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【外伝2】 クリス・チューベローズの断罪
01-7.
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クリスはぬいぐるみを抱き締め、目を閉じた。
……僕もあの女と同じだ。死ぬまで利用されるんだ。
必要最低限の荷物を与えられ、今日中には娼館に連れて行かれるだろう。
家を追い出された異母妹たちの母親と同じだ。彼女も娼館に売り飛ばされ、数年後には流行病を患い、命を落としたと聞いたことがある。
クリスも同様の運命なのだろう。
同性相手に性的な仕事を強いられることを考えれば、更に過酷な仕打ちが待ち構えているかもしれない。
想像することさえもできない日々を考えてしまう。
「クリス様。お荷物の準備が整いました」
アーロンの感情の籠っていない声を聞き、閉じたばかりの目を開けた。
「……ずいぶんと仕事が早いんだね」
渡された荷物を受け取る。
鞄が一つだけだ。
鞄の中を覗けば、クリスが大切にしていた宝石が二つだけ入れられている。
「これだけ?」
子爵家として買い与えたものは何一つ外に持ち出すことが許されず、クリスが個人的に買ったものの中でも、もっとも値段の低いものだった。
「旦那様が同情してくださいました。着飾る為の金銭に変えることが許されたのは、それだけでございます」
今までだったのならば、バカにしているのかと暴れたことだろう。
それすらも許されない立場にあるのだということは、クリスでも理解できた。
「……そっか」
ぬいぐるみをベッドの上に置く。
お気に入りのぬいぐるみを持っていくことさえも許されず、渡された鞄の軽さを噛み締めるように抱きしめ、立ち上がった。
「もう行くよ」
クリスはゆっくりと歩き始める。
振り返ることさえもできない。この場を離れたくないのだと縋りつくことさえも許されず、文句の一つを言ったところで誰もが同情してくれない。
「お兄様は?」
「ブライアン様はお仕事で忙しいそうです」
「そっか」
素っ気ない返事をする。
慣れ親しんだ部屋を振り返らない。堂々とした足取りで廊下を歩く姿は、子爵家を勘当され、娼館に売り飛ばされるとは思えないものだった。
……僕もあの女と同じだ。死ぬまで利用されるんだ。
必要最低限の荷物を与えられ、今日中には娼館に連れて行かれるだろう。
家を追い出された異母妹たちの母親と同じだ。彼女も娼館に売り飛ばされ、数年後には流行病を患い、命を落としたと聞いたことがある。
クリスも同様の運命なのだろう。
同性相手に性的な仕事を強いられることを考えれば、更に過酷な仕打ちが待ち構えているかもしれない。
想像することさえもできない日々を考えてしまう。
「クリス様。お荷物の準備が整いました」
アーロンの感情の籠っていない声を聞き、閉じたばかりの目を開けた。
「……ずいぶんと仕事が早いんだね」
渡された荷物を受け取る。
鞄が一つだけだ。
鞄の中を覗けば、クリスが大切にしていた宝石が二つだけ入れられている。
「これだけ?」
子爵家として買い与えたものは何一つ外に持ち出すことが許されず、クリスが個人的に買ったものの中でも、もっとも値段の低いものだった。
「旦那様が同情してくださいました。着飾る為の金銭に変えることが許されたのは、それだけでございます」
今までだったのならば、バカにしているのかと暴れたことだろう。
それすらも許されない立場にあるのだということは、クリスでも理解できた。
「……そっか」
ぬいぐるみをベッドの上に置く。
お気に入りのぬいぐるみを持っていくことさえも許されず、渡された鞄の軽さを噛み締めるように抱きしめ、立ち上がった。
「もう行くよ」
クリスはゆっくりと歩き始める。
振り返ることさえもできない。この場を離れたくないのだと縋りつくことさえも許されず、文句の一つを言ったところで誰もが同情してくれない。
「お兄様は?」
「ブライアン様はお仕事で忙しいそうです」
「そっか」
素っ気ない返事をする。
慣れ親しんだ部屋を振り返らない。堂々とした足取りで廊下を歩く姿は、子爵家を勘当され、娼館に売り飛ばされるとは思えないものだった。
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