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第二章 鏡の地獄
地獄の終わり10
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少し前に、青いトリプガイドに包まれている僕の魂がほんの微かに揺れる程度の圧を上空から感じた。その振動で我に返る。
アドバンドが悲しい目で僕をじっと見ていた。
「あ、ごめん。僕の思い出話に付き合わせてしまって。長い時間引き留めてしまった。炎の地獄だって忙しいよね」
「炎の地獄には悪魔が大勢いるのは知っているだろ。俺が少しの間いなくたって何も変わりないことも。シロキさんの魂を見ていられるならいくらだってここにいたい」
僕の魂はそんなに特別なんだろうか。アドバンドのような格好いい悪魔にそんなことを言われるとむず痒い。昔から僕に優しいし。カドが夢中なあの悪魔、エンドフォスも今に余裕まで身に付けて、アドバンドみたいになる。
カドがますます心を奪われないか心配だ――。
「シロキさん、どうした? 極楽の門を閉じた後のことでも思い出していたのか?」
「やっぱり、いくらアドバンドでも引くだろ。僕の自分勝手さに。鏡の地獄を壊したのは実質、僕だよ。良く僕を嫌いにならないね」
皮肉を込めたつもりなのに、アドバンドはやっぱり悲しい顔で僕を見つめて言う。
「どうしてあの後、カドの記憶を消したんだろうと思ったことはあるけれど、それも構わないさ。シロキさんが正しいとか間違っているとか興味はない。こんなにきれいな魂なんだから、馬鹿なことをしているように見える時も、正しい場所に辿りつくまでに必要な過程だと信じてる」
人間もこんな強さで僕のことを信じてくれたらいいのに。
「記憶を消したのは、カドに辛いことを思い出させたくない、とかそんな理由じゃないんだ。僕が忘れて欲しいから奪った、それだけなんだ。最低だろ。あの子が僕に身体を返したら、そのことも打ち明けようと思ってる。僕のこと大嫌いだと言って欲しい。いや言葉にしないで軽蔑した態度をとられたらもっと辛いからそうして欲しい。極楽にとっての罰が僕から見放されることだったように、僕にとっての罰はあの子から拒絶されることだから」
「カドがシロキさんを嫌いになるなんてあり得ない。何があってもだ。それにあいつ、もう知っているんじゃないか。昔からシロキさんの気持ちはお見通しじゃないか」
そうだろうな。僕はまたあの時のことを思い出す。僕とナイト、どっちがきれいか、なんてくだらないことをを聞いてしまった時だ。
カドは僕に心を映させてくれた。
あの時、僕が記憶を消してまで忘れて欲しかったことを、あの子はまた僕の心の中に見つけていた。ただ、恐れていたのと違い、カドは僕のことを軽蔑していなかったし、汚れた神様とも思っていなかった。むしろ喜んでいた。楽しんでいた。
だから僕は心底安心して、満ち足りた気分になったんだ。
「そうだね、あの子は僕より僕の事を知っているものね。そしてこんな僕をずっと好きでいてくれるんだ。ねえアドバンド、全てを知っても変らず優しい存在を僕は持っている。信じられないほど幸せだ。そして同時にもの凄く辛い」
アドバンドが悲しい目で僕をじっと見ていた。
「あ、ごめん。僕の思い出話に付き合わせてしまって。長い時間引き留めてしまった。炎の地獄だって忙しいよね」
「炎の地獄には悪魔が大勢いるのは知っているだろ。俺が少しの間いなくたって何も変わりないことも。シロキさんの魂を見ていられるならいくらだってここにいたい」
僕の魂はそんなに特別なんだろうか。アドバンドのような格好いい悪魔にそんなことを言われるとむず痒い。昔から僕に優しいし。カドが夢中なあの悪魔、エンドフォスも今に余裕まで身に付けて、アドバンドみたいになる。
カドがますます心を奪われないか心配だ――。
「シロキさん、どうした? 極楽の門を閉じた後のことでも思い出していたのか?」
「やっぱり、いくらアドバンドでも引くだろ。僕の自分勝手さに。鏡の地獄を壊したのは実質、僕だよ。良く僕を嫌いにならないね」
皮肉を込めたつもりなのに、アドバンドはやっぱり悲しい顔で僕を見つめて言う。
「どうしてあの後、カドの記憶を消したんだろうと思ったことはあるけれど、それも構わないさ。シロキさんが正しいとか間違っているとか興味はない。こんなにきれいな魂なんだから、馬鹿なことをしているように見える時も、正しい場所に辿りつくまでに必要な過程だと信じてる」
人間もこんな強さで僕のことを信じてくれたらいいのに。
「記憶を消したのは、カドに辛いことを思い出させたくない、とかそんな理由じゃないんだ。僕が忘れて欲しいから奪った、それだけなんだ。最低だろ。あの子が僕に身体を返したら、そのことも打ち明けようと思ってる。僕のこと大嫌いだと言って欲しい。いや言葉にしないで軽蔑した態度をとられたらもっと辛いからそうして欲しい。極楽にとっての罰が僕から見放されることだったように、僕にとっての罰はあの子から拒絶されることだから」
「カドがシロキさんを嫌いになるなんてあり得ない。何があってもだ。それにあいつ、もう知っているんじゃないか。昔からシロキさんの気持ちはお見通しじゃないか」
そうだろうな。僕はまたあの時のことを思い出す。僕とナイト、どっちがきれいか、なんてくだらないことをを聞いてしまった時だ。
カドは僕に心を映させてくれた。
あの時、僕が記憶を消してまで忘れて欲しかったことを、あの子はまた僕の心の中に見つけていた。ただ、恐れていたのと違い、カドは僕のことを軽蔑していなかったし、汚れた神様とも思っていなかった。むしろ喜んでいた。楽しんでいた。
だから僕は心底安心して、満ち足りた気分になったんだ。
「そうだね、あの子は僕より僕の事を知っているものね。そしてこんな僕をずっと好きでいてくれるんだ。ねえアドバンド、全てを知っても変らず優しい存在を僕は持っている。信じられないほど幸せだ。そして同時にもの凄く辛い」
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