ても『これよりましだ』と安心するほどの引きこもりでしょ。だから怖くて外の世界には出られずに、宝物の回収を幽霊に命じたの。そういうところがイライラするんだよね、そんなに大事な宝物なら自分で取り返しに来いっていうんだよ」

 いつも飄々としている神様が苦々し気に吐き捨てた。

 シロキもそんなことを言っていた。あの時の魂はやっぱり幽霊になってしまったんだ……一体どれだけの数だったろう。

 苦しい感覚だけが残っているって、作成者はその感覚を取り除くことはできなかったのか? どうしよう。いや、どうしようじゃない。あいつらを全部消してやらないと。終わらせてやらないといけない。

 また人間の世界にとどまる理由が増えた。

「――じゃあ尚更俺はシロキを守らないと。あいつが連れて行かれてしまう」

「ただ連れて行かれるだけならシロキさんだって抵抗するでしょ。神様が幽霊に負けるはずないよ。それより心配しているのは幽霊がシロキさんを解体して持って行くことだよ」

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