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第3話 悪役令息は知らない間に破滅を回避していたことを知る

02-3.

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「狭くないのか?」

 ジェイドはレオナルドに問いかける。

 ゆったりと座れる大きさのソファーとはいえ、成人を過ぎた四人の男女が座っていると隙間がない。窮屈そうに見えるのはレオナルドの隣に体格の優れたアルフレッドが座っているものもあるだろう。

「狭いし、身動きも取れない」

 レオナルドは肯定した。

「そうだと思った。レオ。手をどうぞ」

 令嬢を丁重に扱うかのような仕草で手を指し伸ばされる。
 それに対し、レオナルドは迷うことなく手を取り立ち上がった。

「話は終わったのか?」

「あぁ。大した話じゃないからな。すぐに終わった」

「父上が話していたのに? 結婚に関わる話じゃなかったのか?」

 レオナルドは首を傾げた。

 ……朝食の時には鼻息荒くして語っていたのに。

 子どもを嫁に出す父親というのはそういうものなのだろうか。

 当人であるレオナルドから冷めた目を向けられていることにも気づかず、熱く語っていたトムの珍しい姿を思い出した。

「結婚に関してはすべてを任せると言われただけだ。後は、幼少期の話を聞かされていた」

 手を離そうとするレオナルドに対して気づいていないかのように話を続ける。

 振り解けないように力を込められている為、ジェイドはレオナルドが家族の前で手を繋ぐのを嫌がっているのがわかっているのだろう。

「準備はいいのか?」

「荷物は事前に送り付けた。俺は父上たちの話が終わるのを待っていただけだ」

「そうか。よく大人しく待ってたな」

 ジェイドの視線はレオナルドの背後にいる三人に向けられる。

「部屋に閉じ込められているんじゃねえかと思ってたんだが」

 想定外だったのだろう。

 家族全員でジェイドを迎え入れているような状況だ。セドリックは今にも殴りかかりそうな顔を隠そうともせず、アルフレッドも機嫌の悪そうな表情を浮かべているが、実際に殴りかかろうとはしなかった。

「説得したからな」

 レオナルドは当然のように言い切ったが、実際に説得をしたのはセドリックだけである。同席しているシェリルは反対しておらず、アルフレッドは帰宅をする予定がなかった為、説得する機会がなかった。
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