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第三章 笑う宝石
作り手の笑い3
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ばれていたのか、伊達に極楽で世界を造っているわけじゃない。これまで心の中であれだけ罵ったんだ。傷つけてしまったに違いない。
「ごめんな、お前のこと嫌いじゃないんだよ。ただ、変人なのは本当だ。仕方ないさ、ずっとここに一人でいるんだから。俺がもっと世界のことを教えてやるよ」
「世界の仕組みを作っているわたしがお前に教えてもらう、なんておかしいな。でも、嬉しい。世界はわたしの祈りなんて忘れて、勝手に変わっていってしまうから。もうわたしの知らないことで溢れかえっているんだろうな」
あまりに可哀想で、気持ち悪くて触れたくないけれど――そのせいで片手しか出なかったけれど、左手を作成者の頭に伸ばし、撫でてやった。意外とさらりとした清潔な髪でほっとする。
「なあ、お前わたしが不潔だと思っていただろ。長い間、髪も洗ってないんだろうな、とか。神様も悪魔も、もちろんわたしも実態が汚れたりすることはないから安心しろ。でも嬉しいよ。それで、遠回りになったけれど、ナイトの役割は他の地獄の悪魔と違って、浄化だけではないんだよ。浄化して、願いも叶えてやらないといけない。だから鏡の悪魔になるものは、白色金の魂を持ってるいる者でしか造れない。見た目にはお前のような透明がかった金色のことだよ。簡単に言うと神様の要素を持った悪魔だ」
「期待させといて悪いけど、それ尚更俺じゃねえわ。かわいそうだけど、お前、もうしばらく適当なやつが来るまで待てよ。俺なら死ぬ度に、ここに遊びに来てお前の話し相手になってやるから」
「造ってるわたしが言うんだぞ」
「大体造る、造るってどうやってるんだ」
さっきから気になっていたことを聞いてみる。バラバラにされたり、溶かされたりしたらたまらない。
「魂に一度わたしの記憶の全てを入れて、身体を砕いて溶かしてからまとめ直す。シロキやカドやナイトを見ただろ? わたし自身は表情もなくて、お前でいうモテないやつかも知れないが、作成物は美しいものばかりだ。安心して任せろ」
思った通りじゃねえか。冗談じゃねえ。
「わからないと怖いよな。でも仕方ないんだ。壊れることのない実態を造って、欲を抜いて、感情と知性だけ残す。結構繊細な作業なんだ。だが何度も言うようだけど、わたしは上手いから心配ない」
「欲を抜く? ああ、それが苦しみの元凶だからとかそういう理由か」
作成者が深い溜息をついた。
「わたしもそう思っていた時期があった。わたしの造った神様や悪魔は肉欲とか物欲とか基本的なものはもちろん、流行りの自己顕示欲とか承認欲求というのか? そういう類のものからは一切開放されている。美しい感情だけを残したつもりだ。それでもなお、神様も悪魔も苦しんでいるんだ。欲は罪の元凶だが苦しみの元凶は感情だ。その醜い、美しいに関わらず。わたしはそう信じている。これは一番新しいわたしの作成物の話なんだけど。この間ね、炎の悪魔を完成させたんだ。そいつは人間の時から格好良くてね、魂も崩しようのない丈夫な金色でとても気に入ったんだ。炎の地獄へ送られる魂の罪は怒りだから、そんな激しい怒りを受け止められる強い魂は炎の悪魔に向いているんだ。とにかくその子に聞いてみた。『この先、お前が苦しまなくて済むように、感情も多めに抜いてあげようか』って」
「ごめんな、お前のこと嫌いじゃないんだよ。ただ、変人なのは本当だ。仕方ないさ、ずっとここに一人でいるんだから。俺がもっと世界のことを教えてやるよ」
「世界の仕組みを作っているわたしがお前に教えてもらう、なんておかしいな。でも、嬉しい。世界はわたしの祈りなんて忘れて、勝手に変わっていってしまうから。もうわたしの知らないことで溢れかえっているんだろうな」
あまりに可哀想で、気持ち悪くて触れたくないけれど――そのせいで片手しか出なかったけれど、左手を作成者の頭に伸ばし、撫でてやった。意外とさらりとした清潔な髪でほっとする。
「なあ、お前わたしが不潔だと思っていただろ。長い間、髪も洗ってないんだろうな、とか。神様も悪魔も、もちろんわたしも実態が汚れたりすることはないから安心しろ。でも嬉しいよ。それで、遠回りになったけれど、ナイトの役割は他の地獄の悪魔と違って、浄化だけではないんだよ。浄化して、願いも叶えてやらないといけない。だから鏡の悪魔になるものは、白色金の魂を持ってるいる者でしか造れない。見た目にはお前のような透明がかった金色のことだよ。簡単に言うと神様の要素を持った悪魔だ」
「期待させといて悪いけど、それ尚更俺じゃねえわ。かわいそうだけど、お前、もうしばらく適当なやつが来るまで待てよ。俺なら死ぬ度に、ここに遊びに来てお前の話し相手になってやるから」
「造ってるわたしが言うんだぞ」
「大体造る、造るってどうやってるんだ」
さっきから気になっていたことを聞いてみる。バラバラにされたり、溶かされたりしたらたまらない。
「魂に一度わたしの記憶の全てを入れて、身体を砕いて溶かしてからまとめ直す。シロキやカドやナイトを見ただろ? わたし自身は表情もなくて、お前でいうモテないやつかも知れないが、作成物は美しいものばかりだ。安心して任せろ」
思った通りじゃねえか。冗談じゃねえ。
「わからないと怖いよな。でも仕方ないんだ。壊れることのない実態を造って、欲を抜いて、感情と知性だけ残す。結構繊細な作業なんだ。だが何度も言うようだけど、わたしは上手いから心配ない」
「欲を抜く? ああ、それが苦しみの元凶だからとかそういう理由か」
作成者が深い溜息をついた。
「わたしもそう思っていた時期があった。わたしの造った神様や悪魔は肉欲とか物欲とか基本的なものはもちろん、流行りの自己顕示欲とか承認欲求というのか? そういう類のものからは一切開放されている。美しい感情だけを残したつもりだ。それでもなお、神様も悪魔も苦しんでいるんだ。欲は罪の元凶だが苦しみの元凶は感情だ。その醜い、美しいに関わらず。わたしはそう信じている。これは一番新しいわたしの作成物の話なんだけど。この間ね、炎の悪魔を完成させたんだ。そいつは人間の時から格好良くてね、魂も崩しようのない丈夫な金色でとても気に入ったんだ。炎の地獄へ送られる魂の罪は怒りだから、そんな激しい怒りを受け止められる強い魂は炎の悪魔に向いているんだ。とにかくその子に聞いてみた。『この先、お前が苦しまなくて済むように、感情も多めに抜いてあげようか』って」
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