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第三章 笑う宝石
笑う宝石1
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ナイト
さっきはこいつが余りにも熱っぽい目でシロキを見ていて恐怖すら感じた。
偽物みたいに整った顔が、かえって圧を強調していた。あれを受け流しているシロキの鈍さもひどい。
「どうかしたか?」
シスが青にも緑にも見える不思議な目を俺に向けた。海みたく光を受けて色が変わる。
「夏が珍しくて」
それも本音だった。
「ああ、鏡の地獄は冬の世界だったものな。白銀の世界は神様の魂の中にいるみたいで美しいだろうな。でもたまには夏も良いだろ? 人間の魂みたいに気まぐれに燃えていて」
「そうだな、とても興味深いよ。カドがしょっちゅう来ていたのもわかる」
俺はきょろきょろしながら頷いた。まず色の豊富さが俺の地獄と比べものにならない。
「短い時間だが楽しんでくれ。それに、カドが落ち着いたらいつでも自由に来てくれよ」
そう言った小さな海のような目に涙が溜まっている。もうカドを連れて歩けないのが悲しいのだろうな、と察した。言葉にしたいのを堪えている。
「お前、変わってるよな、面白い」
見た目は氷るほどの美しさなのに、中身は夏のような熱が疼いている。その差が疲れるが楽しい、と好ましく思った。
「――シロキさんもそう言ってくれた」
「あいつは嘘がつけないから、お前、本当に面白いんだよ」
「お前は神様が――シロキさんがいつもそばに居ていいな。信じているだけで幸せの方からやってくるものな」
俺はふと立ち止まる。
「シロキも似たようなことを言うよ。人間に対してだけど。『いつも僕が目の前にいても見てくれない、信じてくれない。願いは叶うのに』って。あいつのは殆んど愚痴だけど」
「シロキさんが目の前にいるのに見ない振りなんて出来るのか。人間はすごいな」
「見えていても信じられないんだろ。それよりお前の後ろの花、きれいだな」
シスの後ろに花弁が何重にもなった濃い紫色の花の群れが広がっていた。
「ああ、これはな――」
シスが楽しいそうに花の説明を始めた。整った顔をほころばせて話す。カドが懐くわけだ。
さっきはこいつが余りにも熱っぽい目でシロキを見ていて恐怖すら感じた。
偽物みたいに整った顔が、かえって圧を強調していた。あれを受け流しているシロキの鈍さもひどい。
「どうかしたか?」
シスが青にも緑にも見える不思議な目を俺に向けた。海みたく光を受けて色が変わる。
「夏が珍しくて」
それも本音だった。
「ああ、鏡の地獄は冬の世界だったものな。白銀の世界は神様の魂の中にいるみたいで美しいだろうな。でもたまには夏も良いだろ? 人間の魂みたいに気まぐれに燃えていて」
「そうだな、とても興味深いよ。カドがしょっちゅう来ていたのもわかる」
俺はきょろきょろしながら頷いた。まず色の豊富さが俺の地獄と比べものにならない。
「短い時間だが楽しんでくれ。それに、カドが落ち着いたらいつでも自由に来てくれよ」
そう言った小さな海のような目に涙が溜まっている。もうカドを連れて歩けないのが悲しいのだろうな、と察した。言葉にしたいのを堪えている。
「お前、変わってるよな、面白い」
見た目は氷るほどの美しさなのに、中身は夏のような熱が疼いている。その差が疲れるが楽しい、と好ましく思った。
「――シロキさんもそう言ってくれた」
「あいつは嘘がつけないから、お前、本当に面白いんだよ」
「お前は神様が――シロキさんがいつもそばに居ていいな。信じているだけで幸せの方からやってくるものな」
俺はふと立ち止まる。
「シロキも似たようなことを言うよ。人間に対してだけど。『いつも僕が目の前にいても見てくれない、信じてくれない。願いは叶うのに』って。あいつのは殆んど愚痴だけど」
「シロキさんが目の前にいるのに見ない振りなんて出来るのか。人間はすごいな」
「見えていても信じられないんだろ。それよりお前の後ろの花、きれいだな」
シスの後ろに花弁が何重にもなった濃い紫色の花の群れが広がっていた。
「ああ、これはな――」
シスが楽しいそうに花の説明を始めた。整った顔をほころばせて話す。カドが懐くわけだ。
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