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第三話「剣を捧げる男は正義を愛する」

03-8.言葉だけでは伝わないこともある

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「【水よ、宙に浮かべ】」

 魔法の主導権が奪われている。

 それがいつの間に行われていたのか、わからなかった。

 慌てて魔法を唱えても無駄だった。発動すらしない。

「【覆い隠せ】」

 省略呪文。

 それに驚いている間に足が動かなくなる。

 見てみれば、足首まで土で埋もれていた。

「え、あ、……みっ、水よ」

「なあ、魔法使いの弱点って知ってるか?」

「え? あっ!!」

 杖を奪われた。

 それを地面に投げつけられる。

「強制終了だ。油断しすぎなんだよ、ハワード」

 ジョージ公子の杖が額に当てられる。

「弱いくせに彼奴の隣にいられると思ってんじゃねえよ。足手纏いが」

 その言葉がなによりも重かった。

 幼馴染というだけで共犯者になった僕には他にはなにもない。

「足手纏いなんかじゃないっ!!」

 意地だった。

 沈んでいく身体を気にしていられない。投げられた杖に手を伸ばす。

「僕の気持ちがわかるものか!」

「言葉が乱れてるぜ? 意地になって立場を忘れんなよ、貴族だろ?」

「うるさい! ……僕だって、僕だって、やればできるんだっ」

「はいはい、お前も王子と同じかよ」

 同じ扱いをされてたまるものか!

 ダリアが傍にいるのに見向きもしない王子とは違う。

「わかってねえなぁ……」

 向けられた視線に身に覚えがあった。

「理想論が国の為に役立つわけねえだろ」

 時々、ダリアが同じような眼をしている。

 理想論を聞かされた時の呆れた眼だ。退屈そうな眼だ。

「諦めちまえよ。どうせ、叶わねえんだから」

 僕はダリアのその顔が苦手だった。彼女には笑っていてほしかった。


 ーーどうしてだろう。

 大好きな彼女と、大嫌いな彼が、重なって見える。
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