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第3話 悪役令息は知らない間に破滅を回避していたことを知る
02-5.
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「義姉上。近日中にお礼の品を送ります」
「まあ。そういうところが好きよ。紳士的ね」
珍しいやり取りに驚いているジェイドを引っ張るように歩き出す。
手は繋がれたままだ。視線は悲鳴を上げているセドリックに向けられていたが、すぐに興味を失ったのだろう。
「父上。母上」
レオナルドは足を止めた。
「お世話になりました」
その一言だけを言って、再び、歩き出す。
椅子に座ったまま、俯いているトムの耳に届いているのか、わからない。
「幸せになるのよ。レオナルド」
「はい。約束します」
トムの隣にいるアリシアはその言葉で十分だと微笑んだ。
心の底から思っている言葉ではないだろう。
レオナルドが侯爵家に嫁ぐことにより、伯爵家の地位は守られる。それどころか、侯爵家の威光を借りるようなことも可能になるだろう。
そこまで計算をしたうえでアリシアは笑ったのだ。
* * *
家族に見送られながら乗り込んだ馬車が揺れる。
目的地はイキシアにある侯爵家が所有する邸宅だ。騎士団本部に近い場所に建てられている邸宅が今後の住まいとなる。
「ずいぶんと簡単な挨拶だったな」
ジェイドは向かい側に座るレオナルドを愛おしそうに見ながら言った。
「家族仲は良いと聞いていたが?」
十年間に渡り監禁生活を強要していたとは思えないほどに呆気なかった。
伯爵夫婦は結婚を反対するつもりなど微塵もなかったのだろう。侯爵家が行ったことは正当な行動であるとさえ言い切っていた。
「貴族としては良好な関係だろ」
レオナルドは視線を窓の外に向ける。
伯爵領に足を踏み入れる機会は限りなく低くなるだろう。離れることが決まると代わり映えのない景色さえも懐かしく感じてしまう。
「兄弟仲がいいだけだ。義姉上も実の弟のように可愛がってくれたからな」
「そうか。仲良く並んでいるのは初めて見たんだが、いつもそうなのか?」
「いつもじゃない。あれは義姉上の提案だ。そうじゃなかったら集まらない」
一つのソファーに並んで座るくらいには仲が良い。
他の家では見られない光景ではないだろう。
「まあ。そういうところが好きよ。紳士的ね」
珍しいやり取りに驚いているジェイドを引っ張るように歩き出す。
手は繋がれたままだ。視線は悲鳴を上げているセドリックに向けられていたが、すぐに興味を失ったのだろう。
「父上。母上」
レオナルドは足を止めた。
「お世話になりました」
その一言だけを言って、再び、歩き出す。
椅子に座ったまま、俯いているトムの耳に届いているのか、わからない。
「幸せになるのよ。レオナルド」
「はい。約束します」
トムの隣にいるアリシアはその言葉で十分だと微笑んだ。
心の底から思っている言葉ではないだろう。
レオナルドが侯爵家に嫁ぐことにより、伯爵家の地位は守られる。それどころか、侯爵家の威光を借りるようなことも可能になるだろう。
そこまで計算をしたうえでアリシアは笑ったのだ。
* * *
家族に見送られながら乗り込んだ馬車が揺れる。
目的地はイキシアにある侯爵家が所有する邸宅だ。騎士団本部に近い場所に建てられている邸宅が今後の住まいとなる。
「ずいぶんと簡単な挨拶だったな」
ジェイドは向かい側に座るレオナルドを愛おしそうに見ながら言った。
「家族仲は良いと聞いていたが?」
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伯爵夫婦は結婚を反対するつもりなど微塵もなかったのだろう。侯爵家が行ったことは正当な行動であるとさえ言い切っていた。
「貴族としては良好な関係だろ」
レオナルドは視線を窓の外に向ける。
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「兄弟仲がいいだけだ。義姉上も実の弟のように可愛がってくれたからな」
「そうか。仲良く並んでいるのは初めて見たんだが、いつもそうなのか?」
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一つのソファーに並んで座るくらいには仲が良い。
他の家では見られない光景ではないだろう。
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