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【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる

06-7.

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 ……違法薬物か、それとも、黒魔法に手を出したのか。

 レオナルドも心当たりがあった。

 全てを意のままに操ることができるとでもいうかのように、我儘を押し通そうとするクリスの姿は異常だ。

 愛されることに対し、強い執着心を抱いている。

 そして、クリスが標的として狙いを定めている相手こそ、レオナルドだった。

「アレの魔力そのものが毒物みたいなものらしくてな」

 ジェイドは思い出すのも嫌だと言いたげな顔をしながら、話を続ける。

「強制的に魔力中毒を起こし、相手を依存させて支配する。それがアレの手管だとわかったんだが、俺の研究だと一時的な薬しかできなかった」

 この短期間で原因を突き止め、一時的な効果しか持たないとはいえ、薬を開発したのは天才としか言いようがない。

 それでも、ジェイドにとって、納得のいく成果ではなかったのだろう。

 ……中和薬か。

 レオナルドは天才だ。

 元凶がわかっているのならば、中和薬を作り出すことはできるだろう。

 しかし、それはクリスに邪魔をされなければの話である。

「対象者は任意の相手か? それとも、一定の条件を満たせば強制的に発動するのか?」

「おそらく、条件を満たした相手なんだろうが。決定的な証拠はねえな」

 レオナルドはジェイドに後頭部を押し付けるような姿勢になりながら、問いかける。

 魔法に関する研究をしているからこそ、好奇心を抑えきれない。

 ……実験してもいいだろうか。

 自分自身に危険がなければ、クリスを騙してでも研究室に連れて行き、その生態を調べ上げていたことだろう。

 ……いや、関わりたくもないな。

 本能がクリスの存在を拒絶している。

 たとえ、クリスを解体してもかまわないと言われたとしても、研究に挑む気力は限りなく薄れてしまうことだろう。

 ……でも、貴重な実験体の為なら、多少の犠牲は仕方がないか。

 相手が人ではない。

 本能的に拒絶をしてしまう家屋に住み着く、黒い昆虫の一種だと思い込めば、嫌々ながら研究を進めることができるかもしれない。

 クリスは人ではなく、衛生的な環境で育った黒い昆虫であるとレオナルドは自分自身に言い聞かせる。
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