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第三章 笑う宝石
作り手の笑い1
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シアン
頭上の巨大な鳥に追いかけられるように白い空間をただただ進んだ。実際には動いているのは俺たちの方だが、空に浮かぶ月に追いかけられているような、あの感覚だった。
「この下が鏡の地獄。向こうからしたら空だけれど」
これからお前が住むところ、と続けそうな様子で俺をまた、人工的な物体の前に誘導した。
「今度は池じゃないんだな」
丸い器をひっくり返して置いたような半円の巨大な赤い物体が、目の前にあった。
触れると表面はつるつるしていて、水族館の水槽を思い出した。
「これ、なんだ? 中の赤いの動いているみたいだ。心臓か?」
中の液体の色合いと、脈打つように動いている様子から生々しいものを想像すると同時に、あまりに完璧な球状と、あまりにきれいな赤で人工物のようにも見える。
「わたしにこんな大きな心臓は造れないよ。神様や悪魔のはわたしが造っているけど」
自分の器用さを自慢しているような言い方をする。 その時初めて作成者の指先をまじまじと見た。
美しい指だ。繊細で羽のように柔らかく動く。こんな指で神様や悪魔を造っているんだな。気持ち悪いと思っていた作成者が初めて艶っぽく見えた。
「地獄から見たら心臓というよりむしろ赤い星のように映っているかも知れないな。さあ、覗いて見てごらん。わたしの最初に造った地獄だ」
「ああ……」
こんな所から覗いても全て真っ赤に見えるだけじゃないのか? そう思って顔と両手を水槽の曲線に当てた。
「どう?」
後ろから作成者の声がする。後ろ? 本当に後ろなのか? 前後左右が反転して行く気分だ。覗いた先の赤が溶けて、そのさらに先に見たことがないほど白い冬が広がった。今立っている極楽――真っ白な空間と区別がつかなくなる。心まで反転し続けて眩暈がする。
頭上の巨大な鳥に追いかけられるように白い空間をただただ進んだ。実際には動いているのは俺たちの方だが、空に浮かぶ月に追いかけられているような、あの感覚だった。
「この下が鏡の地獄。向こうからしたら空だけれど」
これからお前が住むところ、と続けそうな様子で俺をまた、人工的な物体の前に誘導した。
「今度は池じゃないんだな」
丸い器をひっくり返して置いたような半円の巨大な赤い物体が、目の前にあった。
触れると表面はつるつるしていて、水族館の水槽を思い出した。
「これ、なんだ? 中の赤いの動いているみたいだ。心臓か?」
中の液体の色合いと、脈打つように動いている様子から生々しいものを想像すると同時に、あまりに完璧な球状と、あまりにきれいな赤で人工物のようにも見える。
「わたしにこんな大きな心臓は造れないよ。神様や悪魔のはわたしが造っているけど」
自分の器用さを自慢しているような言い方をする。 その時初めて作成者の指先をまじまじと見た。
美しい指だ。繊細で羽のように柔らかく動く。こんな指で神様や悪魔を造っているんだな。気持ち悪いと思っていた作成者が初めて艶っぽく見えた。
「地獄から見たら心臓というよりむしろ赤い星のように映っているかも知れないな。さあ、覗いて見てごらん。わたしの最初に造った地獄だ」
「ああ……」
こんな所から覗いても全て真っ赤に見えるだけじゃないのか? そう思って顔と両手を水槽の曲線に当てた。
「どう?」
後ろから作成者の声がする。後ろ? 本当に後ろなのか? 前後左右が反転して行く気分だ。覗いた先の赤が溶けて、そのさらに先に見たことがないほど白い冬が広がった。今立っている極楽――真っ白な空間と区別がつかなくなる。心まで反転し続けて眩暈がする。
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