133 / 331
第二章 鏡の地獄
人間の神様へ3
しおりを挟む
他の神様も悪魔にも出来ないこと、記憶だけではなく、相手の心の中全てをを映すことが、鏡の属性の神様と悪魔には出来る。カドもシロキさんほどではなくても可能だろう。
不用意に能力を使わないようにしているのは本当の心など映してみても、知らなければ良かったことばかりだからかだろうか、疑うような真似をしたくないからなのだろうか。ぼんやり考えている俺をよそにカドが明るく答える。
「ちょっと質問をされたんだよ。上手く言葉にして答えられなかったから、俺から言ったんだ『心を映してみれば』って」
「ああ、シロキさんの記憶にありましたね、あの時の質問は……」
「ええっと、あれはね『僕とナイトとどっちがきれい?』だったね」
ナイトが深い溜息をついた。言うほど冷たい目じゃないと思っていたのに、今はびっくりするほど冷ややかだ。
「何だ、その質問」
吐き捨てるように言った。
シロキさんがここにいなくて良かった。小声で「バカバカしい」とまで言っている。
「お前、そういう時はさらっと『シロキさんの方がきれいだ』って答えてやれよ。わかりやすく、照れて喜ぶんだから。真面目に考えるな、あいつの質問なんて」
「そりゃそうだけど……ああ、言わなきゃ良かった。こんな扱い受けてるって知ったらシロキさん、あのガラス玉から永遠に出て来ないよ」
「面倒くさい性格だよな。大体どんな状況で神様がそんな人間みたいな質問をしてくるんだよ」
カドが申し訳なさそうな顔で言う。
「ナイトに会いたいかって聞かれて、会いたいと答えた時」
ナイトが黙ってしまった代わりに、ルキルくんの笑い声が氷った空気に響いた。
「シロキさんって本当にかわいいな。僕、もう会いたくて仕方ないです」
ああ、ちょっと神様たちについて行けない。未だにシロキさんの質問の意図も良くわからないし、どこにかわいい要素があるのかもわからない。
きょとんとしているファミドや、話題にしたことを後悔しているカドとは分かり合えそうな気がするが。
「俺には、シロキさんがその時に見た景色の方がまだわかりそうだけれどな」
全員が俺を見た。何だ?
「いや、カドの心の中を見たんだろ? シロキさんの質問への答えは想像がつくって意味だが」
「エンド、本気で言ってるの?」
カドが訝し気な顔をする。
「ああ、わかりやすい答えだろ。消したかった記憶っていうのもそのことだよな? シロキさんは神様にとって罪だとでも思って悩んでいたのかな。そんなことないだろう。俺はうらやましい、だってただ――」
「だめだよ、エンド。言わないであげて」
「ああ、ごめん」
俺は腑に落ちないながら黙った。こいつら本当に気がつかなかいんだろうか。
それとも俺が若い悪魔なのが関係しているんだろうか。俺にはまだ人間だったの時の癖が残っているのかも知れない。
不用意に能力を使わないようにしているのは本当の心など映してみても、知らなければ良かったことばかりだからかだろうか、疑うような真似をしたくないからなのだろうか。ぼんやり考えている俺をよそにカドが明るく答える。
「ちょっと質問をされたんだよ。上手く言葉にして答えられなかったから、俺から言ったんだ『心を映してみれば』って」
「ああ、シロキさんの記憶にありましたね、あの時の質問は……」
「ええっと、あれはね『僕とナイトとどっちがきれい?』だったね」
ナイトが深い溜息をついた。言うほど冷たい目じゃないと思っていたのに、今はびっくりするほど冷ややかだ。
「何だ、その質問」
吐き捨てるように言った。
シロキさんがここにいなくて良かった。小声で「バカバカしい」とまで言っている。
「お前、そういう時はさらっと『シロキさんの方がきれいだ』って答えてやれよ。わかりやすく、照れて喜ぶんだから。真面目に考えるな、あいつの質問なんて」
「そりゃそうだけど……ああ、言わなきゃ良かった。こんな扱い受けてるって知ったらシロキさん、あのガラス玉から永遠に出て来ないよ」
「面倒くさい性格だよな。大体どんな状況で神様がそんな人間みたいな質問をしてくるんだよ」
カドが申し訳なさそうな顔で言う。
「ナイトに会いたいかって聞かれて、会いたいと答えた時」
ナイトが黙ってしまった代わりに、ルキルくんの笑い声が氷った空気に響いた。
「シロキさんって本当にかわいいな。僕、もう会いたくて仕方ないです」
ああ、ちょっと神様たちについて行けない。未だにシロキさんの質問の意図も良くわからないし、どこにかわいい要素があるのかもわからない。
きょとんとしているファミドや、話題にしたことを後悔しているカドとは分かり合えそうな気がするが。
「俺には、シロキさんがその時に見た景色の方がまだわかりそうだけれどな」
全員が俺を見た。何だ?
「いや、カドの心の中を見たんだろ? シロキさんの質問への答えは想像がつくって意味だが」
「エンド、本気で言ってるの?」
カドが訝し気な顔をする。
「ああ、わかりやすい答えだろ。消したかった記憶っていうのもそのことだよな? シロキさんは神様にとって罪だとでも思って悩んでいたのかな。そんなことないだろう。俺はうらやましい、だってただ――」
「だめだよ、エンド。言わないであげて」
「ああ、ごめん」
俺は腑に落ちないながら黙った。こいつら本当に気がつかなかいんだろうか。
それとも俺が若い悪魔なのが関係しているんだろうか。俺にはまだ人間だったの時の癖が残っているのかも知れない。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
アタエバネ ~恵力学園一年五組の異能者達~
弧川ふき
ファンタジー
優秀な者が多い「恵力学園」に入学するため猛勉強した「形快晴己(かたがいはるき)」の手首の外側に、突如として、数字のように見える字が刻まれた羽根のマークが現れた。
それを隠して過ごす中、学内掲示板に『一年五組の全員は、4月27日の放課後、化学室へ』という張り紙を発見。
そこに行くと、五組の全員と、その担任の姿が。
「あなた達は天の使いによってたまたま選ばれた。強引だとは思うが協力してほしい」
そして差し出されたのは、一枚の紙。その名も、『を』の紙。
彼らの生活は一変する。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる