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第二章 鏡の地獄
祈りの鳥3
しおりを挟む「陽が沈む前に湖に行こう」
俺が立ち上がって歩き出すと、紫色の魂の群れが代わるがわる俺の傍に寄りながらついて来る。違う魂が近づく度に俺の顔も一つとして同じ物のない紫の濃淡で染まる。
ここから浄化――の湖まで足跡一つない新雪の道が真っすぐに続く。夕闇の道を、濃く淡い、青にも赤にもなれない魂が彷徨いながら覆って行く。
初めてこの道を通った時、何を考えていたんだっけ。
こいつらの罪は何だ? そうだ、確か繰り返し繰り返し、そう自分に尋ねていたような気がする。
それからしばらくはシロキを責めていた時期もあった。「この魂たちが鏡の地獄に来る前に、どれだけ神様に祈ったか、どれだけお前を呼んだかわかってるのか。お前は何をしてたんだ? 自分の使いといちゃいちゃしてる暇があったらもっと頑張って願いを叶えろよ」と涼し気なあいつの顔を見る度、苛立っていた。
目を合わせたら口に出してしまいそうで、かなり冷たく接していた。今思えば八つ当たりも良い所だ。それでも俺にずっと好意を持ち続けてくれるシロキはやっぱり神様なんだろう。強烈に鈍いことを除けば凄くいい奴だ。
カドは前から俺の心を見透かすような目で見ていた。
ずっとおかしいと思っていたに違いない。鏡の地獄に引き渡される魂の数と、悪魔の数が見合っていないこと、俺が自分の地獄を留守にしていても平気な顔をしていられること、そしていつも自分の話を上の空で聞いていることも。
シロキの空間にいる時、鏡越しに目が合うカドは俺の心を映していた。
本来、使いのカドにそこまでの力はないはずだ。でも、カドは本体の欠点を補って余りある使いだし、あり得ないことではない。
俺たちは、極楽のあいつがどんなつもりで作成したのかは知らないが、他の神様や悪魔とは違う。
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