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【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる

08-5.

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「約束、守れよ」

 レオナルドは震える声で言った。

 堪えていた涙が頬を伝う。迫りくる死の恐怖に怯えながら、必死に恋人だけは生かさなければならないと気を張っていた。なんとしてでも、ジェイドが生きる道を選んでくれる方法を探っていた。

 最愛の恋人が残した方法がジェイドを生かす薬だったのならば、ジェイドはそれを捨てることができないだろう。他人に奪われるくらいならば、自らが飲み干すだろう。

 ジェイドの性格を知っていたからこそ、レオナルドは薬の完成を急いでいた。

 それなのに、手が止まってしまった。

 ……最低だ。

 自分自身を否定する。

 ジェイドの気持ちを拒絶してでも、やり通さなければいけないと頭の中でわかっているのにもかかわらず、ペンを手放してしまった。

 ……一緒に死ぬと言われて、喜ぶなんて!

 レオナルドはジェイドに生きてほしい。

 それは間違いなく、本音である。

 それなのに、一緒に死ぬと言われて喜んでしまっている自分自身がいることに気づいてしまった。

 レオナルドの死後、ジェイドが誰かを好きになるくらいならば、共に死の道を歩んでほしい。まるで心の中でそう思っていたかのようだった。

「泣くなよ。レオ。そんなに辛いなら、俺の部屋でゆっくり休もうぜ」

 ジェイドの言葉はいつもと変わらない。

 死の病に侵されているレオナルドを見捨てることはないだろう。

「……手を繋いでもいいか?」

「当然だろ。恋人が手を繋ぐことに許可なんていらねえんだよ」

 ジェイドはレオナルドの涙を指で拭った。

 そして、そのまま、当然のようにレオナルドの手を掴み、強引に立ち上がらせた。

「行こうぜ。レオ。俺たちの部屋に戻るんだ」

 ジェイドの言葉にレオナルドは頷いた。

「……待て。それは汚れているものだ。ジェイドのポケットにしまうものじゃないだろ」

「この流れで気づくとは。さすがレオだな。優秀なやつだ」

 レオナルドは雰囲気に飲まれて、うっかり、見逃しそうになってしまったことを指摘した。
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