24 / 331
第一章 奇跡の神様
鏡の使い4
しおりを挟む
やっぱりシロキさんは神様たちに人気があって、どの神様もシロキさんに会うと嬉しそうに、うやうやしく手を取って挨拶をした。
それを見て、俺は自分のことのように誇らしくなる。俺の大事な神様が大切に扱われている。
魂が運ばれてくる度に、俺は鏡の一部を開放し、それを中に通す。
俺の中に、土地の神様から行先の印を付けられた魂の炎が溜まっていく。
俺の鏡の立方体はどんどん膨張していった。
「カド、大丈夫?」
俺と門の熱量を合わせても本体のシロキさんほどではないが、近い力がある。だからシロキさんが平気なあいだは全く問題ない。
「うん、もう少しでしょ? これから人間の世界と地獄を往復をした後に、シロキさんと夜の山を走り回れるほど元気だよ」
気をつかわせないように言ったつもりなのに、シロキさんが泣きだしそうな顔をする。
「泣かないでよ、まだ土地の神様がいる。俺の神様の弱い所、見せたくない」
「ごめん、お前が恥ずかしいな」
シロキさんが無理に笑う。違うよ、シロキさん。そういう切ない顔が好きだから人間にも他の神様にも見せたくない。
魂の受け渡しが終わると最後にシロキさんが俺の中に入ってきた。
一歩足を踏み込むと、天井を見上げ、シロキさんが溜息混じりで呟いた。
「ああ、本当にきれいだね」
確かに。咎の魂ばかりだというのに。俺の鏡の天井に漂う魂の群れは本当に美しい。
「さ、カド、移動させるよ」
移動は神様本体の意志だ。俺と門はシロキさんの望んだ所へ行くだけだ。
「地獄、久しぶりだな」
そして俺たちは魂を乗せて上昇し、一気に地獄まで移動した。
人間には勘違いしているやつが多い。地獄には堕ちるのではなく昇る。人間の世界より清らかで、正しい世界に行くのだから上昇して当然だと思うのだが、自分達が一番底の住人とは認めたくないものかも知れない。
月を通り越し加速する俺たちを見て宇宙からきた舟、などと思っているやつも少なくないようだが、殆んどが地獄から来た門だぞ、と教えてやりたい。シロキさんはと言えば「夢を壊したくないよ」と笑って勘違いさせたままにしている。
空を覆いつくすような広大な地獄が近づき、俺は鏡の空間を地獄の中央穴の大きさに合わせた。
地獄は、巨大な正十二面体のようなもので、側面を十の地獄が囲み、上の面が極楽、下の面が人間の世界へ通じる無の空間だ。
そして、その真ん中に全ての面に接する大穴、中央穴がある。
空間ごとすっぽりと地獄の中心に収まると、シロキさんが次々に俺の内側から各地獄への扉を開いた。扉を開くというより、シロキさんが指示した場所の鏡が液体のように溶けて、指定された魂の大群が排出されていく。
シロキさんは扉をいくつも開けて、複数の魂の群れを同時に動かす。それが魚の群れが、ぶつからず泳いでいる海の中ようで、俺は好きだ。
良く間違えずに操るよな、涼しい横顔で魂を振り分けているシロキさんを見てそう思っていると、
「僕が適当にやっていると思ってない?」
シロキさんが聞いてきた。
ほんの少し思ってはいたが、シロキさんは感情が行動に反映されやすいので、大事な役割の間に落ち込ませる訳にはいかない。
「思ってないよ。信じてるよ、俺の神様だもの」
シロキさんの目尻が下がって、心なしか魂の振り分けに勢いがつく。褒められるとわかりやすく、やる気を出すので扱いやすいけれど、誰かに良いように利用されないかと心配でもある。
そうして全ての魂を、浄化されるべき地獄に送り届け、俺たちは夜明け前、人間の世界へと戻った。
それを見て、俺は自分のことのように誇らしくなる。俺の大事な神様が大切に扱われている。
魂が運ばれてくる度に、俺は鏡の一部を開放し、それを中に通す。
俺の中に、土地の神様から行先の印を付けられた魂の炎が溜まっていく。
俺の鏡の立方体はどんどん膨張していった。
「カド、大丈夫?」
俺と門の熱量を合わせても本体のシロキさんほどではないが、近い力がある。だからシロキさんが平気なあいだは全く問題ない。
