知らない間に破滅を回避していた悪役令息は、侯爵家の嫡男に執着される

【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる

０７－７．

「症状に合わせた薬をご用意しますが……」

　教授はレオナルドに視線を向け、眉を顰めた。

　……魔力中毒の典型的な症状が出てるんだろうな。

　一目でわかるほどの症状が出ているのだろう。

　……ジェイドの前では言いたくないんだが。

　魔力中毒は治療薬が存在しない。

　だからこそ、一時的な影響を抑える魔法薬をジェイドが開発したのは歴史に名を遺すような偉業だ。

　しかし、それはレオナルドの症状を和らげることはない。

「……教授」

　レオナルドは小さな声をあげる。

「休ませてもらえれば、それだけで十分です」

　治療薬はない。

　それはわかり切っていることだった。

「ジェイドも。付き添いはいらないから」

「バカを言うな。俺は離れるつもりはないが？　それに、レオを一人で置いていけないだろ」

　ジェイドはこのまま授業を休むつもりなのだろう。

　授業を休んだところで大きな影響があるわけではない。ジェイドが授業に出席をしなくても支障がないことは、レオナルドも知っている。

　本来ならば、飛び級制度を使い、卒業をしていてもおかしくはない。

　しかし、飛び級制度を使わなかったのは、一年だけでもレオナルドと共に学生生活を楽しみたかったからなのだろう。

「一緒にいても良くなるものじゃないから」

　レオナルドは突き放すような物言いをした。

　……怖い。

　死が近づいてくる足音が聞こえる。

　傍にいる時間が増えれば、ジェイドも察することになるだろう。

　……知られたくない。

　一人で耐えられるような恐怖ではなかった。

　しかし、ジェイドを巻き込む勇気もない。

「はぁ」

　ジェイドはため息を零した。

「考えるな。俺がなんとかしてみせるから」

　それから、ゆっくりと立ち上がり、レオナルドの両目を隠すように手を当てた。