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【外伝1】 セドリックの悪夢
01-4.
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「ありえない。とんでもない嘘だ!!」
トムから離れ、従者に掴みかかろうとするセドリックの動きを止めたのはトムだった。普段、頼りのない印象を与えるトムを見る。
「父上、知っていたんですか?」
「……あぁ」
トムは知っていたのだ。
従者が駆け込んでくるよりも前にレオナルドの死亡を告げる報告を受け取っていたのだろう。だからこそ、険しい表情を浮かべていたのだ。
それを理解したセドリックは足取りが不安定になりながらも、従者の横を通りすぎ、その奥にあったソファーに座り込む。
……どうして。
レオナルドは入学を心待ちにしていた。
親しくしている他の伯爵家の友人たちと一緒に学ぶのだと新品の教科書を抱き締めながら、嬉しそうに語っていた姿を思い出してしまう。
「よく届けてくれた」
トムは感情の籠っていない声で言った。
「下がれ。しばらくの間、休暇を与える」
トムの言葉に対して深々と頭を下げた従者は執務室を出ていった。
状況証拠となる写真を一枚だけ取り、それを伯爵邸に届けることだけが彼を生かしていたのだろう。それをわかっていながらも、トムは休暇を与えた。
その残酷な仕打ちにセドリックは言及しなかった。
自分自身がトムの立場にいたのならば、きっと同じことをしただろう。
「ユージン。アリシアとアルフレッドを呼んでくれ」
「……かしこまりした」
トムの言葉に対し、すべてを悟った顔をした執事は執務室を出ていった。
元々騒ぎを聞きつけてはいたのだろう。
伯爵夫人、アリシアと伯爵家の三男、アルフレッドが執務室に駆け込んできたのは十分以内のことだった。
「あなた、レオナルドは無事なのでしょう!?」
アリシアは執務室に駆け込んだのと同時に叫んだ。
魔法学院で何らかの問題が起きたことは既にトムから聞かされていたのだろう。その言葉を聞き、露骨に戸惑っているアルフレッドに対し手招きをして自身の隣に座らせる。
……嘘だろう。今日、起きたことですらないのか。
血相を変えて駆け込んできた従者は騎士団の尋問を受けたのかもしれない。
それでも、証拠となる写真を隠し持ち続けたのだ。
トムから離れ、従者に掴みかかろうとするセドリックの動きを止めたのはトムだった。普段、頼りのない印象を与えるトムを見る。
「父上、知っていたんですか?」
「……あぁ」
トムは知っていたのだ。
従者が駆け込んでくるよりも前にレオナルドの死亡を告げる報告を受け取っていたのだろう。だからこそ、険しい表情を浮かべていたのだ。
それを理解したセドリックは足取りが不安定になりながらも、従者の横を通りすぎ、その奥にあったソファーに座り込む。
……どうして。
レオナルドは入学を心待ちにしていた。
親しくしている他の伯爵家の友人たちと一緒に学ぶのだと新品の教科書を抱き締めながら、嬉しそうに語っていた姿を思い出してしまう。
「よく届けてくれた」
トムは感情の籠っていない声で言った。
「下がれ。しばらくの間、休暇を与える」
トムの言葉に対して深々と頭を下げた従者は執務室を出ていった。
状況証拠となる写真を一枚だけ取り、それを伯爵邸に届けることだけが彼を生かしていたのだろう。それをわかっていながらも、トムは休暇を与えた。
その残酷な仕打ちにセドリックは言及しなかった。
自分自身がトムの立場にいたのならば、きっと同じことをしただろう。
「ユージン。アリシアとアルフレッドを呼んでくれ」
「……かしこまりした」
トムの言葉に対し、すべてを悟った顔をした執事は執務室を出ていった。
元々騒ぎを聞きつけてはいたのだろう。
伯爵夫人、アリシアと伯爵家の三男、アルフレッドが執務室に駆け込んできたのは十分以内のことだった。
「あなた、レオナルドは無事なのでしょう!?」
アリシアは執務室に駆け込んだのと同時に叫んだ。
魔法学院で何らかの問題が起きたことは既にトムから聞かされていたのだろう。その言葉を聞き、露骨に戸惑っているアルフレッドに対し手招きをして自身の隣に座らせる。
……嘘だろう。今日、起きたことですらないのか。
血相を変えて駆け込んできた従者は騎士団の尋問を受けたのかもしれない。
それでも、証拠となる写真を隠し持ち続けたのだ。
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