「うん、もう少しでしょ? これから人間の世界と地獄を往復をした後に、シロキさんと夜の山を走り回れるほど元気だよ」
気をつかわせないように言ったつもりなのに、シロキさんが泣きだしそうな顔をする。
「泣かないでよ、まだ土地の神様がいる。俺の神様の弱い所、見せたくない」
「ごめん、お前が恥ずかしいな」
シロキさんが無理に笑う。違うよ、シロキさん。そういう切ない顔が好きだから人間にも他の神様にも見せたくない。
魂の受け渡しが終わると最後にシロキさんが俺の中に入ってきた。
一歩足を踏み込むと、天井を見上げ、シロキさんが溜息混じりで呟いた。
「ああ、本当にきれいだね」
確かに。咎の魂ばかりだというのに。俺の鏡の天井に漂う魂の群れは本当に美しい。
「さ、カド、移動させるよ」
移動は神様本体の意志だ。俺と門はシロキさんの望んだ所へ行くだけだ。
「地獄、久しぶりだな」
そして俺たちは魂を乗せて上昇し、一気に地獄まで移動した。
人間には勘違いしているやつが多い。地獄には堕ちるのではなく昇る。人間の世界より清らかで、正しい世界に行くのだから上昇して当然だと思うのだが、自分達が一番底の住人とは認めたくないものかも知れない。
月を通り越し加速する俺たちを見て宇宙からきた舟、などと思っているやつも少なくないようだが、殆んどが地獄から来た門だぞ、と教えてやりたい。シロキさんはと言えば「夢を壊したくないよ」と笑って勘違いさせたままにしている。
空を覆いつくすような広大な地獄が近づき、俺は鏡の空間を地獄の中央穴の大きさに合わせた。
地獄は、巨大な正十二面体のようなもので、側面を十の地獄が囲み、上の面が極楽、下の面が人間の世界へ通じる無の空間だ。
そして、その真ん中に全ての面に接する大穴、中央穴がある。
空間ごとすっぽりと地獄の中心に収まると、シロキさんが次々に俺の内側から各地獄への扉を開いた。扉を開くというより、シロキさんが指示した場所の鏡が液体のように溶けて、指定された魂の大群が排出されていく。
シロキさんは扉をいくつも開けて、複数の魂の群れを同時に動かす。それが魚の群れが、ぶつからず泳いでいる海の中ようで、俺は好きだ。
良く間違えずに操るよな、涼しい横顔で魂を振り分けているシロキさんを見てそう思っていると、
「僕が適当にやっていると思ってない?」
シロキさんが聞いてきた。
ほんの少し思ってはいたが、シロキさんは感情が行動に反映されやすいので、大事な役割の間に落ち込ませる訳にはいかない。
「思ってないよ。信じてるよ、俺の神様だもの」
シロキさんの目尻が下がって、心なしか魂の振り分けに勢いがつく。褒められるとわかりやすく、やる気を出すので扱いやすいけれど、誰かに良いように利用されないかと心配でもある。
そうして全ての魂を、浄化されるべき地獄に送り届け、俺たちは夜明け前、人間の世界へと戻った。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
キーナの魔法
小笠原慎二
ファンタジー
落とし穴騒動。
キーナはふと思った。今ならアレが作れるかもしれない。試しに作ってみた。そしたらすんばらしく良くできてしまった。これは是非出来映えを試してみたい!キーナは思った。見回すと、テルがいた。
「テルー! 早く早く! こっち来てー!」
野原で休憩していたテルディアスが目を覚ますと、キーナが仕切りに呼んでいる。
何事かと思い、
「なんだ? どうした…」
急いでキーナの元へ駆けつけようとしたテルディアスの、足元が崩れて消えた。
そのままテルディアスは、キーナが作った深い落とし穴の底に落ちて行った…。
その穴の縁で、キーナがVサインをしていた。
しばらくして、穴の底から這い出てきたテルディアスに、さんざっぱらお説教を食らったのは、言うまでもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる