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第三章 笑う宝石
記憶のない鳥1
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ナイト
窓から漏れる外灯が、幻想的な雪の影を作っている。
雪の音だけが響く室内はとても静かだ。
「なあ、今の話の中で作成者が造ってた炎の悪魔ってお前のことだよな」
隣でカドの声がして、心に火が灯ったような温かい感覚がした。
「わからない。全然覚えていないんだ。作成者と話なんかしただろうか。でもあの質問は、今聞かれても答えは同じだな。感情を奪って苦しみから救ってやると言われてもな……それ、救われたことにはならないだろ」
やっと表情が読み取れる距離に座っているナイトが目を伏せる。長いまつ毛の間から見える悲し気な色。こいつ、神様の要素もあるって言っていたな。だから他の悪魔と違って色気があるのか。下を向いたまま俺に向かって呟いた。
「お前はそんなんだから、シロキに妬まれるんだよ。真っ直ぐで強い。本当にかっこいいな」
ちょっと恥ずかしくなる。アドバンドならかっこいいと言われても納得だが、未熟な自分が同じ悪魔に言われるのはむず痒い。
「何言ってるんだ。かっこいいは知らないが、真っ直ぐなのは当たり前だろ。自分を殺した人間だって本当は……」
ナイトが温度を感じない優しい目で俺を見る。
「あいつらの願いは二つ、『消えたい』と『感情を無くしたい』なんだよ」
自分の経験だけで、安易なことを言いかけたことを後悔した。俺の知る怒りを孕んだ魂たちとこいつの知る魂たちは色が違うんだ。
――本当は死にたい、より受け止めて欲しいと願ってたんじゃないのか? そんなこと言わなくて良かった。
「辛いことを確認させるような真似をして悪かった」
「いいよ、お前正直だな。さすがカドの友だちだ」
カドが隣で誇らしげに微笑むので余計いたたまれなくなる。
「俺が紫の魂の願いを半分叶えていた、作成者はそう言っていたけれど、本当だ。俺は魂をバラバラにすることで『消えたい』という願いは叶えていた。ただ、俺もシロキも勘違いしていたことがあった。シアンから話を聞くまで、バラバラにされた魂がトリプガイドと混じる映像が記憶にあったせいで、勝手にトリプガイドの栄養にされていると思い込んでいた。実際は、あいつ、トリプガイドを注いていたんだ。魂の欠片に。そして記憶のない鳥を造って鳥像の門の手前から空に放っていた。人間の世界から身体も魂も消して、感情を失くして苦しみに怯えることなく、ただ、自由に空を飛びまわることがあいつらの願いだったから。そのために自分を殺したと言ってもいい」
――せめて怒りを持っていてくれたなら、そう思った。その悲しい魂たちが、もっと怒って、憤怒のあまりに罪を犯してくれたなら俺が救ってやれたのに。俺は怒りになんか負けない。
窓から漏れる外灯が、幻想的な雪の影を作っている。
雪の音だけが響く室内はとても静かだ。
「なあ、今の話の中で作成者が造ってた炎の悪魔ってお前のことだよな」
隣でカドの声がして、心に火が灯ったような温かい感覚がした。
「わからない。全然覚えていないんだ。作成者と話なんかしただろうか。でもあの質問は、今聞かれても答えは同じだな。感情を奪って苦しみから救ってやると言われてもな……それ、救われたことにはならないだろ」
やっと表情が読み取れる距離に座っているナイトが目を伏せる。長いまつ毛の間から見える悲し気な色。こいつ、神様の要素もあるって言っていたな。だから他の悪魔と違って色気があるのか。下を向いたまま俺に向かって呟いた。
「お前はそんなんだから、シロキに妬まれるんだよ。真っ直ぐで強い。本当にかっこいいな」
ちょっと恥ずかしくなる。アドバンドならかっこいいと言われても納得だが、未熟な自分が同じ悪魔に言われるのはむず痒い。
「何言ってるんだ。かっこいいは知らないが、真っ直ぐなのは当たり前だろ。自分を殺した人間だって本当は……」
ナイトが温度を感じない優しい目で俺を見る。
「あいつらの願いは二つ、『消えたい』と『感情を無くしたい』なんだよ」
自分の経験だけで、安易なことを言いかけたことを後悔した。俺の知る怒りを孕んだ魂たちとこいつの知る魂たちは色が違うんだ。
――本当は死にたい、より受け止めて欲しいと願ってたんじゃないのか? そんなこと言わなくて良かった。
「辛いことを確認させるような真似をして悪かった」
「いいよ、お前正直だな。さすがカドの友だちだ」
カドが隣で誇らしげに微笑むので余計いたたまれなくなる。
「俺が紫の魂の願いを半分叶えていた、作成者はそう言っていたけれど、本当だ。俺は魂をバラバラにすることで『消えたい』という願いは叶えていた。ただ、俺もシロキも勘違いしていたことがあった。シアンから話を聞くまで、バラバラにされた魂がトリプガイドと混じる映像が記憶にあったせいで、勝手にトリプガイドの栄養にされていると思い込んでいた。実際は、あいつ、トリプガイドを注いていたんだ。魂の欠片に。そして記憶のない鳥を造って鳥像の門の手前から空に放っていた。人間の世界から身体も魂も消して、感情を失くして苦しみに怯えることなく、ただ、自由に空を飛びまわることがあいつらの願いだったから。そのために自分を殺したと言ってもいい」
――せめて怒りを持っていてくれたなら、そう思った。その悲しい魂たちが、もっと怒って、憤怒のあまりに罪を犯してくれたなら俺が救ってやれたのに。俺は怒りになんか負けない。
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