知らない間に破滅を回避していた悪役令息は、侯爵家の嫡男に執着される

佐倉海斗

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【外伝4】 破滅を回避できない悪役令息は初恋に溺れる

05-8.

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「どうして、そういうことを言うの?」

 クリスは首を傾げた。

 まるでヒューバートの言葉の意味が分からないと訴えるようかのような振る舞いを続け、大きな目には涙が浮かんでいる。

「僕、ただ、仲良くなりたかっただけなのに」

 それは嫌がらせを受けた被害者を連想させる振る舞いだ。

「ひどいよぉっ」

 涙が頬を撫でる。

「僕のことが、嫌いだからって、あんまりだよぉっ」

 心の底から傷ついたと言わんばかりの泣き顔をするクリスに対し、ヒューバートは引かなかった。

「酷い?」

 心外だと言わんばかりに口にする。

「レオナルドに対して友人になるように迫り、恋人のような振る舞いを一方的にするような醜い心の持ち主に何を言われても響かないな。妄言を信じてくれるような頭の中身をどこかに捨ててきたような連中にでも慰めてもらえ」

 ヒューバートは言いたいことをすべて言い切ったのだろう。

 クリスを慰めるようなことはない。

 ただ、もう関わりたくないと言わんばかりに背を向けた。

「なんだ。レオナルド。デューク。文句があるか」

 先ほどと同じ姿勢のまま、黙っていたレオナルドとデュークの驚いている顔を見て、ヒューバートは眉を顰めた。

 ……意外だな。

 ヒューバートとは付き合いが長い。

 三人の中では一番口が少なく、感情を露にすることも珍しい。

 淡々とした口調で事実だけを告げることが多いヒューバートが、クリスに対して、私情を含めた言葉を言い続けたのは予想していなかったのだろう。

 それも、レオナルドの為である。

 友人が付きまとわれていることに気づき、それが異常な行動であるとわかった途端に行動に移した。

「いや。意外と男前じゃんか」

 デュークは心の底から驚いたと言わんばかりの言葉を口にする。

「それなりにかっこよかったな」

 レオナルドも素直に思ったことを口にする。

 それに対し、ヒューバートは居心地が悪そうな顔をした。

 彼の背後では、未だに涙を流しているクリスがいる。
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