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第二章 鏡の地獄
人間の神様へ3
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他の神様も悪魔にも出来ないこと、記憶だけではなく、相手の心の中全てをを映すことが、鏡の属性の神様と悪魔には出来る。カドもシロキさんほどではなくても可能だろう。
不用意に能力を使わないようにしているのは本当の心など映してみても、知らなければ良かったことばかりだからかだろうか、疑うような真似をしたくないからなのだろうか。ぼんやり考えている俺をよそにカドが明るく答える。
「ちょっと質問をされたんだよ。上手く言葉にして答えられなかったから、俺から言ったんだ『心を映してみれば』って」
「ああ、シロキさんの記憶にありましたね、あの時の質問は……」
「ええっと、あれはね『僕とナイトとどっちがきれい?』だったね」
ナイトが深い溜息をついた。言うほど冷たい目じゃないと思っていたのに、今はびっくりするほど冷ややかだ。
「何だ、その質問」
吐き捨てるように言った。
シロキさんがここにいなくて良かった。小声で「バカバカしい」とまで言っている。
「お前、そういう時はさらっと『シロキさんの方がきれいだ』って答えてやれよ。わかりやすく、照れて喜ぶんだから。真面目に考えるな、あいつの質問なんて」
「そりゃそうだけど……ああ、言わなきゃ良かった。こんな扱い受けてるって知ったらシロキさん、あのガラス玉から永遠に出て来ないよ」
「面倒くさい性格だよな。大体どんな状況で神様がそんな人間みたいな質問をしてくるんだよ」
カドが申し訳なさそうな顔で言う。
「ナイトに会いたいかって聞かれて、会いたいと答えた時」
ナイトが黙ってしまった代わりに、ルキルくんの笑い声が氷った空気に響いた。
「シロキさんって本当にかわいいな。僕、もう会いたくて仕方ないです」
ああ、ちょっと神様たちについて行けない。未だにシロキさんの質問の意図も良くわからないし、どこにかわいい要素があるのかもわからない。
きょとんとしているファミドや、話題にしたことを後悔しているカドとは分かり合えそうな気がするが。
「俺には、シロキさんがその時に見た景色の方がまだわかりそうだけれどな」
全員が俺を見た。何だ?
「いや、カドの心の中を見たんだろ? シロキさんの質問への答えは想像がつくって意味だが」
「エンド、本気で言ってるの?」
カドが訝し気な顔をする。
「ああ、わかりやすい答えだろ。消したかった記憶っていうのもそのことだよな? シロキさんは神様にとって罪だとでも思って悩んでいたのかな。そんなことないだろう。俺はうらやましい、だってただ――」
「だめだよ、エンド。言わないであげて」
「ああ、ごめん」
俺は腑に落ちないながら黙った。こいつら本当に気がつかなかいんだろうか。
それとも俺が若い悪魔なのが関係しているんだろうか。俺にはまだ人間だったの時の癖が残っているのかも知れない。
不用意に能力を使わないようにしているのは本当の心など映してみても、知らなければ良かったことばかりだからかだろうか、疑うような真似をしたくないからなのだろうか。ぼんやり考えている俺をよそにカドが明るく答える。
「ちょっと質問をされたんだよ。上手く言葉にして答えられなかったから、俺から言ったんだ『心を映してみれば』って」
「ああ、シロキさんの記憶にありましたね、あの時の質問は……」
「ええっと、あれはね『僕とナイトとどっちがきれい?』だったね」
ナイトが深い溜息をついた。言うほど冷たい目じゃないと思っていたのに、今はびっくりするほど冷ややかだ。
「何だ、その質問」
吐き捨てるように言った。
シロキさんがここにいなくて良かった。小声で「バカバカしい」とまで言っている。
「お前、そういう時はさらっと『シロキさんの方がきれいだ』って答えてやれよ。わかりやすく、照れて喜ぶんだから。真面目に考えるな、あいつの質問なんて」
「そりゃそうだけど……ああ、言わなきゃ良かった。こんな扱い受けてるって知ったらシロキさん、あのガラス玉から永遠に出て来ないよ」
「面倒くさい性格だよな。大体どんな状況で神様がそんな人間みたいな質問をしてくるんだよ」
カドが申し訳なさそうな顔で言う。
「ナイトに会いたいかって聞かれて、会いたいと答えた時」
ナイトが黙ってしまった代わりに、ルキルくんの笑い声が氷った空気に響いた。
「シロキさんって本当にかわいいな。僕、もう会いたくて仕方ないです」
ああ、ちょっと神様たちについて行けない。未だにシロキさんの質問の意図も良くわからないし、どこにかわいい要素があるのかもわからない。
きょとんとしているファミドや、話題にしたことを後悔しているカドとは分かり合えそうな気がするが。
「俺には、シロキさんがその時に見た景色の方がまだわかりそうだけれどな」
全員が俺を見た。何だ?
「いや、カドの心の中を見たんだろ? シロキさんの質問への答えは想像がつくって意味だが」
「エンド、本気で言ってるの?」
カドが訝し気な顔をする。
「ああ、わかりやすい答えだろ。消したかった記憶っていうのもそのことだよな? シロキさんは神様にとって罪だとでも思って悩んでいたのかな。そんなことないだろう。俺はうらやましい、だってただ――」
「だめだよ、エンド。言わないであげて」
「ああ、ごめん」
俺は腑に落ちないながら黙った。こいつら本当に気がつかなかいんだろうか。
それとも俺が若い悪魔なのが関係しているんだろうか。俺にはまだ人間だったの時の癖が残っているのかも知れない。
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