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【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる
08-3.
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「お前がいないのに、俺に生きろって?」
ジェイドは納得しないだろう。
レオナルドを慰めるように髪を撫でつつけているものの、目が笑っていない。
視線は血が拭われたハンカチに向けられている。血痕を隠すことができないほどに汚れている。潔癖なところのあるレオナルドが洗濯をしていないものを使うわけがない為、ハンカチについている血痕は、研究室に籠っている時間の間についたものだろう。
「酷なことを言うなよ。レオ。俺はお前がいなきゃ生きていけねえのに」
ジェイドの言葉は本音だろう。
……酷いのはどっちだよ。
レオナルドは心の中で言い返す。
レオナルドも死に急いでいるわけではない。
しかし、生まれ持った頭の回転の良さにより、死を回避することができないと早々に悟ってしまった。必死に足搔くのは時間を無駄に消費するだけであり、それよりも、他の研究を進めるのが正しいことだと結論付けてしまった。
……俺が怖くないとでも?
死ぬのは恐ろしい。
泣いて逃げ出してしまいたいほどに怖くて仕方がない。
しかし、逃げ場はどこにもなかった。
「……大丈夫だ」
レオナルドは震える声で言う。
「俺のことなんて、すぐに、忘れられる」
レオナルドは望んでもいないことを口にした。
……忘れられたくない。
ジェイドが他人を選ぶ日など、来なければいいと思ってしまう。
レオナルドは過去の人物になるだろう。
記憶の中の切ない思い出は時間と共に風化する。
それを望めるはずがなかった。
「はぁ」
ジェイドはため息を吐いた。
「泣きたい時は泣け。つまんねえ意地を張っているだけの余裕はねえだろ」
ジェイドにはレオナルドの虚勢は見破られていたようだ。
「研究はしなくていい。俺はレオナルドと一緒に死ぬ覚悟はできてる。だから、もう無理をするのは止めてくれ」
ジェイドはレオナルドの髪を撫でる手を止めた。
そして、そのまま、レオナルドの手の上に自身の手を重ね合わせた。
ジェイドは納得しないだろう。
レオナルドを慰めるように髪を撫でつつけているものの、目が笑っていない。
視線は血が拭われたハンカチに向けられている。血痕を隠すことができないほどに汚れている。潔癖なところのあるレオナルドが洗濯をしていないものを使うわけがない為、ハンカチについている血痕は、研究室に籠っている時間の間についたものだろう。
「酷なことを言うなよ。レオ。俺はお前がいなきゃ生きていけねえのに」
ジェイドの言葉は本音だろう。
……酷いのはどっちだよ。
レオナルドは心の中で言い返す。
レオナルドも死に急いでいるわけではない。
しかし、生まれ持った頭の回転の良さにより、死を回避することができないと早々に悟ってしまった。必死に足搔くのは時間を無駄に消費するだけであり、それよりも、他の研究を進めるのが正しいことだと結論付けてしまった。
……俺が怖くないとでも?
死ぬのは恐ろしい。
泣いて逃げ出してしまいたいほどに怖くて仕方がない。
しかし、逃げ場はどこにもなかった。
「……大丈夫だ」
レオナルドは震える声で言う。
「俺のことなんて、すぐに、忘れられる」
レオナルドは望んでもいないことを口にした。
……忘れられたくない。
ジェイドが他人を選ぶ日など、来なければいいと思ってしまう。
レオナルドは過去の人物になるだろう。
記憶の中の切ない思い出は時間と共に風化する。
それを望めるはずがなかった。
「はぁ」
ジェイドはため息を吐いた。
「泣きたい時は泣け。つまんねえ意地を張っているだけの余裕はねえだろ」
ジェイドにはレオナルドの虚勢は見破られていたようだ。
「研究はしなくていい。俺はレオナルドと一緒に死ぬ覚悟はできてる。だから、もう無理をするのは止めてくれ」
ジェイドはレオナルドの髪を撫でる手を止めた。
そして、そのまま、レオナルドの手の上に自身の手を重ね合わせた。
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